いつ見ても地味な会議室。

白を基調とした空間は見飽きてしまって
なんだかかたい感じがする
まあ、会議室なのだから当たり前か。

そんなことを考えていると
一番奥の社長の特等席に腰を掛けた。


表情から読み取るに
やはり深刻な話なのだろうか___?

社長

まあ、取り敢えず
その辺に座ってくれ。

私は社長に一番近い席についた。

よほど周りに聞かれたくない話なのだろう。
少しだけ声量や声のトーンを変え、
私へとさらに距離を縮めた。

社長

急にこんなことを
言うのも申し訳ないが・・・

橘杏子

なんです?
焦らすなんてらしくないですね

しばらくの間、静寂が訪れた。

そして、社長は意を決したのか
思いっきり私の手を握って、息を吸った。

社長

俺の子供を
助けてやってくれ!!

焦らした原因はこれなのか?
ドキドキした数分を返してほしい。

そして、昇格の話かもなんて
期待した自分を殴りたい。

橘杏子

助けるって何をですか?

社長

いつも誰かと遊びに
行っちまってよ。
親離れしてる気がして

橘杏子

はい?

社長

それに真面目に
学校行かなくてよ・・・

社長がこんなに親の顔を持っているなんて
意外だった。
というかただ単に親バカなだけかもしれない。

橘杏子

不登校気味なんですか?

社長

そうなんだよ・・・
俺に心開かなくてよ。
でも根は凄い良い奴なんだ

橘杏子

それで私にどうしろと?

社長

だから、お前に
俺の息子の世話係を命ずる!!

橘杏子

何言ってるんですか?

社長

人助けだと思って、な?
大丈夫だ。給料は弾ませる。

橘杏子

勿論承ります!!

社長

ほんとか!?
本当に良い奴なんだよ
人懐っこいし
動物が大好きな奴だ。

迷惑かけるかもしれん。
よろしくな。

よ、よろしく
お願いします・・・。

こんな感じの気弱な少年とか?

・・・

もしかしてミステリアス系男子!?

ごめんな、騒がしくて。

それか不良なんだけど、
お年寄りを助ける良い奴とか!?

社長

おい、大丈夫か?
ここにサインしてくれ

橘杏子

分かりました!

面倒を見るだけで
お金がもらえるなんてこんないい話はない。

更には給料もアップだ。
昇格したと言っても過言ではない。

坂田結城

なあ、聞いてる?

・・・過言でした。

何一つとして予想が的中していない。
期待外れにもほどがある。

橘杏子

帰っていいですか?

坂田結城

何言ってんだよ。
ばっちり契約書も
あるんだよ?

橘杏子

お金払えばいいですか?

坂田結城

召使いに
なってくれるんだよな?

橘杏子

吐き気がします。
お金は後日でもいいですか?

坂田結城

クビにになりたい?

橘杏子

精一杯
頑張ります~!

坂田結城

じゃあ、仕事着に
着替えてもらおうか

渡されたのはフリフリとした
この歳で着るのには相当な勇気のいる服だった。

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