ルーチェ・アルマ

くっ・・・・・・!?

電流が流れた瞬間に、ルーチェの体はフリーズした。
筋肉が固まってしまい、全く動かない。

アッシェ・エンブリョー

計算通り

アッシェ・エンブリョー

確かにちょっと魔法が使えるようだが、それだけで俺に勝てると思っていたのか?

アッシェはそのままルーチェから剣を奪い取る。
ルーチェの手から離れた途端に魔法が着れてただの剣になったが、アッシェは気にも留めない。

アッシェ・エンブリョー

まぁ、俺の鎖をあそこまでさばけたのは褒めてやるよ。やっぱり、お前はここの騎士とは格が違う

ルーチェ・アルマ

・・・・・・褒められてる気がしませんね

アッシェ・エンブリョー

褒美だ。このアッシェ・エンブリョーが求めるものを冥途の土産に教えてやろう。

アッシェ・エンブリョー

ティアマットの胃の中だ

ルーチェ・アルマ

胃の中・・・・・・?

アッシェ・エンブリョー

はん、やっぱり知らねえよな

アッシェ・エンブリョー

ティアマットはただの魔物を生み出す母じゃねぇ。この世と冥府を繋ぐ境界なんだよ

ルーチェ・アルマ

・・・・・・・・・・・・

アッシェ・エンブリョー

俺はどうしてもそこに行かなきゃならねぇ。そのために異名を得るまでに強くなったんだ

アッシェ・エンブリョー

最初は騎士の力を借りることも考えたが、あそこまで弱いと足を引っ張る以前の問題だ。奴らは団体行動が好きみたいだが、ろくに魔法も使えないんじゃな

アッシェ・エンブリョー

お前なら実力も十分といえるだろう。どうだ?俺の手下にならないか?

ルーチェ・アルマ

・・・・・・・・・・・・

魅力的でないわけではない。
西エリアの騎士の実力を知った以上、どう計画を立ててもルーチェの手助けなりうるとは考えにくい。
仮候補としてセラータを生かしてあるが、あくまで仮だ。

その点、アッシェは実力なら騎士を軽く上回る。
異名を持っていることからも明らかだ。

実際戦ってみても、彼の魔法は強力だと言わざるを得ない。
アッシェほどの実力者となら、中央エリアでも問題ないだろう――――

ルーチェ・アルマ

お断りします

アッシェ・エンブリョー

・・・・・・・・・・・・・

アッシェ・エンブリョー

一応理由を聞こうか

ルーチェ・アルマ

まず第一に、あなたは実力を測るためにクアドラートの騎士を皆殺しにした

ルーチェ・アルマ

共に行動するには、あなたは無慈悲すぎる

アッシェ・エンブリョー

・・・・・・・・・・・・っ

ルーチェ・アルマ

そして、2つめ

この時、アッシェは初めて気が付いた。
ルーチェの背後の闇が濃くなっていることに。
まるで、ルーチェが闇を背負っているかのようだ。

アッシェ・エンブリョー

てめえ・・・・・・!!

ルーチェ・アルマ

この程度も読めないとは、あなたは自身の魔法と異名に驕っていただけです。はっきり言って、あなたが殺した騎士達と遜色ありません

アッシェ・エンブリョー

バカな・・・・・・異名も持って無い奴に、この俺が・・・・・・!

ルーチェ・アルマ

あぁ、言い忘れましたが、誰も異名を持って無いなんて言ってませんよ

アッシェ・エンブリョー

なっ・・・・・・!

ルーチェ・アルマ

改めまして、僕はルーチェ・アルマ

ルーチェ・アルマ

異名は<オスクリタ・サンテ>

ルーチェの大きな礼と共に、背後の闇が揺れ動く。
暗い世界に、さらに黒い斑点が浮かび上がる。

アッシェの顔に、明らかな焦りが見える。
ルーチェから奪い取った剣を持っていたことに気づき、思い切り振りかぶる。

大きく振りかぶったことが仇となり、剣が壁に刺さってしまった。
抜こうとするも、アッシェはゾクッと気配を感じる。

ルーチェがアッシェの肩に手を伸ばしている。
さっきまで見下していた男の顔が、今はとても不気味に見えた。

アッシェ・エンブリョー

うわっ!

間一髪で身をよじり、ルーチェと立ち位置が逆になる。
今、アッシェの後ろには、地上への階段へと繋がっている。
今は勝てないと踵を返そうとした瞬間――――

ルーチェ・アルマ

僕に背中を向けるとは、殺してくださいと言っているみたいですね

ルーチェ・アルマ

サンツィオーネ・オスクリタ

闇の弾丸がルーチェの後ろから放たれた。
弾丸はルーチェの体をすり抜け、まっすぐアッシェの元へ。

アッシェはダッシュで階段へ向かう。
自分の魔法で強化しているのか、常人離れした速さだったが、それでもルーチェの弾丸からは逃げられない。
螺旋階段を走るアッシェを追って弾丸も上に向かう。

ルーチェ・アルマ

その弾丸は相手にあたるまで絶対に止まりません。どれだけ速くても、おそらく出てすぐの廊下でチェックメイトでしょう

数分後、悲鳴が地上から聞こえてきた。
まぁ、殺さないように加減はしておいたし、今回は見逃す形になるだろう。

以前も言ったように、彼の首を取るのは自分の役目じゃない。
それに、泳がせておけば、後々役に立つかもしれない。

ルーチェ・アルマ

ティアマットの胃の中・・・・・・か

ルーチェ・アルマ

まさか、そこまで僕と目的が同じ者がいるとは

アッシェの実力などを考えると可能性は低いが、先に到達されるかもしれない。
しばらく行動できなくさせる意味でもダメージを与えたが、あまりゆっくりはしていられないだろう。


ルーチェはこれからの行動を考え、早急にセラータを起こすべきだと思った。

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