私たちは、エレベーターで一番上まで上がった。

 そこからはガレキの山を這いあがった。

 ショッピング・モールの地下に出た。

 私たちは歩きながら、痴女さんに今の状況を説明した。

えぇ――!? 男の子いないのォ!!??

えっ、うん

 私たちは、うなずいた。

 すると痴女さんは、がっくりうなだれた。

 どうやら痴女さんは、すぐ近くに学校があって、そこから私たちが逃げてきたと思ったらしい。

下手したら市内に男はいないじゃない……

 痴女さんのテンションが思いっきり下がった。

 私たちは、そんな痴女さんをつれて下着売り場に戻るのだった。

 

ROUND6
肉林の痴女『モブハーレム』

 

 戻る途中、ちょっとしたフードコートがあった。

 そこにはテレビとソファーがあって、休めるようになっていた。

 そしてテレビでニュースがやっていた。

みなさん、これが『こしのくに市』です。みなさんが見ているのは、上空から超望遠レンズで映した現在の『こしのくに市』です。なんと言ったらよいのでしょうか

………………

何が起きているか、まったく説明できません。私は、いや、人類はこの現象を説明する言葉をもっていないのです

………………

市内のいたるところが痴女だらけです。あらゆるところから火災が発生しています。しかし、消防車はあらわれません。それどころか車が一台も走っていません。痴女があふれています。すべてが手に負えなくなっているのです

……まあ、後で観ましょう

 痴女さんは、さびしげにそう言った。

 私たちは言葉が出ず、沈黙したままうなずいた。

 下着売り場に向かった。

 下着売り場に到着した。

 私たちは身支度を調えた。

 ほっと、ひと息ついたところで私は言った。

あの、お手洗いに行ってきてもいいですか?

えっ? どうぞ

あっ、私も行く

私もっ

ちょっとお? 全員で行くの?

えっ、うん

ひとり残りなさいよお

えぇー?

だって、さびしいじゃない

 痴女さんは、甘えた声でそう言った。

 ちょっとわざとらしくて、でも、オジサンにウケそうな媚びかただった。

じゃあ、私が残るよ

小夜?

いいの?

うん

じゃあ……

ごめんねっ

いってらっしゃい

小夜、頑張って!

頑張って!

なによ、『頑張って』ってえ

 痴女さんは、かわいらしく怒った。

 私と、いつきは、ちょこんと頭を下げるとお手洗いに向かった。――

 お手洗いに入ると、私は無線機を取り出した。

 お姉さんを呼んでみた。

 別に痴女さんに秘密にするわけではないけれど、でも、なんとなく堂々と無線で話すのはためらわれた。

 まあ、正直に言うと説明するのが面倒だった。

 今日は、いろいろあって疲れていたのである。

もしもし……

なかなか出ないね

というかこれで使い方あってるのかな?

うーん

 しばらくの後、無線機が反応した。

MI6の諜報員

こんばんは。……お嬢ちゃん、今どんなパンツはいてるの?

こらっ

って、智子。向こうがしゃべってるときは、こっちの声は聞こえないんだよお

あっ、そうか

どうやって切り替えるの?

ええっと

 私たちがあせっていると、お姉さんはまた言った。

MI6の諜報員

これから隠密行動だから電源を切る。それと、帰りは明日の朝になる。先に休んでて

えっ!?

あのっ

………………

 無線機は沈黙した。

 私たちは、しばし呆然と立ちつくした。

 やがて、いつきが言った。

今日は、ここにお泊まりだね

うん

痴女さんと一緒だね

うーん

大丈夫だよ、悪い人じゃないよお

それは絶対にそうなんだけど

 息を吐くように下ネタを言うのは、ちょっと困る。

 ずっと一緒にいたら、私たちも平然と下ネタを言うようになってしまうような、そんな気がする。すくなくとも下ネタの引き出しは確実に増えると思う。……。

痴女さんの下ネタって、『エッチ』じゃなくて『スケベ』なんだよなあ

あはは

まあ、それはともかくとして

戻ろっか?

うん

 私たちは、お手洗いを出た。

 するとそこには、3人の痴女がいた。

うふぅん

うわっ

襲いかかってきたっ

 私たちは、痴女じゃらしを構えた。

 それで痴女を牽制した。

らめえぇ

あれ? 弱くない?

うん。弱い……というか

今までのが強すぎたんだ

それに私たちも強くなったんだよお

はわわわわっ

えいっ

やあっ

 私たちは、痴女じゃらしで突いた。

 すると3人の痴女は、しなしなと崩れ落ちた。

きゅぅうん

 それから、まるで捨て猫のような目で私たちを見た。

………………

ねえ、智子

うん?

なんか可哀想

うん、でも

分かってるよお、でもっ

私たちも、いつ、あの娘たちみたいになるか――

――分からないよね

 いつきと私は、目と目を逢わせた。

 それから、ゆっくりうなずいた。

 そこには葛藤があった。

 やがて、いつきが言った。

倒せないよ

………………

助けてあげようよ

うん。でもどうやって?

うーん

うーん

 私たちは首をひねった。

 3人の痴女を見た。

はうっ

 3人の痴女は、あわてて顔をそむけた。

 いかにも恥じらっているような、おびえているようなポーズだった。

分かった。首輪をしよう

首輪?

犬みたいに柱にくくりつけておけば安全だよお

たっ、たしかに

 それは、その通りかもしれないのだけれども。

 どことなくサディスティックな感じがするのは気のせいだろうか。

そこのスポーツ用品店にロープがあるよ。あれで縛ろう

えっ、うん

ちょっと見張ってて

あっ

 いつきは、スポーツ用品店に行った。

 すぐにロープを持って戻ってきた。

 そして、テキパキと3人の痴女を柱にくくりつけた。


 痴女は、いっさい抵抗しなかった。

 とろんとした瞳で、痴女じゃらしを見つめるだけだった。

よしっ! これで大丈夫

うっ、うん

戻ろうよお

 さっぱりとした顔で、いつきは言った。

ううん……

 私は、あいまいな返事をした。

 それから、いつきと一緒に下着売り場に戻った。

………………

 だけど正直に言うと、痴女を倒さなかったことがすこし気なった。


 情に流されやすいというなら、まだ格好もつくのだけれど。

 ただ状況に流されやすいというのだから、まったくもって情けない。


 と、そんなことを思いながら戻っていると。

 突然、お尻をなでられた。

 振り向くと、痴女さんと小夜がいた。

あれ?

どうしたの?

お腹がすいたから、食べ物を探してた

 小夜は屈託のない笑みでそう言った。

バナナがあったわよっ

 痴女さんは、瞳を輝かせてそう言った。

 それから痴女さんはスケベな笑みで、べちゃあっとバナナを舐めた。


 なんというか予想を裏切らない、ベタな動きをする痴女さんなのだった。

肉林の痴女『モブハーレム』

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