デュレ

おはよう、サジェス

サジェス・エフォール

やあ、デュレ。朝食はまだかい?

エクリール

会うやつ会うやつ全員に聞くのやめんか

デュレ

私はもう食べたよ。サンドイッチのハムにカビっぽいものが付いてる以外は美味しかったよ

エクリール

それ、かなり色んな意味で不味くないか?

デュレ

冗談だよ。いつも通り全部美味しかった。それじゃ、私は授業の準備があるから

サジェス・エフォール

キミは、今なんの研究をしているんだい?

デュレ

下水をもっと効率よく飲み水に変える方法。でも、これは水魔法だけではどうしようもなくてね。近いうちに風魔法の助力を仰ごうと思ってる

サジェス・エフォール

そうか。ボクに手伝えることがあったら何でも言ってくれよ

デュレ

ははっ。水に発火魔法なんかかけてどうするのさ

そう言って、デュレは去っていった。

今のを聞いて分かる通り、この世界はあまり進歩をしていない。
それぞれ数種類存在する魔法が単一的に働いているだけで、誰もがそれを当たり前だと思っていた。
それは、魔法使い同士のプライドもあったのかもしれない。
誰もが、自分の魔法に誇りを持っているから、他の魔法の力を借りるなんて、考えもしなかっただろう。

しかし、それを覆したのがこのサジェス・エフォールなのだ。

彼女は齢16でありながら、発火魔法の天才だった。
魔法のコントロールから応用力まで。
目覚ましい成績を賞され、魔法学校の特待生にまでなった彼女だが、暗黙のタブーとなっていた他の魔法との合同研究に踏み切ったことで周囲の反感を買った。
だが、その時彼女が言った言葉をエクリールは今でも覚えている。

サジェス・エフォール

別に一つの枠の中で納まっている必要はないだろう

サジェス・エフォール

身の周りに『可能性』が服を着て歩いてるんだよ。考えるだけですごくワクワクするじゃないか!

勿論、それを笑い飛ばす人は大勢いた。
しかし、サジェスは決して諦めなかった。
諦めずに研究を続け、遂に半年ほど前、彼女は学会で発表した。

風魔法と発火魔法を兼ね合わせ、さらに自分たちで作り上げた合同研究。

気球

それは、国中を騒がす大ニュースとなった。
今まで、不可能と思っていた「人が空を飛ぶ」という、永遠の夢が実現されたのだから。

サジェス達は国王に表彰され、国民は彼女たちを天才とたたえた。
こうして、国中にサジェス・エフォールの名が一気に広まることとなったのだ。

エクリール

……まぁ、それでも国中が変わったわけではないがな

そうだ。


確かにサジェス達のおかげで、魔法の新たな可能性を見つけることはできた。

しかし、そこで止まってしまった。
魔法の融合なんて、よほどの実力でもない限り試そうとする者もいない。
万が一による事故の可能性もあるし、やはりそれぞれ魔法使いとしてのプライドが邪魔をした。
お互いに歩み寄ろうとしなかったのである。
結局、誰もサジェス達に倣って魔法の合同研究を行おうとする魔法使いはいなかった。
先ほどのデュレはまだいい方だ。

エクリール

……勿体ない

サジェス・エフォール

そうだね。時間が勿体ない。早くご飯を食べに行こう

エクリール

お前の頭には食い物しかないのか

そう言って二人が食堂に入ろうとした時、後ろから声が聞こえた。

バティール・ヴァルテュー

あらおはよう、サジェスちゃん

サジェス・エフォール

エクリール、ちょっと部屋に忘れ物をしてきたようだ。ちょっと取りに戻ろうか

バティール・ヴァルテュー

ちょっとが2回出てるわよ。

エクリール

おはようございます、バティール学院長

バティール・ヴァルテュー

おはよう、エクリール。お勤めご苦労様ね

エクリール

仕事ですので

サジェス・エフォール

そんなにばっさりしてくれるなよエクリール。悲しくなるだろ

バティール・ヴァルテュー

そういう貴女はご飯をかきこむのを止めなさい

サジェス・エフォール

だって学園町の話長いんだもん!作者の話と同じくらいいつ終わるか分かんないし!

バティール・ヴァルテュー

そういうことは言っちゃダメ。今作者が書きながら泣いてるわ

バティール・ヴァルテュー

それに、お客様よ。貴女に頼みたいことがあるらしいの

サジェス・エフォール

お!何だろう?魔法の合同研究なら喜んで受けるんだけど

バティール・ヴァルテュー

それが、そうでもなさそうなのよ

To be continued...

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