ド素人の盗賊たちを懲らしめてから数日、
私たちはリト湖畔にあるコーツ村に到着した。


この村は人口が多いわけでもないし、
特徴的な名産があるわけでもない。
湖で漁をして生活している人がほとんどの
静かな場所――のはずなんだけど。

なぜか村の中には屈強そうな傭兵や
冒険者の姿があちこちに見られる……。
 
 

アルベルト

やけに賑やかだな。

アラン

でもほとんどが
村人じゃないっぽいぞ?

ミリア

確かにそうね。
しかも目がギラギラしてる感じ。

…………。

…………。

 
みんな刺々しい気配を漂わせていて
近寄りがたい。
血に飢えたモンスターみたいに
殺気を放っている。

ちょっとでも気に障るようなことを
してしまうと、
口より先に手を出してきそう……。
 
 

ルドルフ

ふむ……。

ルドルフ

少し様子を探った方がいいな。
アルベルトとアランは
一足先に情報を集めてきてくれ。
俺たちは宿を探してから、
状況を見て適宜動く。

アルベルト

分かった。

アラン

あいよ~!

 
アルベルトとアランは
道中用の武具を装備したまま、
馬車を降りて村の中へ消えていった。

町や村の中を歩き回る時は
普段着に護身用のナイフ程度の
装備しかしないんだけど、
この雰囲気じゃ何が起きるか
分からないもんね。


一方、私たちは
メインストリートを進んでいき、
そこに面して建つ宿を見つけた。

座長と私はその宿に入って
部屋の確保へ向かう。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
出入り口の横にあるカウンターには
宿屋のおじさんが立っていた。

ロビーにはたくさんのお客さんがいて
かなり繁盛しているみたい。
部屋が空いているといいんだけどなぁ……。
 
 

宿屋の主人

いらっしゃいませ。

ルドルフ

今晩、2部屋空いているか?

宿屋の主人

何名様でございますか?

ルドルフ

6人だ。

宿屋の主人

左様でございますか。
それでしたら大部屋1つで
お願いしたいのですが……。
お客様が殺到しておりまして。

ルドルフ

どうする、ミリア?

ミリア

えぇ、私は構わないですけど。
今までだって何度かそういうこと、
あったじゃないですか。

ルドルフ

そうか。
お前がいいって言うのなら
俺に異存はない。

ルドルフ

宿屋、その条件でいい。
部屋を頼む。
それと馬車を建物の裏にでも
止めさせてもらいたいんだが。

宿屋の主人

承知いたしました。
裏庭がございますので、
どうぞご自由にお使いください。
では、お部屋にご案内いたします。

 
 
 
 
 
宿屋のおじさんは部屋のカギを持ち、
2階の大部屋へ私たちを案内してくれた。

部屋の中にはベッドが6つ並んでいるけど、
広さは充分にあるので窮屈な感じはしない。
窓からの見晴らしもいい。
 
 

宿屋の主人

このお部屋でいかがでしょう?

ミリア

はい、問題ありません。

宿屋の主人

では、ごゆっくり。

 
 
 

 
 
 
宿屋のおじさんは座長にカギを渡し、
部屋を出ていった。

私は窓を開けて外の空気を室内へ入れる。
 
 

ルドルフ

やはりこの村、何かあるな。
宿泊客も多いようだしな。
アルベルトたちが戻ってくるまで
俺は宿屋の親父から
情報を仕入れてくる。

ミリア

それなら私たちは
身の回りのものだけ
部屋に運んでおきます。

ルドルフ

頼んだぞ。
そのあとは部屋で
待機していてくれ。

ミリア

分かりました。

ルドルフ

でも、これで良かったのか?

ミリア

何がですか?

ルドルフ

部屋のことだよ。
今はフロストがいるだろう。
気にならんのかと思ってな……。

ミリア

あっ!

ミリア

そのこと……
すっかり忘れてた……。

ルドルフ

あっはははっ!
その顔、頭になかったな?
でももう遅いからな?

 
座長は大笑いしていた。

そっか、だから部屋をどうするか
私に聞いたんだ……。


もうっ!
だったらハッキリ言ってくれればいいのにっ!
うぅ……寝顔とか見られちゃうかも……。
 
 
 
部屋の中にシーツで簡単な仕切りでも
作るしかないかなぁ。
でも同じ空間で過ごさなきゃいけないのには
変わりないんだよね……。

気分が滅入ってきたよぉ……。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

第14幕 湖畔の村のおかしな気配

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