私は部屋に戻り、夕食の時間を待っていた。
今日でこの町での興行が終わりなので、
酒場で少し豪華な打ち上げをする
予定になっている。


でも座長がどこかへ出かけたまま
戻ってこないので、今は待機中だ。

ちなみに同部屋のアーシャは
窓から星空を見上げている。
 
 

ミリア

座長、戻ってこないねぇ。

アーシャ

そうですね。
確かに少し遅いような気がします。

ミリア

何かあったのかなぁ。

アーシャ

先に酒場へ行ってはいかがですか?
私が留守番をしていますので。

ミリア

ダメ!
打ち上げの時は全員が揃って
食事をするって決めてるでしょ?
アーシャも一緒じゃないと。

アーシャ

それはそうなのですが、
私はその場にいるだけで
食事はしませんし。

ミリア

その場にいるってことが大事なの!
色々とお話だってできるでしょ?

アーシャ

優しいですね、ミリアさん。
こんな私なんかのために……。

ミリア

アーシャは大切な家族だもん。
当然じゃない。

アーシャ

嬉しいです……。

ミリア

私、アルベルトのところへ
相談しに行って――

アラン

おーい、入るぞー?

 
――その時だった。

ドアがノックされ、
向こう側からアランの声が聞こえてくる。
 
 
 
 
 

アラン

座長が戻ってきたぞ。
フロストも一緒だ。

ミリア

フロストも?

アラン

戻ってくる途中でたまたま会って、
一緒に来たらしい。

アラン

――っていうか、
すでに2人で軽く一杯
やってきたみたいだぞ。

ミリア

えぇっ!?

アラン

だって酒臭いもん。

ミリア

座長ったら、もぅ~!
みんな待ってたっていうのにっ!
とっちめてやるんだから!

アラン

オイラ、もう腹ペコで
怒る元気なんてないよぉ……。
さっさと夕食に行こうぜ……。

ミリア

私は座長を叱るからね?
だってほかに
誰も何も言わないもんっ!

 
その後、私はアーシャやアランと一緒に
宿屋のロビーへ行くと、
真っ赤な顔をしてご機嫌な気分の座長を
叱りつけた。


でも全然懲りていない感じで、
ただヘラヘラと笑って頭を下げるだけ。
座長ったらお酒を呑んだ時だけは
だらしないんだから、もう……。

フロストも一緒にいたのなら
止めてくれればいいのに。
ホント、肝心な時に役に立たないヤツっ!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
翌日の朝、
私たちはライカントの町を出発した。
しばらくは道の状態がいい基幹街道だから、
スムーズに進んでいける。
馬車の乗り心地もマシな方だ。


馬車はアルベルトと座長が交代で操り、
私やアーシャ、アランは興行の時に売る
工芸品を作りながらの移動となる。

アランは木彫りの食器、
アーシャは帽子や服などの布製品、
私は布製品のほかパンフレットやチラシを
主に作っている。

ほかにも簡単な交易なんかもしているけど、
そうした副業の売上も結構大きいんだよね。



一方、旅に加わったばかりのフロストは、
座って私たちの様子を眺めているだけ――。
 
 

フロスト

みんなうまいものだねぇ。

ミリア

見てないでアンタも何か手伝えば?
新入りなんだし。
やり方が分からないなら
教えるわよ。

フロスト

うーん、そうだねぇ。
じゃ、ミリアのパンフレッ――

アルベルト

フロスト!
手が空いているなら
こっちを手伝え!
馬車くらい扱えるだろっ?

 
前の方からアルベルトの声が聞こえてきた。
どうやら私たちの会話が聞こえていたみたい。

荷物に隠れていて姿は見えないけど、
声はイラついている感じだ。
まだフロストのことを
快く思っていないんだろうな……。
 
 

フロスト

ご指名があったから、
僕は彼の手伝いをしてこよう。

 
そう言ってフロストが馬車の中を通り、
前へ移動しようとした時のことだった。

不意にキホーテとナンテが大きくいななき、
衝撃とともに馬車は停止する。
私は咄嗟に立ち上がり、
荷物が崩れないように体全体で
それを押さえる。

ただ、しっかりヒモで固定してあったおかげで
幸いにも少しズレただけで済んだけど……。
 
 

アラン

イテテテ……。
なんだよ、急に……。

アーシャ

びっくりしました……。

フロスト

みんな怪我はないか?

ミリア

うん、なんとかね。
アンタは?

フロスト

僕も大丈夫だ。
それよりもどうして急に
馬車が止まったんだ?

アラン

みんなあれを見てみろよ!

 
 
 

 
 
 

アランが馬車の後方を指差した。

そこいたのは覆面をした集団。
手にはシャムシールやダガー、弓などを持ち、
何人かは馬にまたがっている。
どうやら馬車は囲まれてしまっているみたい。


――まさかこいつら、盗賊団っ!?

こんなに町から近い場所で、
しかも朝っぱらから出没するなんて
なかなかいい度胸してるじゃないっ!!!



私は瞬時に戦闘態勢へ意識を切り替えた。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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