橘杏子

私、こんな格好するために
会社に入ったんじゃないんですけど

それは誰だってそうだろう。

就職をする人たちにとって
特に未来のある若者たちの中の一人でも
こんな格好をして社長の息子に仕えるなんてこと
なんて想像しないだろう。

そして、こんな理不尽な目に遭うのは
私だけだろう。

坂田結城

坂田結城。
この家にあるもの
勝手に使ってくれて構わない。

橘杏子

え?エロ本の一つや二つは
あるでしょ?

坂田結城

全部、親父の部屋。

妙に現実味があるし、想像できる気がする。
ある意味聞きたくなかったかも・・・。

橘杏子

じゃあ、掃除でもします

坂田結城

しなくていいよ
お手伝いさんがいるし

お手伝いさん

では、失礼いたします。


メイドカフェにいるメイドさんが
着ていそうなフリフリのメイド服を
身に纏ったお手伝いさんだった。


まだそのお手伝いさんは若く、よく似合っていた。

でもその人の顔はどちらかというと綺麗目である。
だからきっとこの人も着ることを
強要されたのだろう。


まさかの同士とは・・・。

お手伝いさん

どうかされました?


憐みの表情をその女の人に向けると、
女の人は不思議そうに首を傾げて暫く考えた後

何を思ったか、一回会釈をして
そのまま出ていってしまった。

橘杏子

そういう趣味だったんですね

親子そろって、悪趣味だと思う。
やっぱりこういうところは
親子だなあ、と感じさせられる。

坂田結城

そんな顔で見るなよ。

橘杏子

というか帰っていいですか?

坂田結城

帰すわけないだろ?
男と二人っきりやで、
なんか思わないわけ?

橘杏子

私、そこまで
男に困ってないし。
それに年下に隙を見せるような
軽い女じゃないから。

年下になめられるような歳じゃない。

年下と聞くとあの時のことを思い出すから。
あの時のことを思い出すと今でも吐き気がする。

坂田結城

やっぱ、面白いな


そんなことお構いなしな男は
キッチンの方へ向かうと水をコップ一杯飲み干した。

坂田結城

帰ってもいいよ。

一瞬だけ、悲しげな表情をした気がした。
でも瞬時に、悪戯っぽい笑みを浮かべた。

なんか隙がないと思った。

坂田結城

明日も来てもらうから。
あ、そうだ。明日からは
ここに直行でいいから。

これ、俺から。

橘杏子

なにこれ・・・?

坂田結城

これからよろしく
の意味を込めて、な
一応・・・。

といって、首にかけてくれたのは
鍵をモチーフとしたかわいらしいネックレスだった

このネックレスは高級ブランドの
今話題となっている数量限定のものである。

橘杏子

これ・・・
相当高いんじゃ・・・

私が買おうと思っても
予約が殺到してて無理だったし
今予約をしたとしても売り切れているだろう。

買おうとしても腰が引ける値段だ。

坂田結城

気にしないで
受け取ればいいよ。

橘杏子

うわーい、
高かったから
ほしかったんだよね~
ラッキー!!

坂田結城

容赦ねえよな・・・

橘杏子

嘘です。
この分は、きちんと
お返しします。
何万でしたっけ?

坂田結城

十万前後くらいやな

橘杏子

え・・・?

坂田結城

別にいいよ。
その代わり
これからよろしくな?

橘杏子

は、はい・・・。

私は、こうして年下男の召使いへと
正式になってしまったようです

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