ネズミ

シンデレラ~

シンデレラ

おう、親友。珍しいじゃねえか。何事だ?

 

 あれから数日。 

 親友が俺の下へやって来た。 

 普段なら夜の掃除を終えた頃にやって来るのだが、今日は違った。 

 継父たちが出かけてすぐにやって来たのだ。タイミングを見計らっていたのだろう。 

ネズミ

大変だよ!

シンデレラ

何が大変なんだ?

魔法使い

それは私が説明するわー

シンデレラ

うおうっ!?

ネズミ

うわっ!?

 

 突然現れた第三者に二人一緒に声を上げる。 

 そこにいたのはあの魔法使いだった。
 

魔法使い

あら、美味しそうな鼠ね

ネズミ

ひ、ひぃいいっ!?

シンデレラ

おい

 

 涎を垂らして親友を見る魔法使いを睨む。 

 こいつ、ちゃんと見張ってないと親友を食べそうで怖い。 

魔法使い

うふふ。冗談よー

シンデレラ

本当かよ……

魔法使い

そんな事より大変よ。王子様が男を探しているの

シンデレラ

男を? 誰だ?

魔法使い

ガラスの靴を履いた紳士ですってー!

シンデレラ

ガラスの……ん?

 

 それって、あの魔法の力で変身した時に履いた靴の事じゃねえか? 

 いや、そりゃないか。魔法は零時に解けたはずだし。




 けど、落したには落としたなあ。 

魔法使い

どういう訳か貴方が落としたガラスの靴を復元したみたいでね

シンデレラ

復元ー!?

魔法使い

そそ

シンデレラ

んな事、出来るのか?

魔法使い

出来ちゃったのよねー、これが

 

 まじかよ。  

 王子様すげえな。
 

ネズミ

それでねシンデレラ。その王子様がお城の方で靴に会う人を探してるんだって

シンデレラ

へえ……もしかして

魔法使い

ええ。あなたの継父とお兄さんたちも一緒に向かったわ

シンデレラ

ふーん

 

 靴なんてサイズが合えば誰でも履けるからなあ。 

 別人が見つかるんじゃね?
 

魔法使い

それは無いわ

シンデレラ

心読むなよ

魔法使い

あの靴は魔法の靴。決められた人しか履けない細工がされているの

シンデレラ

話聞けよってか、マジか

魔法使い

だからシンデレラしか履けない

シンデレラ

……ほう

ネズミ

シンデレラ

 

 親友が俺の服の裾を引っ張る。
 

ネズミ

オペレーション・シンデレラは、まだ終わってないんだよ

シンデレラ

……

  

 まさか、親友がそれを口にするとはなぁ。 

 何時も俺の話を聞いてくれていた親友。 

 作戦会議、なーんて子供染みたものにも付き合ってくれた大事な親友。 

 そんな親友から、その言葉を言われたんじゃあ…… 


 


 

 やるしかないだろ。
 

魔法使い

魔法の力で変身する?

シンデレラ

必要はねえ。俺しか履けないんだろ? それは魔法が解けていてもか?

魔法使い

ええ。理論上はそうなるわ

シンデレラ

なら、行くしかねえだろ

 

 
 相棒のモップを使って立ち上がる。 

 このみそぼらしい格好を見て、王子は失望するかもしれない。 

 けれど、王子にだけは俺の素を見て欲しいと思った。




 一目ぼれなのかもしれない。 

 あの人が好きだ。 

 だから、その気持ちを正直に伝える。 

 偽りの姿でぶつかれば成功する事だろう。 

 けど、それじゃあ意味が無いんだ。 

 俺が、俺としての、本当の姿で臨まなくちゃ。
 

シンデレラ

オペレーション・シンデレラ──再開だ

 

 止まってしまった時計の針が、動き出した。

13|時は再び動き出す

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