中庭

お、俺は、俺は……

どうしたユーヤ。

…じじい!

ふむ、その様子だとお前は真実を知ったのだな。

どれ話してみよ。
聞き手くらいにはなってやるぞい。

…俺は魔の王が憎かったわけではないんだ。
確かに両親は殺されたが
俺は小さかったし、あんたがすぐ引き取ってくれた。

俺は思ったんだ。
もし他の奴が両親を殺されたらって。
そいつは孤児になってしまう。
孤児がつらいのは知っていた。

だから戦えるようになったら人々を守ろうとおもった。
がらでもないが俺は人々の営みを愛していた。
人々の平和を望んだ。
だから魔の王を倒そうと誓った。

そして実行した。

彼女は無抵抗だった。
死んだふりだと思いなんども死体を刺した。
悪逆の魔の王を倒すためだ、とな。

……事実はどうだ。
平和を願う者だったんだ。
彼女は俺と同じだった。

いや、厳密には違うな。
俺は平和のために考えなかった者。
彼女は平和のために考え尽くした者。

彼女は俺よりもずっと人を愛し、平和を願い、裏切られてもなお人を愛した。
そして愛した人々を己で殺した彼女の苦痛は救われない。

後悔しておるのか?

ああ、せめて殺す前に真実が知りたかった。

知っておったら彼女を殺せたか?

………………

お主を選んでよかった。

真実を知り、彼女の死を悲しんでくれる。
そんなお主でな。

今は彼女のためにたくさん悲しんではくれぬか。

自分の命を投げ出したあの大馬鹿者のために。

「お前が死んだために悲しむ人間がおるぞ」

とな

う…うっ

うわあああああああああああん

俺は初めて人のために泣いた。

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