いやあ~疲れた疲れた。
今日こそは日付変わる前に帰れると
思ってたんだけどなあ……

 そうですねえ……
 飯食う暇もありませんでしたし…… 

深夜の住宅街からはすっかり灯の気が失せ、
響くのは残業帰りの俺と後輩の足音のみだった。

ああ、お前は特に災難だよなあ、
新婚だっつーのにこんな厄介な
プロジェクトに参加させられてさあ……

 いえ、あいつも仕事してますし。
 それにこんな大きな仕事を先輩と
 出来るなんて、嬉しいです、俺。

お前は良い事言うなあ……!
よーし差し当たって、先輩が
かわいい後輩に缶コーヒーでも
奢ってやろう!

プロジェクトが片付いたらちゃんと飲みにいこう、
と付け足して、俺はちょうど目の先に見えてきた
自動販売機を指さした。

えーと俺はブラックで……

お前もブラックでいいんだよな? 

そういって同じボタンを押そうとすると、

 あ、すいません、
 微糖でお願いします。

横から伸びてきた指がその隣、
微糖の缶コーヒーのボタンを押した。

 すいません、ご馳走様さまです。

 いや、これくらい全然いいんだけど、
 それよりお前さあ、

あー甘ぁ、などと眉をしかめて
缶コーヒーをあおる後輩に、
俺はふと、先ほど抱いた疑問をぶつけた。

お前さ、コーヒーはブラックじゃ
なかったっけ?
オフィスでも絶対ブラック以外
飲まなかったよな?
むしろ甘い物苦手じゃなかったか?

ああ、はいブラック派ですし、
甘い物も苦手です。
でも今ブラック飲んじゃうと、口の中が
苦くなるじゃないですか。

? それが? 

 俺はいいんですけどね、

 あいつがブラック苦くて、
 ダメなんで……

 ――――お前、今すぐ
 俺のとコーヒー交換しろ……!


その2:缶コーヒーはブラック派?

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