セラータ・ピグメント

・・・・・・・ん?

セラータが最初に気づいたのは、自分が床で寝ていたということだ。

うすらぼんやりした頭で、ゆっくり頭を回す。

ルーチェ・アルマ

・・・・・・・・・・・・

セラータ・ピグメント

・・・・・・ルーチェ殿!?

恐れ多くもスクデリーア隊長の椅子に腰かけて本を読んでいる客人の姿を見て、すべてを思い出した。

スクデリーア隊長だけでなく、本部に駐留していた騎士達も死んでしまったこと。
そして、犯人の捜索を仲間たちに任せ、自分は客人であるルーチェの護衛に回ったこと。

そして、仲間の悲鳴を聞いて、駆けつけようとしたところで意識を失ったことを。

セラータ・ピグメント

ルーチェ殿・・・・・・

答えを半ば悟りながらセラータは言う。
しかし、ルーチェがそれを遮る。

ルーチェ・アルマ

申し訳ありません。貴方の仲間達を助けることはできませんでした

セラータ・ピグメント

・・・・・・・・・・・・そうか

ゆっくりとうなだれるセラータ。
彼も起きた瞬間に分かっていたのだ。

もし犯人を捕まえていたら、少なくとも階下からもっと音が聞こえるはずなのだ。
歓声はないにしても、死んだ仲間を運び出したり、事後処理に追われているはずだ。




それなのに、階下どころか城の中から全く音がしない。
この部屋をのぞいて。

ルーチェ・アルマ

うなだれるのはまだ早いですよ

ルーチェの言葉に、はっと顔を上げる。
彼は視線を本から離さない。

ルーチェ・アルマ

貴方に仲間を殺した犯人は中央エリアに行くようです。ですから、我々も中央エリアに行けば・・・・・・

セラータ・ピグメント

……何を言ってるんだ

もう意味はない。

仲間はもういない。
尊敬していたスクデリーア隊長も死んでしまった。
他の仲間達も・・・・・・。

しかも、犯人が逃げたのは中央エリアだ。

この西エリアなんかより、はるかに凶悪な魔物が跋扈している。
自分の力では1分も保たないだろう。

だったら、自分はここに残って騎士のまねごとを続ければいいんじゃないか。
もう一人しかいなくなった騎士団を、自分が背負っていくのもいいのかもしれない。


しかし――――――――

ルーチェ・アルマ

それでいいんですか、貴方は

セラータ・ピグメント

・・・・・・どういう意味だ?

ルーチェ・アルマ

今中央エリアに入れれば仲間たちの敵を討てるかもしれない。ですが、ここで足踏みをすればその機会は永遠に失われる

ルーチェ・アルマ

それでも、貴方は後悔しませんか

ルーチェがセラータを見つめる。
その目の奥に深い何かが見えて、セラータは息を呑む。


そういえば、彼はなぜ中央エリアにここまでこだわるのだろうか。
彼はいったい、どんな『闇』を抱えているのだろう。

ルーチェ・アルマ

貴方を差し置いて犯人を討とうとしたのは謝ります。ですが、貴方はここで失うのは惜しい

ルーチェ・アルマ

今度こそは、貴方が討てばいいんです

セラータ・ピグメント

ルーチェ殿・・・・・・

セラータはゆっくりと立ち上がる。
もう、その目に迷いはない。


自分の力不足は、鍛えればいい。
大切なものは、確かに見えた気がした。

セラータ・ピグメント

ルーチェ殿、感謝する

ルーチェ・アルマ

礼を言われることでもありませんよ

セラータ・ピグメント

行こう、門まで案内する

ルーチェ・アルマ

本当にいいですか?戻るなら今のうちですよ

セラータ・ピグメント

私をその気にさせたのは其方じゃないか・・・・・・

セラータ・ピグメント

もう私に迷いはない。其方と共にティアマットまで行く。そして仲間の敵を討つのだ

ルーチェ・アルマ

結構。では、準備はいいですね

セラータは剣を確認し、再びルーチェに対して頷きを返す。

早朝のクアドラートは、とても静かだ。

ルーチェ・アルマ

行きましょう、ティアマットへ

彼らの戦いは、まだまだ続いていく・・・・・・

クアドラート The End

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