特別編・3(全2回)
 

レイン

今回のお話の主人公:レイン
場所:水中都市メーリン
時期:第52幕のラスト

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
私は思いっきりアレスの体を押した。
よろけながら倒れ込む彼の足下にあるのは
転移の魔方陣。

あとは私がスペルを唱えれば、
地上へと瞬時に移動させられる。

彼は今にも泣きそうな顔をしながら
必死に私の方へ手を伸ばした。
 
 

レイン

う……。

 

一瞬、手を伸ばしそうになってしまった。

でも絶対にそれをしてはいけない。
だってそんなことをしたら、
アレスを助けることが
できなくなってしまうから。

もしかしたら、
一緒に死ぬって言い出すかもしれない。



それだけは……絶対にダメ……。
彼には……生きてほしいもん……。

だって私はアレスのこと……。
 
 

レイン

……さよなら。

 

手を伸ばすのを寸前でなんとか思い留め、
笑顔でお別れの挨拶をした。

どうせ今生の別れになるなら、
泣き顔よりも
笑顔を覚えておいてほしいじゃんっ!
 
 
 
 
 

レイン

開け、空間よ!
迷いし者を、かの地へ導けッ!

 
 
 
私がスペルを叫んだ瞬間、
転移の魔方陣は光に包まれた。
そしてアレスの姿は目の前から消える。


これで彼を水没する町から救うことができた。
 
 

レイン

は……ははは……。

 
 
不思議だ……。

直前まで悲しくて、苦しくて、
胸が張り裂けそうだったのに、
アレスを救えたと実感した途端に
そんな気持ちはどこかへ吹き飛んだ。


今はすごく嬉しくて満足している。
気持ちが高揚して、体全体が熱い。
自然に笑みがこぼれてくる。
 
 

レイン

あれ……?

 
 
気がつくと、私の目から涙が零れていた。
嬉しい気持ちなのに、これは嬉し涙じゃない。
しかも止められない。


なんかもう……
自分でも自分の気持ちが分からないな……。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
冠の力によって海水から町を守っていた
アレスがいなくなったからか、
亀裂から溢れてくる水量が急激に増えた。



――きっともうすぐここは海に沈む。

逃げ場なんてない。助かる手段もない。
……それに……もう何もする気は起きない。
 
 

レイン

溺れ死ぬのって
苦しいらしいわよね……。

 
 
それを考えた瞬間、
全身が震えだして止まらなくなった。

――寒くなんてないはずなのに、すごく寒い。
 
 

レイン

あ……。

 
 
寒いなぁなんて思ってばかりいたら、
アレスの温もりを思い出しちゃった。


見た目から細い体なのかと思っていたけど、
意外にしっかりしていたなぁ。
それに力強いような気がした。

やっぱり男の子なんだね……なんて……。


年下で頼りなさそうで
放っておけない感じなのに、
たまに見せる勇ましさや凛々しい顔。

あんなの……卑怯だよ……。
ドキドキしちゃうに決まってるじゃん……。




私ももう少し素直に自分の気持ちを
伝えられたら良かったかな。

アレスは気付いていなかったかも
しれないけど、
私って意外に臆病なんだよ?




普段は強がっているだけなんだもん……。
 
 

レイン

あははっ!
ダメだなぁ、あたしっ!

レイン

でもこんな弱気な姿、
タックに見られなくて良かった。
アイツ、
ずっとバカにしそうだもんっ!

レイン

あははははっ!

レイン

はははは……
はは……は……。

レイン

…………。

 
 
タックも気のいいヤツだったな。
波長が合うというか、
ずっと昔っからの親友だったみたいな。

それに妙に勘がいいというか、
あたしが命を捨てる覚悟だったこと、
気付いてたみたいだもんね……。


シーラもすごく可愛い妹。
アレスのこと大好きなクセに言えずにいて、
なんだか見ていて微笑ましい。


ミューリエ、彼女はちょっと不思議。
あの強さはただ者じゃない。
だって四天王と対等に戦えるなんて……。
何者なんだろう?

でも初めて出会った時と比べて、
再会した時は確実に性格が丸くなってた。
きっとそれはアレスの影響なんだろうな。
 
 

レイン

……あ。

 
 
とうとう目の前に水が迫ってきた。
それはあっという間に周りを飲み込んでいく。

――なんて思っている間に大きな波がっ!
 
 
 

 
 
 
 
 

レイン

がはっ! ごぼっ!

 
 
目の前が……暗くなっていく……。


あ……ぁ……。
 
 

 
 
 
特別編・3-2へ続く!
 

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