リクト

ね、ねぇ……

二人の会話を聞いて、少しは事情がわかった。けど、またわからないことが増えてしまった。
 冷えた紅茶を一口飲み、口に出す前に考えを整理する。
 やっぱりわからない……。

リクト

ゲームの世界って、二人のいた世界じゃないの?

修平

……

優時

……

リクト

なんか、僕の質問を聞いた二人の目が点になっている気がする。
どうしたんだろ、変なこと言ったかな……?

修平

違う。ゲームの世界ってのは……。
何て説明したらいい?

優時

パソコンは、ある?

リクト

パソコンって……?

優時

うー……ん

結局わからなかった僕に、二人はパソコンとかコンピューターとか一日中色々な話を聞かせてくれた。
二人のいた世界はゲームの世界ではなくて、魔法が使えず科学的な技術が発達した世界らしい。
この世界には無いものが沢山あって、高度な魔法を使わなくても空が飛べる、それどころかそのずっと向こう、宇宙に行った人もいるなんて僕には想像もできないほど凄い。
行ってみたい、けど何故か二人は帰りたくないみたい……。

リクト

あっ、修平。おはよう

修平

……おはよ

二人が起きるまで店で昨日のテディベアの調子を見ていると、お昼前になって修平が起きてきた。
 照れくさそうに挨拶を返されたのは、何でだろ。

リクト

優時は?

修平

たぶんまだ寝てる

リクト

そっか……。もうお昼だし、起こしてくるね

椅子に座らせた修平の前にお茶を置き階段を上がる。
一歩一歩踏み込む度木でできた階段はキシキシと悲鳴をあげる。
二階にある部屋は御客様用の部屋と僕の部屋、あと物置の三つだ。
僕は御客様用の部屋の扉をノックした。

リクト

おはよう。もうお昼だよ?

声をかけて少し待っても返事はなくて、もう一度ノックしてみてもやっぱり反応が無い。
僕はゆっくり寝ていてもらっても良いけど、昨日優時が図書館に行きたいって言ってたしやっぱり起こした方がいいよね。

リクト

勝手に入るね

エル

あ……

リクト

え……?

まっすぐ視線の先、寝台で寝る優時の上に覆い被さるように跨がる長い髪の女性と目が合った。
誰……?優時の知り合い……?
 僅かな硬直の後どちらからともなく合ってしまった視線をそらす。
僕の困惑に気づきもせずスヤスヤと気分良く寝ている優時の服が少し乱れているのは、どういうこと……?

エル

ねぇ、そこの君

リクト

えっ、僕ですか……?

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