天空に放たれたその飛翔物体はシュルシュルと飛翔音を発しながら高度を上げた。

それはやがて上昇率を漸減させ水平飛行に入ると内蔵された固形燃料に点火した。





その瞬間、飛翔体は激しい炎と煙を噴出しながら一気に加速してゆく。



夜空に鮮やかなオレンジ色の弧を描き着弾したミサイルは閃光を放ち炸裂した。


耳をつんざく爆発音と地鳴りの音、先程までユキオとエミコが待機していた建物が一瞬で崩壊し爆炎に包まれた。



着弾地点の近くに立っていた数人の男が爆風をまともに受けて吹っ飛んだ。




その他の全員は呆然と立ちすくみバラバラと降ってくる土塊を浴びながら、燃え上がる建物をただじっと見つめている。




流石のヒラヤマもその突然の出来事に虚をつかれ、マスターを押さえつけている力が緩んだ。

その一瞬の隙をついて、マスターがヒラヤマの拘束を振りほどいた。

ハルト

!!



次の瞬間、ハルトはヒラヤマを目がけて引き金を引いた。



ハルトの銃から発射された弾はヒラヤマの足をかすめた。

ヒラヤマ

!!



しゃがみ込むヒラヤマ。

マスター

それ以上撃つな! 逃げろハル!



マスターが叫ぶ。




二人は敷地の外を目指して全速力で走りだす。

ヒラヤマ

逃がすな! 殺さずに捕まえろ!



ヒラヤマは周囲の男達に向かって叫ぶ。

その声で我に帰ったバイクの男達がハルト達を追う。

逃げるハルトとマスターに迫るバイク集団。



ハルトは振り返り、先頭のバイクに向かって発砲した。





被弾したバイクはバランスを崩しそのまま転倒すると、運転手の男は地面に激しく叩きつけられ、後続のバイクに跳ね飛ばされた。



跳ねたバイクは急ブレーキをかけたが急制動に失敗し前輪をロックさせてしまい、そのまま派手に吹っ飛んだ。


他のバイクも急停止して一時追撃の手が緩んだかのように思われた。

しかし、それも束の間であった。




残りのバイク集団は倒れた男達には目もくれず、ハルト達二人を捕えようと再び走りだした。

それを見て立ち止まっていた二人もまた走りだした。

その時、

ハルト

前を見ろ、マスター!



ハルトが前方を指さしていった。



前方に二台の乗用車のヘッドライトが浮かび、こちらに向かってくる。

マスター

くそっ!


二人は行く手を阻まれ立ち止まるしかない。

二人の前でバンが二台並んで停車した。

逃げ場を失い身動きできないハルトとマスター。

バンを目前に立ち往生するハルト達二人を挟んでバイク集団も動きを停めている。

バイク集団に向かって拳銃を構えるハルト。

マスターも腰の拳銃を抜くとハルトと背中合わせに、バンの運転席に狙いを定めた。







緊迫した空気に包まれるなか、一台のバンのドアが開き、車内からゆっくりとした動作でアサルトスーツと自動小銃で武装した男が出てきた。









その男の顔を見て、ハルト達二人は驚嘆のあまり揃って大きく目を見開らいた。

そして自然と構えた銃を下ろすと、金縛りにでもあったようにその場に棒立ちになった。




お前らのアジトは、今から我々『武装遊撃戦線』が占拠する。逆らう奴は全員死んでもらう!







男はバイク集団に向かってよく響く大声でそう叫んだ。

そして片手で銃を構えると空に向けて盛大に乱射した。



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