MI6の諜報員

痴女の演技をすれば襲われない。さあ、急いで痴女になりきるんだっ

でも、痴女ってどうすれば……

こんな感じで、くねくねすればいいのかな

あはは、それじゃ痴女じゃなくて恥女、恥ずかしい女だよう

KGBの職員

……これを飲みなさい

それは?

KGBの職員

いいから早く飲んでっ

あっ

飲んじゃった

ちょっと! まさかエッチな薬とかじゃないでしょうね!!

KGBの職員

利尿薬よ

はぁ!?

KGBの職員

トイレに行きたくなる薬よ

えぇ!?

KGBの職員

モジモジしながら歩けば痴女っぽいでしょう?

なにそれえ

KGBの職員

とりあえずの措置よ。ほら、そこの痴女たちが復活する前にここを去るわよ

そんなぁ

あっ、まずい。ほんとにトイレに行きたくなってきた

もう! もらしちゃったら、どうするんですかあ

 などと、私たちが文句を言うと。

 お姉さんは、キリっとした笑みでこう言った。

KGBの職員

大丈夫。女子中学生のおもらしは、むしろOKよっ!

OKって何がですかあ

というか大丈夫かなこの人たち

でも一緒に行くしかなくない?

うーん

うーん

うーん

 私たちは首をかしげた。

 するとお姉さんたちは、厳しくこう言った。

CIAの工作員

さあ、いつまでも文句言ってないで行くわよ

MI6の諜報員

スローかつスピーディー

KGBの職員

急ぎながら慎重にねっ

 私たちは、モジモジしながら学校を後にした。

 内股で、若干、前かがみになって、自衛隊駐屯地を目指したのである。――

 

ROUND1
地獄の痴女『ハンドジョブ』

 十数分後――。

MI6の諜報員

やばいっ! あのフェンスに逃げこめっ!!

もう、智子のせいだよお

そっ、そんなこと言ったってえ

もらせば良かったんだよお

KGBの職員

痴女が多すぎるッ!

トイレに駆けこむからバレたんだよお

だって、ほんとギリギリだったんだもん

もう! もらした私がバカみたいじゃん

CIAの工作員

フェンスを閉めたぞ。ここで、いったん静まるのを待とう

MI6の諜報員

だが長くはもたないぞ

あのっ、痴女ってフェンスを開けられないんですか?

KGBの職員

大丈夫っ。そこまでの知能はないわ

CIAの工作員

というより、頭にはエッチのことしかないのよ

KGBの職員

しかし、あの物量でのしかかられては厳しいわね

MI6の諜報員

まずい! フェンスが倒れるぞ!

 痴女の大群が、フェンスを倒して押し寄せてきた。

MI6の諜報員

しまった。今から痴女の演技をしても間に合わないッ!

KGBの職員

あの倉庫に逃げるわよ!

CIAの工作員

痴女は私が引き受ける! みんな早く逃げるんだ!!

そんなっ

CIAの工作員

痴女じゃらし(ネコじゃらしみたいなもの)がある。しかし、長くはもたない

 お姉さんは、痴女じゃらしをふるふるしながらそう言った。

 痴女は、恍惚の笑みで悦びに腰をくねらせた。


 私たちは倉庫に入った。

 MI6のお姉さんが叫んだ。

MI6の諜報員

早く来い!

CIAの工作員

OKぇ!

 CIAのお姉さんは、痴女を蹴飛ばした。

 それから勢いよく倉庫に飛びこんだ。

 扉が閉まった。

 倉庫のなかは薄暗かった。

 私たちは扉を見たまま、後ずさりした。

 痴女は扉を開けられないようだった。

 私は安堵のため息をついた。

 倉庫は、ちょうどコンビニくらいの広さだった。

MI6の諜報員

ヤツら、なぜ追ってこない?

 お姉さんはそう言って、電気を点けた。

 すると――。

 あはぁん 

 倉庫の奥には、見るからに男好きする痴女がいた。

KGBの職員

しまった!?

MI6の諜報員

罠だ!!

CIAの工作員

あれは、地獄の痴女『ハンドジョブ』。テクニカルな指づかいに潜んだやさしさが情けないようでたくましくもある……アジリティ・タイプの痴女よ

アジリティ・タイプって何それ!?

CIAの工作員

我々CIAは、痴女を観察し分類してるのよ

分類……って、痴女が発生してからまだ9時間しか経ってないのに!?

CIAの工作員

……アメリカの大衆娯楽は細かいことを気にしないのよっ

 CIAのお姉さんは、開き直ってそう言った。

 するとMI6のお姉さんが、ぼそりとつぶやいた。

MI6の諜報員

なるほどそういうことか

 たぶん、つぶやいたと思う。

KGBの職員

で。そのハンドジョブだかハンドソープだか薬用石鹸μ'sとかいうのが、こっちを見てるけど?

CIAの工作員

まずいわね、ヤツには痴女じゃらしが効かないわ

KGBの職員

ハラショー。では5分だ。5分間、痴女の演技でヤツの注意をひきつけて。後ろにまわりこんで、首をへし折るわ

MI6の諜報員

大丈夫かい?

KGBの職員

一瞬で頭をやれば問題ない。まあ、そこはゾンビと一緒よ

CIAの工作員

頼もしいわね

 お姉さんは、かたく握手をかわした。

KGBの職員

よし。それじゃ、そこの女子中学生。ヤツがポーズをとるから、同じポーズをとって注意をひきつけてね

わっ、私っ!?

KGBの職員

トイレにかけこんだ罰よ。それでお友だちも許してあげなさい

うっ、うん

智子がんばって!

そっ、そんないきなりっ

KGBの職員

ヤツが来るわっ!
それじゃ、まかせたわよ!!

あんっ

ああぁんっ

CIAの工作員

ほらっ、ポーズをマネて!

あっ

ああんー

CIAの工作員

もっと感情をこめて!
次が来るわよ!!

あはんっ

いやあ~ん

CIAの工作員

繰り返して!

あはんっ

いやんっ!

CIAの工作員

ニュアンスは違ったけどなかなか良かったわ
次が来るわよ、プリペア・ユア・セルフ!

あんっ

あんっ

あんっ

あんっ

んっ!? もう、らめえ

智子がんばれー

ファイトー

もう、視ないでえ~

MI6の諜報員

ほらっ!

あんっ

あんっ

あんっ

あんっ

って

こんなんできるかー!

むきゃー!!

CIAの工作員

マズイ!

CIAの工作員

しっかりして

MI6の諜報員

すまない油断したっ

えっ?

 私は、気がつくとお姉さんの腕に抱かれていた。


 おそるおそる顔をあげた。
 眼前には、さっきの痴女が倒れていた。


 しあわせそうな顔だった。

 だけど、首が変な方向に曲がっていた。

 そして痴女のそばには、KGBのお姉さんが立っていた。

KGBの職員

がんばったな

 母性に満ちた笑みだった。

 お姉さんは私の頭をなでると、痴女を見下ろした。

 それから不敵な笑みでこう言った。

KGBの職員

私は赤きサイクロン。すべてを巻きこみ粉砕するのよっ

 なんとなくエッチな意味に聞こえたのは、たぶん、あんなポーズしていたせいだと思う。――

地獄の痴女『ハンドジョブ』

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