私たちは雪積もる斜面を進んだ。――
裏口から出よう。いったん町から離れるわよ
倉庫の裏って……
スキー場のような斜面だ。リフトがある
ああ、そっか。ここは果物倉庫だよ
山の向こうから果物を載せてくるんだよお
それなら問題なさそうだ。痴女がいても突っ切るわよっ
うっ、うん
私たちは雪積もる斜面を進んだ。――
ROUND2
音速の痴女『ジョイライド』
静かすぎるわ。念のため、痴女の演技で進みましょう
またあ?
ほら、文句言わない
MI6のお姉さんはそう言って、お尻をぺろんと撫でた。
きゃっ
あら、いい感じじゃない。そんな感じで腰をくねらせて歩けばOKよ!
OKよって……ちょっと楽しんでませんかあ?
ええ、楽しんでるわよっ
CIAのお姉さんは開き直ってそう言った。
それからイタズラな笑みで、私たちのスカートをめくりはじめた。
ほかのお姉さんも参加した。
ちょっとお?
ふふっ
やだっ
ほんとにぃ?
もう止めてくださあいぃ
あっ
いつきの真っ白なお尻が、あらわになった。
お姉さんは、いつきのスカートをめくったままで固まった。
ごめんっ。はいてなかったんだ
もう、はやく離してくださいよお。おもらししたから脱いだんですう
いつきが羞恥に身もだえそう言うと。
お姉さんは、母性に満ちた笑みをした。
ハラショー。あなたはもう立派な痴女ね
うむ。教えることはなにもない
あなたたちも、この子を見習いなさいっ
ちょっとお!?
あはは
ふふふ
もう!
いつきは、ほっぺたを桜色に染めて、ひとりリフトに向かった。
たまに風がスカートをめくって、いつきはそれを懸命におさえつけたけど、それでもスカートの奥に、きゅっと、ひきつけるように動いたお尻が見えた。
私はこのときほど淫猥な後ろ姿を見たことがない。
痴女だ……
と、ぼそりとつぶやいたら。
もう可哀想だよ
って、小夜に怒られた。
急ごう
うっ、うん
私たちは、小走りでリフトに向かった。
遠くに痴女が何人かいたけれど、でも、私たちを追ってはこなかった。
たぶん、仲間だと思われたのだと思う。……。
※
リフトは、8人くらい乗れる大きなものだった。
屋根はなかったけれど、これはもうリフトというより、ゴンドラに近かった。
それが山の頂上まで伸びていた。
動いた
動力は、まだ生きてるようだな
山頂まで、ひと息付けるわね
私たちは、いっせいに安堵のため息をついた。
ちょっと暖まるか
KGBのお姉さんは、小ビンを取り出した。
ちびちびとお酒を飲みはじめた。
乱れちゃったわ
CIAのお姉さんは、手鏡を取り出した。
一生懸命、お化粧を直しはじめた。
そして、MI6のお姉さんは――。
あはは、かわいいねえ
ものすごくスケベな笑みで、私たちをさわりはじめた。
ちょっと止めてください
いいじゃん、減るもんじゃないし
セッ、セクハラです
そんなこと言っちゃって、ほんとは気持ちいいクセに
なっ、なんだかオヤジ臭いですぅ
口ではそうは言っても、体は悦んでるぞお
私たちは足をばたつかせた。
お姉さんのしつこくてオヤジ臭いなでなでから逃れようとした。
すると、KGBのお姉さんがからかうように言った。
まったく、MI6のスパイは女好きばかりね
えっ、うん。そういうお国柄だよ
あっ、開き直った
だって有名なスパイがそういうキャラだからね。そういうイメージでいくしかない
ねえねえ、ジェームズ・ボンドってほんとにいるの?
いるよ
うそっ、どんな人!?
年取ったショーン・コネリーに似てる
やだ、かっこいい
髪型がね
…………
CIAのお姉さんは、がっくりうなだれた。
MI6のお姉さんは、イタズラな笑みをした。
KGBのお姉さんが訊いた。
じゃあ、面白アイテムとか持ってるの?
うん、支給されてるよ
たとえば?
この腕時計は、ベゼルを回転させると振動する。手のひらや指先がまるでマッサージ器のように微振動するんだ
……どんなことに使うのよ?
KGBのお姉さんは笑った。
するとMI6のお姉さんは、ベゼルを回転させた。
それから、私の耳たぶをさわった。
あっ
ぶーんって微細に振動してるだろ?
うっ、うん
突然だけど質問。耳たぶからまっすぐ下に移動すると何がある?
えっ?
確かめてみようか
お姉さんはそう言って、すうぅっと指を下に動かした。
もう!
私は、くやしくって思わずにらみつけた。
するとお姉さんは、ドヤ! って感じの笑みをした。
と、そのときだった。
あっ、リフトが止まった
どうしよう?
まかせてっ
CIAのお姉さんは、機械を殴ってそう言った。
リフトはまた動き出した。
この手に限るわ
キミは女子力高そうに見えて、そういうとこはアメリカ人なんだね
ほんとそう
お姉さんたちは、あきれたのか感心したのかよく分からないため息をついた。
CIAのお姉さんは、くすくす笑いながら前髪をいじっていた。
※
しばらくするとリフトは山頂に到着した。
私たちは、すぐそばにある山小屋に入った。
ん? 男だ。男が倒れてるぞ
しかも、たくさんよ。たくさんの男の死体よ
女体化せずに死んでるぞ?
ほんとだ。というより、みんな下半身裸ね
………………
あっ! あの人、生きてる!?
私たちは、あおむけになった男性のもとにかけつけた。
男性は、あごを上げ、息絶え絶えにこう言った。
はっ、はやく逃げるんだ……
おい、しっかりしろ!
ヤツは普通の痴女じゃない。あの腰使いは……
男性は息を引き取った。
CIAのお姉さんが陰鬱な顔で言った。
これは、音速の痴女『ジョイライド』の仕業よ
ジョイライド?
ジョイライドは、男ばかりを襲う痴女。しかも、くちびるをいっさい使わないから襲われた男は女体化しない。ジョイライドは、ただ馬乗りになって、まるでヘビのように男をしめつけ、しぼり殺すのよ
これだけの男が、その痴女1人にやられたのか!?
うらやましい
こらっ
あっ、あの。その痴女って、男性にしか興味がないんですよね? だったら大丈夫なんじゃあ……
そうね。ただ、それでも早く出たほうがいいわ
念のため、痴女の演技をするんだ
うっ、うん
ええっと
もう、またやるのぉ?
おい! なにか気配がするぞ!!
近いわよ!!
あはぁん
出た!
痴女のポーズでやりすごすのよッ!!
さあ早く! こっちを視てるわよっ
うふうん
いやあん
らめえ
………………
男がいないか物色してる。気をつけて
ああん
あんっ
んぅ。うふうぅん
ああぁんっ
って、ちょっと!?
マズイ。男だと思って襲ってくるぞ
もう、なんでえ?
胸だっ! 胸を視て男だと思ったんだっ!!
ぷっ
あはは
ちょっと笑わないでよー!
私は叫びながらも後ずさりした。
いっしんに逃げた。
くやしさと情けなさでなんだか涙が出てきた。
危ない!
やばい!
間に合わない!
だっこしてーっ!
いやあぁっ!
私は乱暴に服を脱がされた。
ぷるんっ
………………
………………
ジョイライドの動きが止まった!?
胸だ! 胸が意外とあるからだ
なるほど着やせするタイプだったのね
今度はこっちに来るぞ
えぇ!?
胸を寄せて上げなさい。そうやって女性らしさをアピールするのよ
こっ、こうかな……
……中学生のクセに結構あるのね
わっ、わたしだって
などと、みんながあわてていると。
ジョイライドは、MI6のお姉さんの前でピタリと止まった。
………………
むふぅん
ジョイライドは、吐息を吹きかけるようにお姉さんの顔を見た。
はあん
それから視線を下に落とした。
ツバを呑みこんだ。
やがてジョイライドは顔をあげた。
うふぅん
まるでサカリのついたネコのようだった。
ちくしょう!
お姉さんは飛び退いた。
ジョイライドが恍惚の笑みで迫る。
胸よ! 胸を視て男と思ったのよ!!
分かってるわ、そんなことッ!
ちゃんと寄せて上げないから!
上げてたんだよッ!
MI6のお姉さんは逃げながら、器用に叫んだ。
しかしジョイライドは速かった。
あっという間に、お姉さんを組み伏せた。
馬乗りになって上着を脱ぎすてた。
お姉さんを見下ろして、それから舌なめずりをした。
もう腰が動いている。
お姉さんは、思いっきり不快な顔をした。
キミは失敬だなっ
お姉さんは叩きつけるようにそう言って。
それからジョイライドの下着に手を突っこんだ。
あっ、ああっ、あああぁあぁっ、おおぉぉおおお――――!!!!!
ジョイライドは快美におぼれ、あえぎ、ときには半狂乱となり、そして失神した。
お姉さんは笑った。
それは、ひどく征服感を満たされたものだった。
ウオッカ・マティーニが飲みたいな。ステア(かき混ぜる)のではなくシェイクでね
お姉さんはそう言って、器用に指を動かした。
明らかにエッチな意味で言っていた。