王子

ふふ

シンデレラ

楽しいな

王子

そうだね

シンデレラ

ずっとこんな時間が続けば良いのにな

王子

私も同じ事を考えていたよ

 

 っやばい。

 今凄くドキッとした。

 胸がときめく。こんなの初めてだ。

シンデレラ

王子……俺は──!

 勢いに任せて告白しようとしたところで、ある一点が目に入る。

 それは時計だ。

 見ると時間が、午後の十一時五十五分になっている。

 ……!

 やばい! 残り五分で魔法が解けちまう!

 そうすれば継父たちに俺の事がばれる……どころか、俺がどこの馬の骨とも分からない貧乏人だって事がばれちまう!

 それはそれで騒ぎになるし面白いと、今朝までの俺は思っていただろう。

 だけど! この王子様にだけはばれたくない!

シンデレラ

悪い、王子

王子

……え?

シンデレラ

時間だ

 丁度曲がクライマックスに差し掛かった頃、そっと手を放しその場を離れる。

王子

待ってくれ! シンっ──!

 王子が何か言っているが聞こえない。

 今は早く、城を抜け出さなければ。

 俺の背中を追う王子。

 くっそ! 途中で解けたら終わる!

 早く、早く外へ!

魔法使い

残り二十秒よ! 急いで!!

シンデレラ

おらあああ!!

 門へ向けて出口から伸びる階段を一気に駆け下りる!

シンデレラ

っ!

 途中靴を片方落としてしまうが、拾っている暇はない!

 どうせ魔法が解けたら消えるんだ! それより今は──!

王子

待ってくれ!

シンデレラ

っ!

 王子が追って来やがった!

 くっそ、その気持ちは凄く嬉しいのだが、今は逆に──!
 

魔法使い

残り十秒!

シンデレラ

おおおおおっ!

 階段を一気に跳んで門へ転がる。

 おかげで服がぼろぼろだが、どうせこれも魔法で消える!

 かぼちゃの馬車に駆け上がるように乗車する。

 そして、魔法の時間が終わった。

 こうしてオペレーション・シンデレラは終わりを迎えた。

pagetop