おとり…?

そう。潤壱の安全のために露草もちゃんと連れてきたから大丈夫

でも、あの少年は火が…っ

あぁ、大丈夫大丈夫

なんでっ、僕の火がっ!!


突然少年の声音が変わり、何があったのかと視線を向ける。

ひゃはっ、美味ーぁいっ!すき焼きの方が美味いけどーぉっ!


露草が、少年の出した火を食べた…。
文字通り、近くを飛んでいる火を吸い込みモグモグと咀嚼している。

露草は、バグを食べるんだ

バグを、食べる…?

創造神がこの地球に人を作ったとき、同時に幾つものバグが生まれたんだ。
あの少年はバグの力で火を扱う事ができる。
露草もバグ持ちの一人、バグ持ちやバグの力を咀嚼して力にすることができる

食べるって…。
バグ持ちってのも人間なんだろ…っ?

そう。
でもバグ持ちは精神面に欠陥が出やすくてね、あの少年のように異常な思考が生まれやすい。
そうなったら、そのままにしておくわけにはいかないんだよ

…っ




お前なんてっ、灰にしてやるぅぅっ!!!

ひゃはははぁっ!!
やってみろよーぉっ!!!


火の玉の数が増え速度も上がったが、露草は少年の出す火を軽々と避けていく。

燃えろぉーっ!!

うっ!!

少年は頭上に火を集めていくが、その隙に接近してきた露草に地面に押しつけるように捕まった。

あぁーーんっ。んぐ、おせぇよぉー

火の塊は露草の口の中におさまり、すぐにごくりと飲み込まれる。

うわぁあぁぁっ

君程度の力じゃーぁこの距離で俺を燃やしたら、君も自分の火で火だるまになるよねーぇ?

離せっ、離せよぉっ!

じゃーぁね、おやすみぃーん


そう静かに呟き、露草は少年の首筋に注射をさした。
数分もたたないうちに少年の寝息が聞こえ始める。

つまんないつまんないつまんなぁーいっ!!!こんなちっさいのじゃ腹いっぱいになんねぇーしぃーっ!!

ぁ、もしもし。弟?

兄さんは公園を元に戻す為か、弟に電話をかけている。

なぁ、露草…

んー?潤ちゃぁんどうしーたのぉー?怪我痛いーぃ?

そいつ、食うのか…?

今日のおーやつーぅっ!!

何とか、できねぇかな…

潤ちゃんが言うならやめるーぅ…

潤壱…

電話を終えた兄さんに呼ばれ振り向く。

その子をそのままにしておくってことは、いつか潤壱の友達や家族が傷つくってことだよ?

っ…

バグ持ちの少年を助けようとすれば、母さんも、姉貴も、孝も傷つく。
だからといって、少年を食うなんて。
俺にはどうしたらいいかわからない…。

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