田中夏子

結城、おはよう

此奴__田中夏子は俺の幼馴染であり、
一番仲のいい女子であろ。

坂田結城

朝から元気だよな・・・

田中夏子

寝坊してきたくせして
何言ってんのよ。
もう午後だよ?!

口うるさいが、中身は良い奴だと思う。
俺のことをちゃんと
人間の素質で判断してくれる。

田崎圭

夏子はいつも
うるせえよ・・・

坂田結城

あ、圭。
此奴どうにかして

圭は高校生になって初めてできた友達である。
そして、現在までの長い付き合いである。
(因みに今は大学生である)


気さくな性格であり、周りからの
信頼も厚い人物であろう。

田崎圭

いやだよ~
結城じゃないと
言うこと聞かないし

坂田結城

ふうーんじゃあな。

俺は、そんなのお構いなしに
教室を出ていこうとする。

しかし、それを夏子は阻止した。

田中夏子

ちょっと、どこいくの!

坂田結城

女の子から呼ばれてるんだよ

田崎圭

モテる奴は違うよな

面目ないといったような表情でこちらを見つめ、
夏子は先程の威勢はどこへやら、
地面に目をやり、静かに話を聞いていた。

坂田結城

圭だってモテるだろ

田崎圭

お前の友達だからだよ。
でも、結城って
彼女作らないよね?

田中夏子

ちょっと、圭!

坂田結城

夏子、いいから

田中夏子

ごめん・・・

坂田結城

ありがとな、夏子

あからさまにしょぼくれる夏子の頭に手を置き
にっこりと微笑むとみるみるうちに頬を赤く染め、
照れた様子で手を払った。

まったく、素直じゃないやつだ。

坂田結城

俺には、召使いがいるしな

夏子は不思議そうに首を傾げた後

田中夏子

・・・早く行ったら?

坂田結城

ありがとな

終始、ずっと見ていた圭だが
状況を呑み込めずに立ちすくんでいた。

橘杏子

随分遅いお帰りですね

坂田結城

待っててくれたんだ

橘杏子

お金はきっちりと
残業代頂きますよ?

坂田結城

容赦ねえよな


結局、圭とカラオケに行ったため
いつもと変わらない遅い帰宅となってしまった。

しかし、いつもはいない家に人がいるのは
なんだか不思議な感じだ。


独身男性が結婚をして初めての帰宅をしたときは
こんな感じに暖かい気持ちになるのだろうか。

橘杏子

それに、大学生だからといって
一人は寂しいかなと思いまして。

坂田結城

本当は、世話焼きな人なんだな

橘杏子

悪い?!それに社長から
言われてるだけだし!

坂田結城

ううん、良かったと思って。

橘杏子

え?

坂田結城

ううん、こっちの話。

一人じゃないという安心感は
幼少期から両親が共働きであまり団らんの機会が
なかったからかもしれない。

だから、こんな些細な事でも
嬉しくなるのだと心を落ち着かせる結城であった。

坂田結城

ありがと、親父。
_____母親

俺は心の中で母に向かって手を合わせた。
結城の過去を知るのはもう少し、後のお話。

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