走り続けてどれくらいだろうか。

普段の訓練より軽いとは思うがここまで必死になったのは前線以来だろう。

それにしても彼女の体力は無尽蔵なのだろうか。

息一つ乱れていない。

こっちよ。はやくしなさい。

ああ、今行く。

それにしてもバカでかい屋敷ね。
あいつが創造しただけはあるわ。
外観とは大違い。

た、確かに。
この廊下はどこまで続いているんだ?!

彼女に言われ気づいた。

入った当初は三階建ての少し大きい屋敷としか思っていた。

しかし、実際は長さが二倍くらいの大きさに思えた。

後でいろいろ説明するから今は黙ってて。

ああ。

説明をくれるだけでありがたい。

さっきから何がなんやら。

早く本土へ帰りたい。

しばらく移動すると彼女はある部屋の前へとまった。

さきほどの部屋と外観はほとんど変わらない。

おそらくすべての部屋が同じ造りなのだろう。

ここでいいわ。
入りましょう。

俺たちは中に入ると各々椅子に座った。

中はそこそこ広い。

いまさらだが、本当に彼女についてきてよかったのだろうか。

先ほどみたく、襲われるのでは。

不安が頭をよぎっていた。

あの女みたいに非効率なことはしない主義なの。
私はあなたの命の恩人。それだけの認識でいいわ。

ああ、感謝している。あの女は何者だ。
俺はなにをされた。

心を読まれたのか、顔に出ていたのか。

とりあえず、動揺を隠すため精一杯の質問をしてみた。

あの女は魔女。
あなたは魔力の糧にされかかっていたの。
私がいなければ、干からびていたわね。

魔女?魔力?

空想はロシアの機関銃だけにしてくれ。

あまりの現実味のなさにおかしくなりそうだ。

そのなんだ。あんたも魔女なのか?

あんなのと一緒にしないで。
私は由緒正しき魔術師よ。

魔女に魔術師。

こんな奴らがこの世界にいるとは。

最悪の予想を思いついた。

どうか間違っていますように。

もしかして

ここにいる奴はそう言う奴の集まりなのか?

半分正解よ。
半分は一般人だった。

嬉しいのやら嬉しくないのやら。

嬉しくない。

ん、、だった?、、、

っ!!ポールっ!!

私じゃないわよ。

どう?
日常から引きはがされるのは?
わざわざさっきなんて 日常ごっこ までしてあげたのよ?

状況からポールは魔女か魔術師に殺されたらしい。

俺もああなりかけたと思うとゾッとする。

なぜそんなことを?

勿論、駒として使うためよ。
真実を知った人は自滅するから
ゆっくり教えてあげるの。
そうしてあなたは私の駒となった。

全身に悪寒が走った。

大丈夫よ、取ってり食ったしないから。
役に立つあいだはね。
あなたには肉の盾になってもらうわ。

おとりになれと?

いざという時は腕一本くらいは捨てなさい。
それ以上は期待してないから。

腕一本で済むのならまだ安い。

生き残るためには従う他ない。

しかも彼女はまだ善良なほうだろう。

だいたいこの集まりはゲームみたいなものね。
生き残ればいいの。簡単でしょ?

私の目標はここにいる魔術師、魔女の殺害よ。
一般人もすでに操り人形か死んでるかどちらかよ。
よかったわね、あなた生きてて。

何故こんなことになってしまったのか。

命を削りまた命を削る。

火薬の世界から深淵の世界へ。

いや、これまで気づいていなかっただけなのだ。

深淵は近く深い。

俺はこうして浅瀬に立った。

続くのか



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