この国の隣国であるC国は爆発的な人口増加に歯止めをかける為、三十年前より『一人っ子政策』という人口抑制政策を行っている。
この制度により国民は夫婦一組に対し子供は一人しか持つことは出来ない。
そしてこの政策によりC国は四億人の人口抑制に成功した。
しかし、その一方でこの政策は多くの問題を抱えていた。
最大の問題点は、一人っ子政策に反して生まれた二人目以降の子供、国籍も戸籍も持たない子供達の出現である。
その背景には一人っ子政策における賞罰の明確性が挙げられる。
一人っ子の時には様々な恩恵が得られるのに対し、二人以上の子どもを持つと「両親ともに昇級・昇進の停止」、「学校への優先入学権の剥奪」、「各種手当ての停止」などの極めて大きな待遇の差が生じる。
こうした不利益を避けるために、二人目以降の子供の出生登録をしないという事態が起こっている。
特に、労働力を必要とする農村地域ではその傾向が強いと考えられている。
そうした子供達は戸籍が無いために何の社会保障も受けられず、学校に行くこともない。
当然真っ当な職につくこともできない。
その数千万人とも云われる戸籍の無い子供達。
それはこの世に存在を認められないこと、人間として認められないことを意味する。
このような闇の子供達を人々は黒核子(ヘイハイズ)と呼んだ。