そうして遂に城の前へと辿り着く。
そうして遂に城の前へと辿り着く。
道中眠ってしまったせいで、辿り着いたのに気づけなかった。
つまり、完全に出遅れた。
もう! 何で寝てるのよ!
あのソファーが気持ち良すぎるのがいけないんだって!
残り時間あんまりないわよ!?
まだ一時間以上あるだろ? それだけありゃ十分! 必ず射止めてくる!
ほら、急いで!
おう!!
舞踏会は既に始まっている。
俺はこの中で、確実に王子を射止めて見せる!
そうして辿り着いた城内。
既にほとんどの人が手を取り合って踊っている。
中には継父たちの姿も。てか下手くそな踊りしてんなあ。
相手の女性もいらいらしてる感じがする。
ありゃ駄目だね。
さて、王子様はーっと……
……いた。
一人ぽつんと突っ立っている。
ワイングラスを片手に立つその姿はとても様になっている。
男装しているが、それでも分かる綺麗な姿。
こいつぁ予想以上に別嬪だな。
そんな王子様だが、どうやら先ほどから誘いを断りまくっているらしい。
突撃した貴族連中が機嫌悪くなりながらも別の女を漁っていた。
ありゃ王子が好きっていうより、王子と踊る事で一種のステータスを上げようとしている感じだな。
醜い事だ。
さーて、それじゃあこのイケメン王子様が美人様を誘いに行くとしますかねー。
とか考えていたら、その近くで踊っていた兄の姿が目に入った。
あっ。兄があまりに踊りが下手だったんで、相手の女性にぶたれてら。
その兄が馬鹿なのか阿保なのかどっちもだろうけど、王子様を誘いに行ってる。
すまないが他を当たってくれないか?
くっ!
兄が奥歯噛み締めながら別の女を誘いに行った。
ざまあ!
あっ
ん?
目が合った。
王子様は段々と俺の所へやって来る。
一緒に踊って頂けないか?
……へ?
油断していた。
まさかそっちから誘いに来るとは思っていなかった!
王子様が俺を誘いに来た事で辺りが騒然となる。
そりゃそうだろう。今の今まで断り続けていた王子様が男を誘ったんだぜ?
あの王子がお手を?
あの男は誰だ?
どこの家の者だ! 調べろ!!
調べられても何も出ないけどな!
王子はそんな周りの声など気にせずに、俺の手を取った。
や、柔らけえ……
ダンスは出来るか?
あ、ああ。相棒と何時も踊っているからな
……そうか
相棒ってのは勿論モップさんの事だぜ。
では、始めようか
おう。宜しくお願いするぜ
……あ。
王子様射止めるとか言ってたのに、つい何時もの感じで話しちまった。
口説くタイミングが分からん……が、まあ良いだろう。
予定とは少し違ったが、周りを驚かせる事に成功したんだから。
俺が王子と踊り始めるのに合わせるように曲目が変わった。
その曲に合わせて踊る俺たちの姿を見た女性陣が感嘆の声を漏らす。
素敵だわ
まるでおとぎ話のよう
王子×謎の男。最高だわあ!
最後何か良く分からん言葉が聞こえたが、好評なようで何より。
不思議な事に王子とのダンスは時間を忘れ去れるくらい楽しかった。