魔の王討伐より一週間が経った。

連邦国家盟主様。
この者が魔の王を打ち取った勇者でございます。

そなたが勇者ユーヤか?

はい。

そうか。

おい。

は。

護衛を下げろ。

御意に。

さあ、これで人払いはすんだ。

久しぶりじゃないか!
プリーテス!

ええ、あなたもうまくやってくれたみたいね。

ああ、あのお方のおかげさ。

…お二人はお知り合いだったのですか?

そうだね。

昔からのね。

なにはともあれ”100年の約束”は果たされた。

我らもお役御免といったところだ。

後継者育てるのって難しいんだよね。

あの!!

魔の王とは何者だったんですか?

………………

ほぉ、なぜそれを私に聞く?

プリーテスは魔の王についてなにか知っている。けれどなにも答えてくれない。

あなたは昔からの友人。
あなたも何か知っているんでしょう?

ああ、知っているとも。
だが答える気はないね。

あの時、魔の王にとどめを刺した時、

心のどこかに違和感が残った。
あの時はなんとも思いはしなかった。

しかし、今となってはわかる!!
これは”後悔”だ!!

自分でもわからない後悔が心に広がり悲しみに変わっていった。

………………

教えてくれ!
魔の王の正体はなんだ!!

女神ジャンヌ

人を作り、人を最も愛した神よ。

プリーテス……

め…女神ジャンヌ…?

彼女は三人の神官とともに姿を消したって…

私とプリーテスそしてお前のじじいが
その三人の神官だ。

私たちはもう300年は生きている。

けれど、ジャンヌが死んだことで私たちももうすぐ死ぬわ。

あなたが真実を求めた以上、話さないわけにはいかないわ。

当時、
いえもっと前から

人間同士での争いが絶えなかった。

もう…嫌なの………人同士で争わないで…
お願い……だから……

彼女の声は届かなかったわ。

神と人間の距離が近すぎたの。

そして彼女は日々苦しんでいたわ。


終わらない争い、断ち切れない憎しみ。


人々を愛していた彼女とっては
身が裂かれる思いだったわ。


毎日どうにかできないか彼女は考えた。


そして彼女は思い立った。

私が人々の敵になろう。

人同士が手を取り合うまで私が人間の敵になろう。

世界が私という敵討つために団結したときに
私は英雄に殺されるの。
そうすれば敵は誰もいないの。

私を殺すのは
きっと素敵な勇者様にちがいないわ。

勿論私たち神官は反対したわ。

しかし彼女の意志は固かった。

だからせめて私たちは協力することにしたわ。



……どこにいるのかしらね。
自分の主を殺す手伝いをする下部が。

けれど彼女はこう言ったわ。

ありがとう

そして彼女は魔の王になった。


いくつもの国を滅ぼしたわ。


彼女は愛した人々を殺したの。


こっちが見ていられないくらいだったわ。


そして国々は同盟を組み魔の王に対抗したわ。


神官たちも役割果たすため人間の中に溶け込んだ。


一人目は
同盟国を完全に一つの国にまとめ上げること。


二人目は
魔の王を討伐する英雄を見つけ育てること。


三人目は
国の完成と魔の王討伐を見届けること。


期限は100年
それがジャンヌの力の限界だった。


そしてすべてがうまくいき


今に至るというわけ。

これが真実よ。
いえ、とってつけた偽物でなければいけない話。

きっとあなたの後悔は心のどこかで
ジャンヌだと気づいていたんじゃないかしら。

彼なら中庭のほうへ走っていってしまったよ。

……そう……

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