うん。美味い。
じゃあ遠慮なくいただきまーっす
うん。美味い。
親友が持ってくる飯は毎回美味いなあ。
普段真面に食事すら与えられていない俺はこうして親友からの贈り物で一日を凌いでいる。
家で出されても絶対食わねえけどな! 毒入ってるかもしれねえし。
継父や兄たちは俺がその辺の草食ってると思っている。内心早く死ねと思っているに違いねえ。
だけど、ただでのたれ死ぬ気はねえし、そもそも死ぬ気何てねえよ。
俺はやがて世界を取る男だぜ? こんなところでくたばってたまるかってんだ。
ありがとよ。親友
えへへ
頭を撫でてやると嬉しそうに顔をほころばせた。
ほんと、親友は良い奴だよなあ。
そろそろこいつの名前も考えてやりたいけれど、俺ってばセンスねえからなあ。
鼠だったこいつには勿論名前が無い。野良だしな。買うとしたらハムだろうし。
こいつにパンとかを分けている人物も名前は付けておらずネズミ君と呼んでいるらしいから、もし名前で呼ぶとしたらネズミになるのかね。
鼠が変身するのも不思議だが、それで服とか着けているのも謎すぎる。
魔法か。マジックなのか。鼠すげえな。
シンデレラ。その怪我、大丈夫?
ん? ああ、これか
酷い傷……待っててね。今薬草を塗ってあげるから
おう。すまねえなあ
親友が俺の傷を見て心配してくれる。
酒に混ぜる薬草を持って来てくれる事からも分かるように、こいつは薬草に関する知識が豊富だ。
これも森で暮らしているからなのか、俺が効能を指定して頼めば、大体それを持って来てくれる。
ほんと、こいつには感謝しても足りないくらいだ。
っつぅっ
染みるけど我慢してね
染みて痛いけど我慢だ。
傷に塗ったぐってんだから痛いのは当たり前。その分効果が出る。
こうやって心配して貰ったり薬塗って貰っていると、こいつ俺のお袋なんじゃねえかって思えてくる。
本当のお袋は俺に対し無頓着だからなあ。
継父ラブで俺の事など眼中にねえ。
今どっか旅行中だからそれもほんとか謎なところだけどさ。
俺のこの名前だって、お姫様に憧れていたお袋がどっかの逸話から持って来たお姫様の名前らしいし。
そのシンデレラってどんな奴だったんだ? って昔聞いた事があるが、お姫様って事は分かるけど良く知らない、だそうだ。
まじシンデレラ何者だよ。
てか女の名前俺に付けんなよ。
別に、この名前嫌いではないけどよ。
はい。終わりっ
ありがとよ!
お礼とばかりに頭を撫でてやる。
どうやらこいつ、撫でられるのが好きらしい。
小動物みたいな奴だな。
実際鼠だから小動物か。
それじゃあ始めるか