序にかえて

 輝かしくも忌々しい『金色狂い』の時代はとうに過ぎ去り、夢と希望と打算にあふれた人々は、幻のように消えていった。
 先住民たちの土地を堂々と奪い去り、ハチの巣のような坑道を穿ち続けたフロンティアの勇士たちも、もはや伝説の存在としてしか語られなくなって久しい。
 その中にあって、この街だけは特別であった。
 ニューフェイス(NerFaith)
 今なお地下に鉱脈を抱えた巨大な穴。その側面に張り付く街並みの異様さは、人という種の執着心の恐ろしさの体現としか思えない。
 わたしがこの街に来て数週間が経つが、この街の古典演劇のような文化風習にはあきれ果てるばかりだ。
 そして、先住民。
 彼らの権利をエンジン国民の側から保証する。それがわたしの目指す目標である。だが、この街においても、先住民の立場は他とまったく変わらない。いや、それ以下である地区さえあるのだ。
 いや、わたしの怒りはまず横に置こう。今回の主役はそれではない。
 わたしは記さねばならぬのだ。この街を疾走する彼の姿を。わたしと彼女だけが目にした、彼の魂の迸りを。
 差配屋ガッツよ、とわに眠れ。

ガッツ

おい待てこら勝手に殺すなよ

閑話休題
さあ、とりあえず物語をはじめようか。

Ladyjoke
差配屋ガッツの疾走

ガッツ

生きててよかった!
で、これからオレの大活躍が始まるんだろ!?
な!

GM

生きてればの話だがなー。
ニューフェイスの差配屋は楽な仕事じゃないぜ。とにかくCoinの残高には注意だ。

ガッツ

へいへい。んで、まず俺は何すればいいの?

GM

まずは基本能力の決定だ。つってもほぼ固定だけどな。
まず能力値【器】が1。
これは文字通り、お前さんの【器】の広さを表してる。Coinを消費して上げることができるが、まあそりゃ後々だね。
次にCoin20枚。ぶっちゃけ命と等価だから無駄遣いすんなよ。

ガッツ

へーい。で、それだけ?

GM

お前さんが自分で決められる項目がひとつある。
子飼人(エージェント)の選定だ。
この子飼人リストから一人選びな。ちゃんと持ってる能力も含めて考えるんだぞ。

ガッツ

あーうーんと。難しいのはわかんねえからなあ。

GM

子飼人はそれぞれ特殊能力を持ってる。それがお前さんの直接的な力になるんだ。ちょっとは迷って――。

ガッツ

お! これにする! カ・シミ・ィル!

GM

まぢで!!

ガッツ

なんで!!

GM

下手すると味方に全滅させられるけどいいのか? ほんとうにいいのか?

ガッツ

一度決めたもんは変えられねえよ。なんか先住民の女の子なんだろ? かわいいから許す。

GM

いつまでそう言ってられるかな……。
ともあれ、それが選択なら良しだ。カ・シミ・ィルの能力を説明するぞ。

カ・シミ・ィルは先住民の少女。聖なる白竜という白いクロコダイルを崇拝する、ニューフェイス旧坑道(それは下水道でもある)の主である。
手にしたトーテムバールと旧坑道への適正によって、【剛力】【小柄】という二つの個性を常に発揮している。
そして、聖なる白竜(しろいくろこだいる)は邪なる者を一口に飲み込み差配屋を助ける――が、2分の1の確率で味方が喰われてしまうのだ。

ガッツ

Ohリスキー……オレそういうの大好き。

GM

いいか。忠告はしたぞ。したからな!
それではカ・シミ・ィルを呼ぼう。それそれ。

――我がトーテムは血を欲しておる。

カ・シミ・ィル

さあ捧げてもらおうかっ。

ガッツ

即死!?

GM

はいどーどーどー。
仲良くしてね。話はじまらないから。
なお聖なる白竜(しろくてでっかいくろこだいる)は見ちゃったら食べられちゃうので出てきません。



出すなよ?

ガッツ

どうしよっかなー。

カ・シミ・ィル

我が王の血肉となるのならそれが良かろう。
なんかお前頭悪そうだし差配屋は無理だろうて。

ガッツ

いやオレ即死はやだかんね!?

GM

はいはい。んじゃ現状の記録しとくよー。

差配屋ガッツ
【器】1
【Coin】20枚
【子飼人】カ・シミ・ィル

ガッツ

ま、考えるのはあとだ。
とにかく疾るぜ!

GM

お願いだから考えてねー。

02 First Biz に続く

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