時をしばし遡ろう。
あの日、わたしは困り果てていた。
ニューフェイスの社交界を代表するキャバレー『スター』にてニューフェイス市長との面会予定が迫っているのに、着ていくドレスがどうしても決まらないのだ。
紳士の社交場たる『スター』に女の身で挑むのは戦に等しい。ならば相応のものを、と思うのだが、どうもわたしにはセンスというものが欠けているように思える。
どうしよう。
悩むわたしに、記憶が囁きかけた。
この街には差配屋という便利に使える何でも屋が居て、金さえ払えば最適な人材を手配してもらえるという。
幸い、わたしにはそれなりの路銀がある。ならば頼もうではないか、その差配屋という輩に。
そしてわたしは、彼と彼女に出会ったのだ。