俺はどう見てもリア充だ

第一話「リア充とは」









幸重 仁太郎

俺はどう見てもリア充だ

 12月。期末試験を終え、冬休み目前の浮かれた教室の中で、俺は親友二人にそう言い切った。

東島 恵

出たよ、仁太郎のリア充宣言

古平 壮一

また始まったんだ……面倒

幸重 仁太郎

お? それはつまり俺がリア充だということを認めるということか?

東島 恵

どうしたらそーなるんだよ。俺たち三人がクラスでなんて言われてるか知ってるだろ?

古平 壮一

非リア充代表3バカ……一緒にされる身にもなって欲しいんだけど


 そう、俺こと幸重仁太郎(ゆきしげ じんたろう)は、何故か非リア充だと周りから思われているのだ。

幸重 仁太郎

解せないな。それになんで3バカなどと言われてるんだ

東島 恵

お前がリア充宣言するからだろ!

古平 壮一

変に目立ってるからそう言われるんだよ……僕たちまで

幸重 仁太郎

むぅ……


 二人の親友に睨まれるが、俺は当然のことを言っているだけなのでやはり解せなかった。

東島 恵

ちょっとは自覚して欲しいぜ。おかげで俺たちに声をかける女子はいないんだぜ

 東島恵(ひがしじま けい)。
 目つきが悪い彼とは付き合いが長く、小学校からの幼馴染みだ。

 その目つき故なかなか親しい友人ができず、昔はいつも二人で遊んでいた。

 もう一度言うが彼は目つきがすこぶる悪い。女子はみんな恐がってしまい、彼に声をかけられないのだ。
 よって彼は女子との接点が極端に少なく、会話をすると驚くほどテンパる。ぶつかったりしたら挙動不審になる。おそらく手を触れたら卒倒するだろう。

 つまり、カッコつけてはいるが、実際に女子に声を掛けられたら一番困ったことになるのは恵なのだ。

古平 壮一

別に僕は女子に声をかけられなくてもいいけどね……

 古平壮一(こひら そういち)。
 彼は中学一年の時に同じクラスになり、恵と二人だった俺たちの輪に加わった。
 大人しい見かけの通り、あまり人付き合いは得意じゃなかった。しかしそんなところが逆に俺たちと合い、一緒につるむようになった。

 ちなみに声をかけられなくてもいいと言ってはいるが、女子についてかなり詳しかったりする。決して興味が無いわけではないことを俺は知っている。

幸重 仁太郎

お前等いつも女子のことばっかりだな。リア充だということに、女子は関係ないだろ?

東島 恵

大ありなんだよ

古平 壮一

一般的に、あるよね。関係……


 やはり、何度言ってもこいつらはわかっていない。仕方がない、今日もきっちり教えてやるとしよう。

幸重 仁太郎

いいか、俺を見てみろ。毎日三食きっちり食事を取り、睡眠もしっかり取っている。自由な時間は趣味に没頭。これだけ充実した毎日を過ごしているんだ、リア充でなくてなんと呼ぶ!

東島 恵

世間一般的には非リア充だってんだよ! だいたいお前の今の趣味ってあれだろ、なんとかブロック

幸重 仁太郎

ナノブロックだ。いつかオリジナルのロボットを作り上げるのが夢だ

東島 恵

地味だな!

古平 壮一

その前は確か、刺繍だったっけ……

東島 恵

女子かよ!

幸重 仁太郎

最近はゲームにもハマってきたぞ

東島 恵

それ非リア一直線じゃねーか!
つーかアウトドアな趣味も持て!

幸重 仁太郎

趣味の種類は関係ないだろう?

東島 恵

あるっつの! だいたいな、お前には一番肝心なものが欠けてるんだよ!

古平 壮一

そうだよ。リア充を決定付けるもの。

恋人がいないよね。……非リア充代表には

東島 恵

そうだそうだ、女っ気も無いのにリア充とか言うんじゃねー! 非リア充代表が!

幸重 仁太郎

なんでそうなる! まったく、だったらリア充代表は誰だ? 誰ならリア充だと言うんだ!

東島 恵

それも前から言ってるだろ? ほら

古平 壮一

うん。彼女だね……清里優理子

 恵はチラッと見るだけ、壮一はじっと見つめるその先には、清里優理子(きよさと ゆりこ)。



清里 優理子




 クラスの男子4人くらいに囲まれて話をしている。

古平 壮一

美人だよね……本当

東島 恵

そうだなー。頭もいいんだろ? 運動もできるらしいしさ

古平 壮一

うん。才色兼備とは正に彼女のことだよ。男子女子、共に仲良く……あ、女子とはあんまり話せていないかな。ああやって男子が囲んじゃうから

東島 恵

お前よく見てるよな

古平 壮一

そ……そんなことはないよ。彼女は有名だし、やっぱり目立つから

 壮一の言い訳はともかく……その通りなのだ。

 クラスの人気者。
 話し相手や遊ぶ相手には困らない。毎日が充実している。

古平 壮一

でもあの子、彼氏いるって噂なんだよね。あんなに可愛いんだから、当然だと思うけど……

東島 恵

男子もそれわかってんのに言い寄ってるんだよなー

古平 壮一

ある意味すごいね……


 恋人の存在。やはりそれが、リア充であることの定義だと言うのだろうか?

 いいや、それは違う。

幸重 仁太郎

ふっ……やはり、お前等はわかっていない!

東島 恵

なんだよ急に

古平 壮一

目立つから大声出さないでよ……

 二人が周りの目を気にするが、俺は構わず続ける。









幸重 仁太郎

いいか、俺がリア充であるという、最大の理由は……お前等のようなバカ話ができる親友がいるということだ!
リア充とは、リアルが充実しているということだろう? だったらこれ以上の理由があるか?!

東島 恵

……ったく、お前ってやつは。バカ正直にそんなこと言うんじゃねーよ

古平 壮一

仁太郎って、それを卑屈になって言ってるわけじゃないから、すごいよね……

東島 恵

周りはそうは思ってくれないけどな。開き直りだと思われてる。

……けどま、いっか

古平 壮一

うん。僕も諦めた。
もう3バカでいいよ……

幸重 仁太郎

なんだ? なにを呆れた顔をしてるだよ

東島 恵

呆れてんだよ、この非リア充代表

古平 壮一

そうだよ、3バカリーダー

幸重 仁太郎

む、もうこの際3バカで構わないが、俺はリア充だぞ!


 そう言って3人で笑い合う。やはり、最高に気持ちの良いヤツらだ。
 周りに変な目で見られようとも構わない。
 俺は間違いなく、リア充なのだから。


 ただ……。


清里 優理子

…………


 清里優理子。

 最近なにかと引き合いに出される彼女のことが、俺は気になっていた。

幸重 仁太郎

リア充代表、か。
本当にそうなのか……?













続く

第一話「リア充とは」

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