これは橘杏子が来る数日前のことである。

坂田結城

親父、まじかよ

社長

嘘は吐いてない。

坂田結城

急にそんなこと、
言われても・・・

社長

俺はお前が心配なんだよ。

親父は物心ついたときから父は俺にべったりで
親バカだ。たぶんそうなったのは母をなくしてから
より一層俺への執着心が強まったと思う

坂田結城

別に子供じゃあるまいし

社長

俺の子供には変わりねえよ

坂田結城

まあ、そうだけど

社長

だから、お前の世話係を
家に連れてくる。
それだったら安心だろ?

父親は、名案だと言わんばかりに
自慢げに言い放った。

坂田結城

ふーん、女?

社長

勿論、会社1の美女だよ

坂田結城

それは、楽しそうだ

社長

気に入ってもらえたか?

会社1の美女だからといって容赦しないし、
どうせ彼女も俺を嫌うだろう。

付き合った彼女はみんな俺の素を見て、
どうのこうの言って別れていく。

俺の性格がダメなのかもしれない。
けれど・・・どうも女の人が苦手なのだ。

母を亡くしたきっかけも
元カノの一人が関わっている

坂田結城

なんでもいいよ

あの時のことがフラッシュバックする。
鮮明に思い出される記憶。

気持ちがブルーになるのを感じたし、
あの時の後悔や憤り、虚しさが
はっきりと甦る。

社長

そうか、でも・・・

俺の気持ちを読み取った父親は
眉をひそめ、俯いた。

そして、ゆっくりと顔を起こすと
少し言葉をためるように間を置いた後、口を開いた。

社長

あいつはまっすぐな人間だ
安心しろ。

その言葉通り、
俺に容赦ない素直な女性が目の前にはいた。

坂田結城

面白くなりそうだな

これからの日々に期待を抱きながら、
俺は笑顔でその女性を迎えたのだった。


元カノに似ていないことに
少しだけの安心感を覚えながら___

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