私たちは山小屋を出た。

 そこはひどく見晴らしが良かった。

CIAの工作員

リフトで反対側に下りると果樹園ね

MI6の諜報員

果樹園に身を潜めるというのも選択肢のひとつだが

KGBの職員

こっちの斜面を下ると市街地に出る

斜面を下るって……

CIAの工作員

雪上車で下るのよ

 お姉さんは、市街地を眺めながらそう言った。

CIAの工作員

見て。車がまったく走ってないわ

KGBの職員

ああ。それと、あそこに見えるのはきっと人の群れ……大量の痴女じゃない?

あそこって、まさか

MI6の諜報員

自衛隊駐屯地だ

そんなぁ

CIAの工作員

おそらく、みんなもヘリで逃げようとして、駐屯地に集まったのね。で、誰かが痴女になってしまった

MI6の諜報員

その痴女を端緒として、連鎖爆発的に広がった

KGBの職員

そして自衛隊駐屯地は、痴女の巣窟になった

………………

 私たちは言葉を失った。

MI6の諜報員

で、どうする?

CIAの工作員

……どの道、痴女は始末しなければならないわ

KGBの職員

!? ヤツらの巣を叩くの?

CIAの工作員

ええ

MI6の諜報員

おもしろい

KGBの職員

ふふっ、これ以上増えないうちにやりましょう

CIAの工作員

ふたりとも、ありがとう

 CIAのお姉さんは、噛みしめるようにうなずいた。

 それから私たちを見ながら、やさしくこう言った。

CIAの工作員

ねえ、みんな。私たちはこれから自衛隊駐屯地に突入する。痴女を倒しながら突き進み、可能性は低いのだけれども、ヘリか輸送機を手に入れる。そして、痴女の掃討が一段落したらその機で脱出するつもり

はっ、はい

CIAの工作員

でね、ここまで連れてきておいて、こんなことを言うのは無責任だと思うのだけれども――。あなたたちには、これからのことを自分たちで決めて欲しいの

それは?

CIAの工作員

あなたたちの選択肢は2つ。1つは、果樹園に身を潜めること

もう1つは?

CIAの工作員

雪上車に乗って、私たちと駐屯地に突入する

…………

…………

…………

CIAの工作員

ごめんね。急かすつもりはないんだけど、あまり時間がないの

はい

 私たちは、ぺこりと頭を下げた。

 それからお互いの顔を見合わせた。

………………

…………

……

うん

いいよ

それしかないよね

CIAの工作員

決まった?

はい

 私たちは、大きくうなずいた。

 いっせいにダッシュして、雪上車に飛び乗った。

 

ROUND3
サーフィン・ウィズ・
ザ・チジョ

 私たちを乗せた雪上車は、山の斜面を滑走した。

CIAの工作員

このまま駐屯地まで突っ走るわよッ!

突っ走るというか、滑り落ちてるというか……

あっ、痴女だ!?

痴女がスノボで滑ってる!?

KGBの職員

気をつけて!!

危ない!

CIAの工作員

ふう、すべて追い越したわよ

!?

なにか後ろからくる!!

もう、なんで追いつくのぉ!?

MI6の諜報員

ローションでぬるぬるだからだ!

そんなあ……

あはぁん

MI6の諜報員

横に並ばれたっ

KGBの職員

気をつけて!

寒くないのかな?

いつきがそれ言う?

なによお

だって、はいてないじゃん

あはは

もう!

KGBの職員

こらっ、ふざけないの!

MI6の諜報員

危ない! 寄せてきたぞ!!

うふぅん

CIAの工作員

………………

CIAの工作員

とっとと逝きな、ベイビー

きゃあぁぁあああ――――!!!!!

えっ、えぇ――!?

いきなり撃っちゃうの!?

そんなあ。……だったら、初めからそうすればよかったのに

 そんなことなら私、痴女の演技をしたり、服を脱がされたりする必要なかったよね。

 そう思って、お姉さんを見た。


 するとお姉さんは、バチッとウインクを決めた。

 アクセルを思いっきり踏んで、それからこう言った。

CIAの工作員

だって、銃声で痴女が集まっちゃうでしょう。……たぶん

 というわけで、私たちを乗せた雪上車は、市街地に下りるとそのまま疾駆し、痴女を蹴散らしながらも駐屯地に直行するのだった。――

銀嶺の痴女『スライドイットイン』

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