『 特集!
  女子高生の
  流行最先端!』

ソファにだらしなく横になって、
せんべいをくわえながらお昼のワイドショーでも
見るか、テレビを付けると、ちょうどそんな
特集コーナーが始まったところだった。

ふーん、最近の女子高生はこんなもんが好きなのか……

今時の若い子の感覚はよく分からないなあ、とか
思いながらも、とりあえず参考まで覚えておこうと
画面に見入っていると、

 ……何見てるんですか 

がらり、と窓が開く音とともに、
庭の方から地を這うような低い声が。
見ると、制服姿のチカが学生鞄を手に立っていた。

あれ、おかえりチカ。 
まだ昼だけど、サボり? 

ここを通り抜けた方が自分の部屋へは早いと、
うちの庭はチカの通学路と化している。


チカは隣の家の子で、俺の幼馴染だ。
生まれたときから一緒に遊んでいたので、
もはや兄妹みたいなもんだと思っている。

 そんなわけありません。
 今、試験期間中なんです。

なのに高校に上がったくらいから、
チカは俺に対してなんだかよそよそしくなった。

昔は「お兄ちゃん」って呼んでくれたのに、
今は「タカシさん」って名前にさん付けだし、
口調も他の大人に対するときと同じようで、
お兄ちゃんとしては、ちょっと寂しい。

 タカシさんは何してるんですか?

俺?
俺は今日大学の講義無いから、
昼下がりを満喫中。

今ちょうどさ、これを押さえとけば
女子高生も落とせる! みたいな
特集が――

始まって、と言う前に、
すたすた部屋にあがりこんできたチカに
ぷつんとテレビの電源を切られた。

 私、部屋で勉強するので
 静かにして下さいね。
 タカシさんの笑い声、庭の向こうでも
 響いてくるので。

 あぁ~……まだちょっとしか 
 見てなかったのにぃ~……

がっくりと肩を落としていると、
既に靴を履いて庭に降りていたチカが、
ちらり、とこちらを振り返って。

 タカシさん、
 もう必要ないでしょ。

ぽかん、と口を開けている間に、チカは
ぱたぱたと駆け去っていった。

まったく、最近の若い者ときたら。

……お兄ちゃん、完敗です。 

その1:女子高生の落とし方

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