目を開けると、そこには青空が広がっていた。
日差しがすごく眩しくて熱い。
ん……あ……。
目を開けると、そこには青空が広がっていた。
日差しがすごく眩しくて熱い。
っ!?
ごほっ! ごほっ!
息苦しさを感じ、
思わず体を横にして嘔吐いた。
喉を通り、胃の中から水が外へ戻される。
何度か水を吐き出して、
ようやく苦しさから解放された。
――え?
もしかして私、助かったの?
でも……どうやって……。
あんな海底から
生きたまま流れ着けるものなの?
……いえ、それは難しいはず。
ビセットが言っていたように、
水中都市があったのが深い海底であるならば。
私が転移魔法で助けたのよ。
っ!?
不意にすぐそばから声がした。
慌てて体を起こし、
その声がした方向へ視線を向ける。
するとそこにいたのは――
あんた……
確か船に乗っていた……。
えぇ、クレアよ。
っ! この気配っ!
へぇ、気付いたみたいね?
その通り、私は魔族よ。
くっ!
思わず身構えてみたものの、
魔法力が枯渇している今は戦うすべがない。
しかも溺れたせいか体力も回復していない。
……それより根本的な疑問なんだけど、
どうして魔族が私を助けるわけ?
落ち着きなさい。
私はあなたの敵じゃないわ。
――と、こっちは勝手に
思っているだけだけどね。
もし殺すつもりなら、
さっさとしてるわよ。
そもそも助けるわけないでしょう。
……確かにそうだ。
何者なの、あなたは?
私はミューリエの指示で
動いているの。
勇者を影からサポートするために。
ミューリエの?
事情を話すわ。
このあと、
私はクレアやミューリエの正体について
知らされた。
まさかミューリエが伝説の勇者様と戦った
元魔王だったなんて……。
それなら四天王と互角に戦えたこととか
色々なことが納得できるけど。
――でも、クレアの言うことを信用して
いいのだろうか?
相手は魔族。決して油断をしてはいけない。
……はい、これ。
クレアは魔法力の漂う腕輪を私に差し出した。
どうやらこれには
連動魔法がかけられているみたい。
連動魔法のかかった魔法道具は
一度身につけると自分の意思では外せない。
それができるのは、
対になるものを身につけた相手だけ――。
どうせ魔族の言うことなんて
信用できないって
思ってるんでしょ?
デモンキラーのレインさん。
っ!?
調べさせてもらったわよ、
あなたのこと。
各地で結構強力な魔族を
葬ってるみたいね。
だからすんなりと
私を信用してくれるなんて
思ってないわ。
気付いているかもしれないけど、
その腕輪には
連動魔法がかかっているわ。
片方は私が身につけている。
そう言ってクレアは自分の左腕を私に見せた。
確かにそこから、
受け取った腕輪と同じ魔法力が漂ってきている。
つまりこの2つはペアってことね……。
これを私が身につければ、
あなたと私は
運命共同体ってわけね。
えぇ、その通り。
つまりあなたが自分の命を絶てば、
私も死ぬ。逆の場合も同じだけど。
これで信用してもらえた?
……少しはね。
私は今後もミューリエや
勇者のために色々と動くわ。
でも私だけだと対処できない
ケースも出てくるでしょう。
特に戦闘を伴う場合、
数で押されたら正直厳しいわ。
なるほどね。
確かに私なら戦力になるわね。
それでスカウトってわけ?
クレアは満足げに微笑みながら頷いた。
……ただし、
私たちは影で動くのが大原則。
想定外のことがあって
船では接触してしまったけどね。
シャインの存在ね?
さすがね。
察しのいい人は
話が早くて助かるわ。
あまり勇者と接触すると、
私たちの存在が魔王軍に知れ渡って
警戒される可能性があるわ。
つまりしばらくは
アレスたちに会えないわけね。
そして私が
その条件を呑むと思って助けた。
もし拒否するようなヤツなら、
助けるつもりなかったんでしょ?
間に合わなかったって
ミューリエに
報告すればいいものね?
……さぁ、どうかしら?
ふふっ、あんたも食えないヤツね。
でもいいわ、それに乗ってあげる。
あたしを助けてくれたし、
アレスのためになるんだもんね。
話が分かる相手は好きよ。
よろしくね、レインさん。
私たちはガッチリと握手を交わした。
こうして私はクレアとともに、
アレスを影からサポートする役割を
担うことになった。
彼と会えないのは寂しいし、
きっと私が死んじゃったって悲しみを
背負わせたままになっていると思う。
――でもいつか必ず
再会できる時が来るって信じてる。
悲しませ続けたことは、その時に謝ればいい。
そして彼はきっと許してくれる。
そういう素敵な男の子だってよく知ってる!
再会する時は成長した姿を見せてよね、
アレスっ!
私、楽しみにしているからっ!
特別編・3
(強がり/新たな役割)
終わり