突然ガラスの無くなった窓から入ってきた露草。
俺への視線を断ち切るようにアフラと俺の間に立った。
すると、先程までの笑みが嘘のように消えたアフラは、鋭い目で露草を睨み付ける。
丁寧だった口調も言葉を吐き捨てるようなものに変わってしまった。
突然ガラスの無くなった窓から入ってきた露草。
俺への視線を断ち切るようにアフラと俺の間に立った。
すると、先程までの笑みが嘘のように消えたアフラは、鋭い目で露草を睨み付ける。
丁寧だった口調も言葉を吐き捨てるようなものに変わってしまった。
邪魔なんてしーてなーいよぉっ!
うっせぇっ!!我の視界に立つな眼球腐り落ちたらどうすんだ汚物っ!!!
ひどぉーいっ!ひゃはははっ潤ちゃぁんアフラがいじめるぅーっ!
つ、露種っ
そんな風に言って抱きつかれるが、俺には何もできない。
露種はどうして此処に…。
潤壱に触れるなぁぁぁああぁっ!!!
っと、危ないなぁーっ!
…っ
アフラがそう叫んだ瞬間、露種がいたところに火がついた。
しかし露種は近くにいた俺と孝を抱えて軽くそれを避ける。
何もない所から、火が…?
潤ちゃんは少し離れててねぇんっ!ひゃはっ
…わかった。孝、行くぞ
とりあえず教室から出ようと孝の腕を掴む。
そこで、先程から孝がまったく口を開いていないことに気がついた。
孝…?
あぁ、ごめん。大丈夫
俯いていた顔が上がると、一瞬不思議に冷めた表情をしていた気がした。
それはたった一瞬の事で、今は不安そうな顔に変わっている。
見間違いだったのか…?
教室はだんだんとアフラによって炎に包まれていく。
漏れ出る熱気から逃げるように手を引いて教室から出た。
そこでもう一度見た孝の顔はやはり不安そうで、目が合うと誤魔化すように微笑んだ。
こんにちは、潤壱
…兄さん、弟
廊下の奥から向かってきていた兄さんと弟。
その姿にやっと安堵し落ち着くことができた。
大丈夫?怪我してない?
なんとか、大丈夫です
よかった、ちょっと行ってくるね
兄さんは笑顔を残し、弟と二人教室に入っていった。
アフラ…
スプーユにアンユ、お久しぶりですねぇ
その名前で呼ばないでよ
あぁ、そうでした。失礼。ひひひっ
わざとらしく歯を見せて笑うアフラに慣れた様子の兄さん。
おい、アフラ…
何ですかぁ?
あの事件、お前がやってんのか?
可愛らしい顔を歪ませた弟は首を傾げ静かに落ち着いた声音で言った。
なんの事件を言っているのかは聞かなくてもわかる。
ニュースで見た放火事件だろう。
あぁ、あの件ですか…
俺達は、アフラ以外であんなことができる奴を知らないから
もちろん、違いますよ
先程までの調子が嘘のように不機嫌な顔に変わったアフラが呟く。
詳細を言わずともどの事件だかわかったあたり彼も気にしていたのだろう。
まったく、迷惑なんですよねぇ。あれ。他のバグでしょう
そっか、違うならいいんだけど
ねぇーっ、俺の話終わってないんだけどーっ!!
黙れ、我の前で口を開くな
話の区切りをしっかり見てかただの偶然か、調度兄さん達との話が終わった所で露草が口を挟む。
アフラはその声が聞こえただけで不快だというように鋭い目で露草を睨んでいる。
嫌だ嫌だ嫌だーぁっ!!
うるせぇっ!!
うるさくなぁいーっ!!
机は燃やされ窓は割られ教室内は酷い有り様だった。
潤壱、後で直しておくから大丈夫
俺がな…
そう、弟に任せて
兄さん、弟…
流石にこんな教室をどう処理しようかと悩んでいると、二人が争い始めると同時に廊下に出てきていた兄さんと弟がそう言った。
おい、露草っ
何何何ーーぃっ!!?
弟の呼びかけに視線を向けず答える露草。
真剣に燃やそうとしてくるアフラを、露草はひょいひょいと余裕の表情で避けている。
そこ直すからもうやめろ
ぇーーーー…っ
潤壱に会うこともできましたし、我もそろそろ帰らせていただきます。御先に
それだけ言うと、アフラは礼をして燃えた窓から外へ消えていった。