CIAの工作員

裏口から出よう。いったん町から離れるわよ

倉庫の裏って……

MI6の諜報員

スキー場のような斜面だ。リフトがある

ああ、そっか。ここは果物倉庫だよ

山の向こうから果物を載せてくるんだよお

KGBの職員

それなら問題なさそうだ。痴女がいても突っ切るわよっ

うっ、うん

 私たちは雪積もる斜面を進んだ。――

ROUND2
音速の痴女『ジョイライド』

CIAの工作員

静かすぎるわ。念のため、痴女の演技で進みましょう

またあ?

MI6の諜報員

ほら、文句言わない

 MI6のお姉さんはそう言って、お尻をぺろんと撫でた。

きゃっ

CIAの工作員

あら、いい感じじゃない。そんな感じで腰をくねらせて歩けばOKよ!

OKよって……ちょっと楽しんでませんかあ?

CIAの工作員

ええ、楽しんでるわよっ

 CIAのお姉さんは開き直ってそう言った。

 それからイタズラな笑みで、私たちのスカートをめくりはじめた。

 ほかのお姉さんも参加した。

ちょっとお?

CIAの工作員

ふふっ

やだっ

MI6の諜報員

ほんとにぃ?

もう止めてくださあいぃ

KGBの職員

あっ

 いつきの真っ白なお尻が、あらわになった。

 お姉さんは、いつきのスカートをめくったままで固まった。

KGBの職員

ごめんっ。はいてなかったんだ

もう、はやく離してくださいよお。おもらししたから脱いだんですう

 いつきが羞恥に身もだえそう言うと。

 お姉さんは、母性に満ちた笑みをした。

KGBの職員

ハラショー。あなたはもう立派な痴女ね

MI6の諜報員

うむ。教えることはなにもない

CIAの工作員

あなたたちも、この子を見習いなさいっ

ちょっとお!?

あはは

ふふふ

もう!

 いつきは、ほっぺたを桜色に染めて、ひとりリフトに向かった。

 たまに風がスカートをめくって、いつきはそれを懸命におさえつけたけど、それでもスカートの奥に、きゅっと、ひきつけるように動いたお尻が見えた。

 私はこのときほど淫猥な後ろ姿を見たことがない。

痴女だ……

 と、ぼそりとつぶやいたら。

もう可哀想だよ

 って、小夜に怒られた。

MI6の諜報員

急ごう

うっ、うん

 私たちは、小走りでリフトに向かった。

 遠くに痴女が何人かいたけれど、でも、私たちを追ってはこなかった。

 たぶん、仲間だと思われたのだと思う。……。

 リフトは、8人くらい乗れる大きなものだった。

 屋根はなかったけれど、これはもうリフトというより、ゴンドラに近かった。

 それが山の頂上まで伸びていた。

CIAの工作員

動いた

MI6の諜報員

動力は、まだ生きてるようだな

KGBの職員

山頂まで、ひと息付けるわね

 私たちは、いっせいに安堵のため息をついた。

KGBの職員

ちょっと暖まるか

 KGBのお姉さんは、小ビンを取り出した。

 ちびちびとお酒を飲みはじめた。

CIAの工作員

乱れちゃったわ

 CIAのお姉さんは、手鏡を取り出した。

 一生懸命、お化粧を直しはじめた。

 そして、MI6のお姉さんは――。

MI6の諜報員

あはは、かわいいねえ

 ものすごくスケベな笑みで、私たちをさわりはじめた。

ちょっと止めてください

MI6の諜報員

いいじゃん、減るもんじゃないし

セッ、セクハラです

MI6の諜報員

そんなこと言っちゃって、ほんとは気持ちいいクセに

なっ、なんだかオヤジ臭いですぅ

MI6の諜報員

口ではそうは言っても、体は悦んでるぞお

 私たちは足をばたつかせた。

 お姉さんのしつこくてオヤジ臭いなでなでから逃れようとした。

 すると、KGBのお姉さんがからかうように言った。

KGBの職員

まったく、MI6のスパイは女好きばかりね

MI6の諜報員

えっ、うん。そういうお国柄だよ

KGBの職員

あっ、開き直った

MI6の諜報員

だって有名なスパイがそういうキャラだからね。そういうイメージでいくしかない

CIAの工作員

ねえねえ、ジェームズ・ボンドってほんとにいるの?

MI6の諜報員

いるよ

CIAの工作員

うそっ、どんな人!?

MI6の諜報員

年取ったショーン・コネリーに似てる

CIAの工作員

やだ、かっこいい

MI6の諜報員

髪型がね

CIAの工作員

…………

 CIAのお姉さんは、がっくりうなだれた。

 MI6のお姉さんは、イタズラな笑みをした。

 KGBのお姉さんが訊いた。

KGBの職員

じゃあ、面白アイテムとか持ってるの?

MI6の諜報員

うん、支給されてるよ

KGBの職員

たとえば?

MI6の諜報員

この腕時計は、ベゼルを回転させると振動する。手のひらや指先がまるでマッサージ器のように微振動するんだ

KGBの職員

……どんなことに使うのよ?

 KGBのお姉さんは笑った。

 するとMI6のお姉さんは、ベゼルを回転させた。

 それから、私の耳たぶをさわった。

あっ

MI6の諜報員

ぶーんって微細に振動してるだろ?

うっ、うん

MI6の諜報員

突然だけど質問。耳たぶからまっすぐ下に移動すると何がある?

えっ?

MI6の諜報員

確かめてみようか

 お姉さんはそう言って、すうぅっと指を下に動かした。

もう!

 私は、くやしくって思わずにらみつけた。

 するとお姉さんは、ドヤ! って感じの笑みをした。
 と、そのときだった。

MI6の諜報員

あっ、リフトが止まった

KGBの職員

どうしよう?

CIAの工作員

まかせてっ

 CIAのお姉さんは、機械を殴ってそう言った。

 リフトはまた動き出した。

CIAの工作員

この手に限るわ

MI6の諜報員

キミは女子力高そうに見えて、そういうとこはアメリカ人なんだね

KGBの職員

ほんとそう

 お姉さんたちは、あきれたのか感心したのかよく分からないため息をついた。

 CIAのお姉さんは、くすくす笑いながら前髪をいじっていた。

 しばらくするとリフトは山頂に到着した。

 私たちは、すぐそばにある山小屋に入った。

MI6の諜報員

ん? 男だ。男が倒れてるぞ

KGBの職員

しかも、たくさんよ。たくさんの男の死体よ

MI6の諜報員

女体化せずに死んでるぞ?

KGBの職員

ほんとだ。というより、みんな下半身裸ね

CIAの工作員

………………

あっ! あの人、生きてる!?

 私たちは、あおむけになった男性のもとにかけつけた。

 男性は、あごを上げ、息絶え絶えにこう言った。

はっ、はやく逃げるんだ……

MI6の諜報員

おい、しっかりしろ!

ヤツは普通の痴女じゃない。あの腰使いは……

 男性は息を引き取った。

 CIAのお姉さんが陰鬱な顔で言った。

CIAの工作員

これは、音速の痴女『ジョイライド』の仕業よ

MI6の諜報員

ジョイライド?

CIAの工作員

ジョイライドは、男ばかりを襲う痴女。しかも、くちびるをいっさい使わないから襲われた男は女体化しない。ジョイライドは、ただ馬乗りになって、まるでヘビのように男をしめつけ、しぼり殺すのよ

KGBの職員

これだけの男が、その痴女1人にやられたのか!?

MI6の諜報員

うらやましい

KGBの職員

こらっ

あっ、あの。その痴女って、男性にしか興味がないんですよね? だったら大丈夫なんじゃあ……

CIAの工作員

そうね。ただ、それでも早く出たほうがいいわ

MI6の諜報員

念のため、痴女の演技をするんだ

うっ、うん

ええっと

もう、またやるのぉ?

MI6の諜報員

おい! なにか気配がするぞ!!

KGBの職員

近いわよ!!

あはぁん

CIAの工作員

出た!
痴女のポーズでやりすごすのよッ!!

CIAの工作員

さあ早く! こっちを視てるわよっ

うふうん

いやあん

らめえ

………………

KGBの職員

男がいないか物色してる。気をつけて

ああん

あんっ

んぅ。うふうぅん

ああぁんっ

って、ちょっと!?

MI6の諜報員

マズイ。男だと思って襲ってくるぞ

もう、なんでえ?

CIAの工作員

胸だっ! 胸を視て男だと思ったんだっ!!

ぷっ

あはは

ちょっと笑わないでよー!

 私は叫びながらも後ずさりした。

 いっしんに逃げた。

 くやしさと情けなさでなんだか涙が出てきた。

CIAの工作員

危ない!

MI6の諜報員

やばい!

KGBの職員

間に合わない!

だっこしてーっ!

いやあぁっ!

 私は乱暴に服を脱がされた。

ぷるんっ

………………

………………

CIAの工作員

ジョイライドの動きが止まった!?

MI6の諜報員

胸だ! 胸が意外とあるからだ

KGBの職員

なるほど着やせするタイプだったのね

CIAの工作員

今度はこっちに来るぞ

えぇ!?

KGBの職員

胸を寄せて上げなさい。そうやって女性らしさをアピールするのよ

こっ、こうかな……

CIAの工作員

……中学生のクセに結構あるのね

わっ、わたしだって

 などと、みんながあわてていると。

 ジョイライドは、MI6のお姉さんの前でピタリと止まった。

MI6の諜報員

………………

むふぅん

 ジョイライドは、吐息を吹きかけるようにお姉さんの顔を見た。

はあん

 それから視線を下に落とした。

 ツバを呑みこんだ。

 やがてジョイライドは顔をあげた。

うふぅん

 まるでサカリのついたネコのようだった。

MI6の諜報員

ちくしょう!

 お姉さんは飛び退いた。

 ジョイライドが恍惚の笑みで迫る。

CIAの工作員

胸よ! 胸を視て男と思ったのよ!!

MI6の諜報員

分かってるわ、そんなことッ!

KGBの職員

ちゃんと寄せて上げないから!

MI6の諜報員

上げてたんだよッ!

 MI6のお姉さんは逃げながら、器用に叫んだ。


 しかしジョイライドは速かった。

 あっという間に、お姉さんを組み伏せた。

 馬乗りになって上着を脱ぎすてた。

 お姉さんを見下ろして、それから舌なめずりをした。

 もう腰が動いている。


 お姉さんは、思いっきり不快な顔をした。

MI6の諜報員

キミは失敬だなっ

 お姉さんは叩きつけるようにそう言って。

 それからジョイライドの下着に手を突っこんだ。

あっ、ああっ、あああぁあぁっ、おおぉぉおおお――――!!!!!

 ジョイライドは快美におぼれ、あえぎ、ときには半狂乱となり、そして失神した。


 お姉さんは笑った。

 それは、ひどく征服感を満たされたものだった。

MI6の諜報員

ウオッカ・マティーニが飲みたいな。ステア(かき混ぜる)のではなくシェイクでね

 お姉さんはそう言って、器用に指を動かした。

 明らかにエッチな意味で言っていた。

音速の痴女『ジョイライド』

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