伝説の龍バハムートは、一人、彼女のマスターである力尽きて眠ってしまった少年を見つめながら思い出にふけっていた。
早くマスターを助けなくちゃね・・・。
私が最初にこの世界に召喚されてからもう十年。
マスターの両親に呼び出されて、何を指示されるかと思えば「この子を生まれ変わっても永遠に守ってくれッ!」だったわね。
伝説の龍バハムートは、一人、彼女のマスターである力尽きて眠ってしまった少年を見つめながら思い出にふけっていた。
生まれ変わっても永遠に・・・マスター、あなたを守るからね。
彼女は改めてそう心に誓うと、華奢に見える左手で背中をさすりながら、空に一緒に飛ぶ為の魔法ウィングをかけ、この付近で魔力が一番強く感じる場所に向かい始めた。
日本魔法都市、現東京 防衛省 特殊召喚士部隊
通称SS隊 モニタリング室
隊長ッ‼
マジヤバい反応が東京に向かって来ます‼
お前は本当に・・・何でもかんでも大げさなんだよ。
マイマスター、今回は本当にやばいよ。
何だかよく分かんないけど、反応はバハムート。それも完全体よ。
・・・マジで。
マジで。
指揮官と思われる中年男は、それを聞いて驚くそぶりを全く見せない。
僕たちでもダメかい?ゼウス。
私たちだけでは到底かないません。ここからでもそれがよく分かります。
俺たちも行きますよ!
俺とシヴァの遠、中、近距離攻撃で援護します!
そんじゃ頼んだ。倒さなくてもいい。まず足止めをして、それから直接バハムートさんに話を聞いて、それで敵対行動をとる場合は迷わず身動きが取れないようにしてね。
後、絶対に・・・
死ぬな、でしょ?
もう耳にタコが出来るほど聞きましたよ。
指揮官と思われる男は、表情や行動には見せないものの、何処か嬉しそうだ。
なら良い。出撃だ。
もうちょっとの辛抱だからねマスター。
その頃バハムートは、砂漠の砂を大きく舞い上がらせながら日本魔法都市、東京に向かっていた。
・・・あら、お客さんかしら?
この感じ、ゼウスね。それとシヴァ、・・・武器化しっぱなしにされているみたいね。なんかくたびれているは。
シヴァのマスター自体はかなり力があるとみて間違いないわね。
でもゼウスの方は、変ね何も感じないわ。
この時、彼らはまだ都市から出ていない。バハムートは、都市の中にいる召喚士の中で特に力がありそうな者をピックアップし、ずっと透視でみていたのだ。
ハイそこまで。
モニタリング室から空間転移式魔法円、テレポを使って防衛省 特殊召喚士部隊の完全体ゼウスのマスターが目の前に現れた。遅れて、完全体シヴァのマスターも現れる。
そんなに急いで何しているんだい。
・・・!その子は君のマスターかい?
コイツ、男?女?それとも中性?
私のマスターは立派な男の子ですよ。
なんだってッ!男の娘なのか!
何言っているんですかアキラ?
どう見ても男の子じゃないですか。
人は見た目で性別を判断するが、召喚されている神や魔物は、魂の色で性別を見分ける。なので・・・。
いやてっきり女の子だと思っていたからさ、やっぱ人は見た目じゃないね。
当たり前じゃないですか?
人は見た目じゃないですよ、立派な男の子ですよ。
まぁ、そういうことだ。勉強になったなアキラ。
アキラが勘違いをしていると分かっていながらも話しを水に流す男。
はい!いい勉強になりました隊長。
とりあえず、マスターを助けてくれないかしら?
もう死にかけていてマズいんだけど・・・。
良いだろう。
だがそれには条件を三つ飲んでもらわないと行けない。
あら、何かしら?
一つ目は、まず僕たち日本魔法都市東京の防衛省特殊召喚士部隊、通称SS部隊に入隊してもらう事。二つ目は、東京に住む事、そして三つ目は、その君のマスターである少年がどこから来たのか、そして知識があまりない場合ちゃんと都市にある学園都市エリアにある学校に通ってもらう事。
・・・どうかな?
少年、だと。
俺は今まで勘違いをしていたのか!
あいかわらずアキラはバカだ。
他に行く当てもないし、マスターが死んじゃうと私が召喚された意味もなくなっちゃうからその条件飲むわ。
・・・意外だね。もっと抵抗するかと思ったよ。
そう?抵抗する意味ないし、それにここで本気で戦ったらここ一体をこの時空から消滅させてしまうからそちらにも得じゃない訳だし、そちらにも良いと思うんだけど。
私たちを監視下に置ける訳だし、それに他国へのプレッシャーにもなるわ。そうすれば、マスターが安全に暮らしていける。
それが私の目的なのよ。
なるほどね。納得したよ。じゃあ、交渉成立って事で、いいね?
では、行きましょうマスター。
私、インドア派だって事知っているでしょ?
日光嫌なの。
分かっているよ。じゃ、行こうか。
じゃ、いこう。ジャ、イコウ。
ジャイコウ・・・
あのドラ〇も△のジャイ子ッ!
アキラ・・・うざいよ。
行きましょうマスター。彼も相当衰弱しています。
そうだな。早く帰ろう。
バハムートさん、まだ都市の転移円が分からないと思うから手を貸して。
それなら大丈夫よ。
私には、魔法円なんて必要ないもの。
それに使うとしてももう解析が終わっているわ。
後、私の事はバハムートでいいわよ。
凄いな、あそこの魔法円は超複雑に作ったのに、バハムートはただ力があるだけじゃなく頭もかなりいいとみる。
よし帰るぞ。
アキラはその場で百回スクワットしてから来い。
一回に二十秒かけろよ。
分かったよ隊長。よしシヴァしっかり数えてくれ。
よしこれで少しゆっくり出来るぞ・・・。
戦闘だとすごくいいんだがなアキラは
普段一緒に生活するのは、本当にヤダな。
アキラ以外の、SS部隊員はモニタリング室に帰還した。もちろん名もなき主人公とバハムートも一緒に。
名もなき主人公を医療施設に転移させ、バハムートはとりあえず肩の荷が下りた。
お疲れさん。二、三日安静にさせとけば大分回復するよ。
それよりどうだいここは?
ここがSS部隊の部屋なのね。
セキュリティはかなり高いわね。私でもここの防御システムの解析に二分かかったわ。
二、分!
そう二分よ。
それに隊長はかなり優秀な騎士だったのね。
第五次世界大戦で前衛で戦っていたのかしら、多分これはイギリスの騎士の中でもかなり上のはずよ。
惜しいね。初対面でそこまで近くそして具体的な予想が来るのは初めてだよ。
じゃあ、あなたは一体?
残念だけど、僕は人間と人間から生まれた吸血鬼のおいしい能力だけを受け継いだ、というか受け継がされていた人間。
つまりは、僕の両親が実験台にされてね。
両親は英国の優秀な騎士と王妃だったみたいでね。英国が日本に降伏する条件として、当時の内閣総理大臣が条件として王妃をさしだすことを出したんだ。
英国は王妃を一人で行かしたくないという思いもあってか、遺伝子的には父にあたる騎士を行かせたんだ。
結果僕は生まれたんだけど、両親は死んでしまった。
両親はなぜ死んでしまったの?
これ以上聞かないで、止めてッ!
ゼウス、いいんだ。
僕が話すと決めたんだ。
・・・うん、ごめんなさい。
僕が、皮膚から髪の毛から肉から目玉から骨から骨の髄から腸の中にあった便まできれいにたいらげたらしい。
そして人間の赤ん坊の肉体っだった僕は父の肉体に母の髪と目の色を受け継いだ。
いわば、人間によって生み出された人間であって人間でない奴だ。
まだ生まれて約九年だな。
じゃあゼウスは・・・。
そう、僕の父が召喚した完全体の神だ。人の姿をしているだろ?
改造された精子を王妃から取り出され、色々いじくられた卵に受精させた奴を母の中に入れさせないように実験前に王妃を守るために、自らの命と引き換えに召喚した神だ。
なんでそんな事細かに生まれたときの事を覚えているの?
何故って?これは父の最後の記憶だからだ。
もちろん王妃のもある。
後、皮肉な事に知識もな。
まぁ、日本語の習得までは二年かかったな。
・・・。
そんな目をするなよ。僕にはゼウス、君がいるじゃないか。
僕はそれだけで本当に幸せなんだよ。
だからそんな顔するな、な?
本人が一番辛いはずなのに、なんて心が強い人間なんだろうとバハムートは心の底からそう思えた。
そして、二人は何て言い関係なんだろうかとも・・・。
話してくれて、本当にありがとう。
私とマスターの事は、あなた達二人に直接私の記憶を見せるね。
そういえば、隊長の名前は?
実は名前はないんだ。
だから僕はファーストって呼ばれているんだ。
実験体ナンバー001、だからファースト。
じゃあ、私のマスターと一緒ね。
私のマスターも名前がないんだけど、村の大人達からこう呼ばれていたの。
実験体ナンバー000、ゼロって。
・・・えっ!
ウソだろ、でも僕の計画はあくまでついでの実験。本当の狙いは、完全体の神又は魔物を召喚することにあったって聞かされたことがあるが・・・。
じゃあ今から、記憶を見せてあげるわね。
名もなき主人公改め実験体ナンバー000、ゼロの過去とは一体全体どんな過去のだろうか。