むかぁしむかし、恐怖と迷信が渦巻く災厄の時代。
 世界には飢餓、疫病、戦争が頻繁に起こりその度に途方もない人々が死ぬ、人類はいつ起こるか分からない災厄に不安な日々を過ごしていた。

 人々は災厄の連鎖の原因を特定できず、一方的に苦渋を飲まされる日々に一筋の救いと同意を求め迷信を打ち出す。
 飢餓、疫病、天変地異は魔女の妖術のため起こったとされる考えである。
 その考えを人々の同意を得て急速に拡散、時代を導く狂信へと変わっていく。

 人々は血走った目で魔女探しに躍起になっていく。 やがて、魔女と疑われた者は自白を強要され、そのために拷問が課せられるようになっていく、その苛烈さは、日ごとに恐ろしいものになっていった・・。

そんな時代の最中、暗き森の集落「アルヴィド」に、とても可愛らしい女の子がいました。
 ある時、その女の子のおばあさんが赤いビロードの布で、女の子のかぶるずきんを作ってくれました。
 そのずきんが女の子にとても似合っていたので、みんなは女の子の事を、『赤ずきん』と呼ぶ様になりました・・・。

 赤ずきんの一族は代々を「アルヴィド」守ってきた魔女の血を引く家系で、人類には扱えぬ未知の回路を使い、災厄が蔓延する時代もこの地を守り続けていました。


 ある日の事、お母さんは赤ずきんを呼んで言いました。

赤ずきん

おっす、母上!
お呼びでありましょうか?

母上

赤ずきんや、おばあさんがご病気になってしまったのよ。

赤ずきん

なんと、向こう20年は病気などしないであろうと噂されていたグランドマザーが病気ですと!

母上

誰が噂していたのよ・・・とにかく、おばあさんはお前をとっても可愛がってくださったのだから、お見舞いに行ってあげなさい。きっと、喜んでくださるから。

赤ずきん

なん・・・だと・・・。
はじめてのおつかい・・・?

驚くのも無理ありません、赤ずきんがおばあさんの所へ一人で行くのは始めての事だったのです。

赤ずきん

し、しかも最近は、私たち森の魔女の血を引く一族を捕えんとして教会が”狼”とか言う軍隊をこの森に送り込んでいるとか・・この任務私には荷が重い・・!!

母上

片道20分程の近場でしょう?
さっさと行ってきなさい。

赤ずきん

・・・・・・。

母上

そんな無言の圧力をかけてもだめよ・・。

 赤ずきんはしぶしぶおばあさんのところへお見舞いに行くことを承諾しました。
 お見舞いの品として、ケーキと上等なブドウ酒も持っていくよう渡されたのでした。

赤ずきん

ふぅ・・、結局行くことになってしまったか。
大人の足では20分かもしれないけど、どう考えても30分はかかる道のりなのだが・・。

赤ずきんはぶつぶつ、お見舞いの品の事や歩く距離ののことをばやきながらおばあさんの家への道をしばらくの間歩いていました、すると・・。

メガネの男

やあ、赤ずきんがかわいい赤ずきんちゃん。
どこかおでかけかい?

 派手な服を着た、メガネ男がニコニコと笑みを浮かべながら話しかけてきたのです。

赤ずきん

こんにちは、メガネの素敵なお兄さん。
いかにも今からおでかっけ♪

赤ずきん

それと・・・、

メガネの男

なんだい?

赤ずきん

赤ずきんがかわいいのではない、
私の可愛らしさが赤ずきんを引き立てているんだ!

赤ずきんは周囲の人からも身内からも赤ずきんのことばかり褒められ、そして両親から赤ずきんと呼ばれるようになった日から自分の赤ずきんの事を嫉んでいました。

メガネの男

あらら、ごめんよそんなつもりじゃ・・。
君は美しい瞳をした可愛らしい顔だよ、まさに赤ずきんを引き立ててるね。

赤ずきん

あぁ、ごめんなさい。
ついみんな赤ずきんのことばっかり言うから、見ず知らずの人に言ってもただの愚痴だな、忘れてくれ。

メガネの男

いや、謝ることはない。
こちらにも非はあったのだからね。

赤ずきんの暗い雰囲気により、冷めかけた二人の会話だったが、メガネの男は高いテンションで質問を続ける。

メガネの男

・・・話は変わるけど赤ずきんちゃんは
これからどこ行くの、たった一人で。

赤ずきん

おばあさんのお家よ。おばあさんがご病気だから、お見舞いに行くの。

メガネの男

そうかい。それは偉いねえ。
・・・おや? そのバスケットの中には、何が入っているのかな?

赤ずきん

ケーキとブドウ酒よ。おばあさんのご病気が早く良くなる様に、母上から渡されたものよ。

二人の間に一瞬の沈黙が生まれる・・。

赤ずきん

・・おかしいよなww
病人に甘いもんに酒だぜ? 嗜好品もいいとこだ。

メガネの男

・・・たしかに。

赤ずきん

おおっとぉ、また愚痴ってしまった。
すみません。

メガネの男

いいんだ、事実だ・・仕方ないさ。

不意に飛び出す赤ずきんの愚痴にもメガネの男は気を落とさず質問を続けた。

メガネの男

それで、そのおばあさんの家はどこにあるんだい?

赤ずきん

森のずっと奥の方よ。ここからなら、歩いて十五分くらいかかるわね。

メガネの男

森の奥・・十五分・・この子から感じる魔女の血・・ククク・・これは核心にかなり近づいたな。

メガネの男は怪しい笑みと共に赤ずきんの言葉から何かを推測していた・・、あの顔を見てください、あの顔は悪巧みをしてる顔ですよ!

赤ずきん

お兄さん、どうしたんだ?
にやけながら妄想か?

赤ずきんはすかさず少々皮肉を込めた言葉を投げかける・・。

メガネの男

ああ、ごめんよつい考え込んじゃう癖があってね・・会話中にもお構いなしだから困ったもんさww

赤ずきん

そうか、なら良かった・・大分失礼な会話しちゃったから気分を害してしまったと思って・・。

赤ずきん

じゃあ、もう行くよお話楽しかったよ聞いてくれてありがとう。

メガネの男

ああ僕も楽しかったよ、またね♪

メガネの男

しかし・・十五分ねぇ・・家を特定してひと悶着となると時間が無いな・・・よし。

赤ずきんがお礼を言って去ろうとすると、メガネの男は言葉を投げかけた。

メガネの男

赤ずきんちゃん。おばあさんの家に行く前に、周りを見てごらんよ。こんなにきれいに花が咲いているし、小鳥は歌っているよ。せっかくだから、楽しく遊びながら行ったらどうかな。たとえば、花をつむとか。

赤ずきん

そうね、せっかくインドア真っ盛りだった最中の外出だしなにかしないのも損ね、花を摘むとかウフフ的なことはしないけど、あなたの言うとおり自然散策してみるわ。

そう言って赤ずきんは森の奥へ進んで行きました。

メガネの男

・・・さてと。

赤ずきんと別れたメガネの男は赤ずきんが今まで進んできていた方角へと歩いて行きました・・。

メガネの男

おい、詮索班情報だ・・、
俺の位置を特定できるな・・?

俺の位置からガキの足で15分程の位置に魔女の住む家がある・・。

その位置に家は何軒ほど建ってる?

メガネの男

三軒か・・、
そん中でババアの住む家を割り出せ、俺もすぐ向かう。
そのババア捕えたあと孫もやってくるからなキビキビ動けよ・・。

 赤ずきんとおばあさんを捕えようとしているこの男の正体とはいかに?
 後半えぇ続く!!

序章 オオカミと赤ずきん - 前篇

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