電流が流れた瞬間に、ルーチェの体はフリーズした。
筋肉が固まってしまい、全く動かない。
くっ・・・・・・!?
電流が流れた瞬間に、ルーチェの体はフリーズした。
筋肉が固まってしまい、全く動かない。
計算通り
確かにちょっと魔法が使えるようだが、それだけで俺に勝てると思っていたのか?
アッシェはそのままルーチェから剣を奪い取る。
ルーチェの手から離れた途端に魔法が着れてただの剣になったが、アッシェは気にも留めない。
まぁ、俺の鎖をあそこまでさばけたのは褒めてやるよ。やっぱり、お前はここの騎士とは格が違う
・・・・・・褒められてる気がしませんね
褒美だ。このアッシェ・エンブリョーが求めるものを冥途の土産に教えてやろう。
ティアマットの胃の中だ
胃の中・・・・・・?
はん、やっぱり知らねえよな
ティアマットはただの魔物を生み出す母じゃねぇ。この世と冥府を繋ぐ境界なんだよ
・・・・・・・・・・・・
俺はどうしてもそこに行かなきゃならねぇ。そのために異名を得るまでに強くなったんだ
最初は騎士の力を借りることも考えたが、あそこまで弱いと足を引っ張る以前の問題だ。奴らは団体行動が好きみたいだが、ろくに魔法も使えないんじゃな
お前なら実力も十分といえるだろう。どうだ?俺の手下にならないか?
・・・・・・・・・・・・
魅力的でないわけではない。
西エリアの騎士の実力を知った以上、どう計画を立ててもルーチェの手助けなりうるとは考えにくい。
仮候補としてセラータを生かしてあるが、あくまで仮だ。
その点、アッシェは実力なら騎士を軽く上回る。
異名を持っていることからも明らかだ。
実際戦ってみても、彼の魔法は強力だと言わざるを得ない。
アッシェほどの実力者となら、中央エリアでも問題ないだろう――――
お断りします
・・・・・・・・・・・・・
一応理由を聞こうか
まず第一に、あなたは実力を測るためにクアドラートの騎士を皆殺しにした
共に行動するには、あなたは無慈悲すぎる
・・・・・・・・・・・・っ
そして、2つめ
この時、アッシェは初めて気が付いた。
ルーチェの背後の闇が濃くなっていることに。
まるで、ルーチェが闇を背負っているかのようだ。
てめえ・・・・・・!!
この程度も読めないとは、あなたは自身の魔法と異名に驕っていただけです。はっきり言って、あなたが殺した騎士達と遜色ありません
バカな・・・・・・異名も持って無い奴に、この俺が・・・・・・!
あぁ、言い忘れましたが、誰も異名を持って無いなんて言ってませんよ
なっ・・・・・・!
改めまして、僕はルーチェ・アルマ
異名は<オスクリタ・サンテ>
ルーチェの大きな礼と共に、背後の闇が揺れ動く。
暗い世界に、さらに黒い斑点が浮かび上がる。
アッシェの顔に、明らかな焦りが見える。
ルーチェから奪い取った剣を持っていたことに気づき、思い切り振りかぶる。
大きく振りかぶったことが仇となり、剣が壁に刺さってしまった。
抜こうとするも、アッシェはゾクッと気配を感じる。
ルーチェがアッシェの肩に手を伸ばしている。
さっきまで見下していた男の顔が、今はとても不気味に見えた。
うわっ!
間一髪で身をよじり、ルーチェと立ち位置が逆になる。
今、アッシェの後ろには、地上への階段へと繋がっている。
今は勝てないと踵を返そうとした瞬間――――
僕に背中を向けるとは、殺してくださいと言っているみたいですね
サンツィオーネ・オスクリタ
闇の弾丸がルーチェの後ろから放たれた。
弾丸はルーチェの体をすり抜け、まっすぐアッシェの元へ。
アッシェはダッシュで階段へ向かう。
自分の魔法で強化しているのか、常人離れした速さだったが、それでもルーチェの弾丸からは逃げられない。
螺旋階段を走るアッシェを追って弾丸も上に向かう。
その弾丸は相手にあたるまで絶対に止まりません。どれだけ速くても、おそらく出てすぐの廊下でチェックメイトでしょう
数分後、悲鳴が地上から聞こえてきた。
まぁ、殺さないように加減はしておいたし、今回は見逃す形になるだろう。
以前も言ったように、彼の首を取るのは自分の役目じゃない。
それに、泳がせておけば、後々役に立つかもしれない。
ティアマットの胃の中・・・・・・か
まさか、そこまで僕と目的が同じ者がいるとは
アッシェの実力などを考えると可能性は低いが、先に到達されるかもしれない。
しばらく行動できなくさせる意味でもダメージを与えたが、あまりゆっくりはしていられないだろう。
ルーチェはこれからの行動を考え、早急にセラータを起こすべきだと思った。