日商簿記検定が近づいてきた、ある日の部活終了後、私は煉先輩に「費用・収益の見越し・繰り延べ」について詳しく説明をしてもらった。
日商簿記検定が近づいてきた、ある日の部活終了後、私は煉先輩に「費用・収益の見越し・繰り延べ」について詳しく説明をしてもらった。
ところが、煉先輩が言うには「費用・収益の見越し・繰り延べ」をマスターしただけでは「検定合格間違いなし!!」とはならないらしい。
そこで私は、高校2年で日商簿記2級に合格し、日商簿記1級現役合格を目指している煉先輩に、合格するためのポイントを聞くことにした。
それで、煉先輩!日商簿記検定3級の合格を目指すにあたり、ポイントとなる部分にはどんなものがあるんですか?
そうだな…
まずは、これだろうな!!
ポイント1
奇数問題から先に解くべし!
奇数問題、ですか…
日商簿記検定3級って、確か第1問~第5問まであるんですよね…
ということは…
1・3・5を先に解け!
ってことですよね!
そういうことになるな。
まず、第1問は「仕訳」問題。
仕訳問題は山を張らず、出題範囲を全般的に網羅していないと、満点を取るのは難しいだろうな。
1問4点で5問出題されるから、第1問だけで20点の配点だ。
1問4点は大きいですね…
次に第3問は「試算表」の問題。
試算表には、勘定科目の借方・貸方のそれぞれの合計を記入する「合計試算表」、それぞれの残高を記入する「残高試算表」、「合計」と「残高」を合体させた「合計残高試算表」の3種類があって、変則的な出題をされることもある。
変則的な出題!?
いきなり変則的と言われても困るよな…
それじゃ、まず合計試算表からだな。
ここからは、ホワイトボードも使おう。
そういうと煉先輩は、ホワイトボードに「合計試算表」を書き始めた。
…できた!
これが「合計試算表」だ。
そもそも「試算表」というのは、「仕訳」が正しく行われているかを確認するために作成される書類で「財務諸表」ではないんだ。
その中で、合計試算表は、借方・貸方それぞれの「合計」を記入していくものだな。
数字を記入すると、こうなる。
それぞれの勘定科目の借方・貸方に数字が入っていますね!
続いて「残高試算表」だが…
「合計試算表」の「合計」が「残高」に変わっていますね…
数字を記入すると、こうなるぞ!
数字が片方にしか書かれていませんね!
なるほど!!
「合計試算表」が、貸借それぞの「合計」を記入するのに対し、「残高試算表」は、各勘定科目の残高のみを記入していく書類なんですね!!
そういうこと!
ただ、戸山先生がよく言っていたことなんだが、試算表の前の「合計」「残高」をよく確認せずに記入してしまう受験者が多いらしい。
本当は、貸借両方に「合計」を記入しなければいけないのに、片方にだけ「残高」を記入しちゃった、とかですか?
そういうこと。
問題を解く際には、よく見て「合計」なのか「残高」なのかを、しつこい位確認した方がいいだろう!
この「合計」と「残高」が一緒になったのが「合計残高試算表」だな!
貸借双方に「合計」と「残高」の欄がありますね!
この場合「合計」欄は貸借双方に記入し、金額の多い方に、差額を「残高」欄に記入するんだ。
数字を記入すると、こうなるな。
現金の場合
借方が500,000で
貸方が300,000だから
金額の大きい借方の残高欄に
差額の200,000を記入する
という訳ですね!
その通り!
欄が多くなるから、検定で出ると嫌なように思えるが、仕組み自体は難しいものじゃない。
これより、と言うより試算表の中で一番面倒臭いのが変則的な試算表だ。
うわっ!
欄が貸借それぞれ3つもある…
この場合、大概「1日現在」の欄は記入されていて、実際は「月中取引高」を問題から計算して記入し、「1日現在」と足した数字を「月末合計」に記入するんだ。
数字を記入すると、こうなる。
数字がいっぱいあって、何だか大変そうに見えますけど、確かに現金の借方だったら…
300,000+470,000
で月末合計が
770,000
になってますね!
そうだな!
ちなみに、これが「合計」ではなく「残高」になった場合には、貸借どちらかにのみ記入することになる。
この、各試算表の記入の仕組みが分かった上で、問題文の中にある取引データを全て仕訳したり、各勘定科目のTフォームを自分で作って数字を集約し、解答用紙の試算表に記入するんだ。
問題文にある取引データの仕訳を行う場合の注意点は何かありますか?
ずばり!「二重取引」に要注意、だな!
二重取引!?
取引データが例えば
1日 郷中商店から商品を仕入れ…
3日 戸山商店へ商品を売り渡し…
のように「日付毎」になっていれば、二重取引は発生しない。
二重取引が発生するパターンは、「補助簿」ごとに取引がまとめて記入されている場合だ。
「補助簿」って、「現金出納帳」「当座預金出納帳」「仕入帳」「売上帳」といった「帳簿」のことですよね。
そうだな!
問題には、こんな風に書いてある。
<1日~30日の取引記録>
○現金出納帳
当座預金預入 500,000
商品仕入 300,000
…
○当座預金出納帳
現金預入 500,000
商品仕入 350,000
…
……………
あっ!!!
現金出納帳の「当座預金預入」と、当座預金出納帳の「現金預入」って、同じ意味ですよね!!
その通り!!
二重仕訳の危険性を孕んでいる問題の場合は、仕訳かTフォームへの集約の前に、どちらか片方を横線で消しておく必要がある。
「金額が同じものは要注意」と覚えておくといいだろう!
更に、試算表と共に「買掛金明細表」「売掛金明細表」を作成する問題が出題される場合がある。
「売掛金」「買掛金」の、各商店毎の金額を現している明細表のことですね。
この問題が出題された場合、Tフォームに数字を集約していく場合は「売掛金(嶋尻)」「買掛金(沢継)」のような形でTフォームを作成すればOKだな。
仕訳方式で問題を解く場合は…
売掛金(嶋尻)100,000
/
売上 100,000
のように、勘定科目の後に商店名を記入していくと、集計できるだろう。
第3問の試算表には、色々過ぎる要素満載なんですね…
正直、今の俺でも問題を解くのは面倒臭く感じるよ。
ただ、100点中30点分の配点は大きいから、外すことのできない問題だ。
配点が32点の時もあるようですから、この問題が1問も解けないと、その時点で合格の可能性はなくなる、ということですよね。
そうだな。
そして、これも配点が30点前後になる第5問だが、ほとんどの場合「精算表」が出題されている。
ところが、数回前の検定で、貸借対照表と損益計算書を作成する問題が出題されたんだ!
先輩!でもでも、作成の面倒臭さで考えれば、「精算表」よりも「財務諸表」が出題された方が、受検生に対して有利なんじゃないですか?
それは、俺たち「商業高校生」にだけ適用できる理屈だな。
商業高校の簿記は、仕訳→Tフォーム記入→次期繰越と損益振替→精算表の作成→財務諸表の作成 といった具合に、簿記をしっかりと体系的に学習するから、例え「財務諸表」の作成が第5問で出題されても、半分以上解けるだろう。
だが、普通高校出身の大学生や社会人の方々は、俺たちが学習したような「体系的」な簿記の学習をしていない。
もしかしたら、決算に収益費用を「損益」にもっていく、という意味を理解していない方々もいらっしゃるかも知れない。
そうなると、問題集の反復練習だけで検定合格を目指そうとする。
そんな状態で、問題集に「財務諸表」の作成問題がない状態だと…
着手したことのない問題に焦って、検定中頭が真っ白になるだろうな。
日商簿記の問題の出題形式が、最近は実務に適合できる形に近づいている、と戸山先生もおっしゃっていました。
そして、今はほとんどパソコンで会計処理をするから、精算表を一から作ることも少ない、と。
ということは、会社の成績や健康状態を見ることのできる「財務諸表」の出題が多くなることも予想できる、ということですね。
その通りだな。
美琴は授業でもやっていることだから大丈夫だとは思うが、精算表ばかり解いていないで、財務諸表の問題もしっかり抑えておくといい
分かりました!ありがとうございます。
さて、1つ目のポイントが長くなったな。
2つ目のポイントだが…
”全校生徒に連絡します。下校時刻となりました。校舎内に残っている生徒は速やかに下校準備をし、忘れ物をしないよう、下校して下さい。特別教室を使用中の生徒は、鍵をしめ、職員室に鍵を必ず戻して下さい…”
下校時刻になっちゃいましたね…
そのようだな…
美琴、続きは明日で良いか?
はいっ!分かりました!!
それじゃ、また明日の部活終了後に教えて下さい!
それじゃ、帰る準備をするか!
はいっ!
chapter 26 3級突破の糸口② に続く