false or true
























行ってきまーす。

行ってらっしゃーい。

明日菜

全然気づかないものねぇ…。
まぁ本人だから当然といえば当然だけど。

明日菜

さぁて、好き勝手やるぞー!























佳子

うぅ……

佳子

いつの間にか意識が飛んでいたみたい…。

佳子

いったい今何時くらいかしら?

佳子

もう一人の私…明日菜だっけ。
今何をしているんだろう?

佳子

あれ、なんか明るくなってきた……?






















佳子

ここは……






見覚えのある景色が



ぼんやりと見え始めてきた。





佳子

大地のマンションだ!







視界は次第に大地のマンションへと


近づいていく。







すると、マンションの入口に立つ


大地が見えてきた。








私達が毎日いっしょに登校するための


待ち合わせ場所。






それが大地のマンションの入り口。






大地

……







大地は難しい顔をしながら


スマホを操作しているみたい。





明日菜

昨日からずっとスマホの電源切りっぱなしだから、気が気でないんじゃない?




明日菜の声が聞こえてきた。






ひどい……。



大地はずっと私に


連絡をしてたかもしれないじゃない……。



明日菜

うるさいなぁ、出てこないでよ、佳子。
アタシは1人の時間が欲しいんだよ。

スマホなんか持ってたら、周りに振り回されちゃうじゃん。

大地

!!!




大地がこっちを見た。






……私に気づいた…?



明日菜

あんたじゃないわよ、佳子。

アタシよ、ア・タ・シ。



ねぇ…。




お願いだから、


もう変な事しないで……


明日菜

おかしな事言うのねぇ。
この人生はもう私の人生なの。
アンタにとやかく言われる筋合いはないわ。

明日菜

おとなしく高みの見物でもしてなさい。




そう言うと


明日菜はマンションの


入口の方へと向かっていった。











明日菜、



大地に何を言う気だろう。



気が気でならない。











マンションの入口手前まで来た時



大地の方から



私に話しかけてきた。


大地

おはよう、佳子。


おはよ、だいちぃ!

大地

電話もメッセもつながらないから心配したよ、佳子。



……ごめんね…。

大地

ホント、昨日はゴメン。
俺、気が利かなくて……。




大地が謝る必要なんて無いよ!


悪いのはこっち……。


明日菜のせいで……。






いくら私が声を出しても


大地には聞こえない。




それどころか…。



明日菜

すっ……。





事もあろうに


明日菜は大地に目もくれず


ただ素通りした。








まるで何も存在しないかのように。





大地

……佳…子…。




あっけにとられて


身動きできない大地。





明日菜は構わずどんどん歩いて行く。







やめて…


やめてよぉ……





なんで大地に


そんなひどいことするの……?

明日菜

なんでって…。
アタシには関係ないからだよ。

だいたいアタシは明日菜だっつーの。

明日菜

呼ばれたのは私じゃないんだから、
仕方ないじゃない。

明日菜

ふふふ……。
アタシがアンタのスマホを
勝手に触らないのは
アタシなりの優しさなんだよ?

感謝してよねぇ。




じゃあ、せめて


人違いですよの一言ぐらい


言ったらどうなの……?



明日菜

ばーか。

明日菜

アタシはアンタも嫌いだけど、
アイツも嫌いなんだよ。

明日菜

男のくせに下手に出まくりやがって。
あんな根性なしは虫酸が走るわ。
















――たとえ……











たとえ別の人格だとしても。








同じ1人の人間に対して



ここまで違う感情を



持つものなのだろうか…。












敵意を持って接して来てるわけでもなく






むしろ好意的に接してくる人間に対して…。
















私は怒りを通りすぎて


哀れみのような感情を感じて


思わず言ってしまった。



佳子

大地の優しさがわからないなんて…。

寂しい人ね。
明日菜。






明日菜

ぷちん!




一息置いた後、






明日菜は低い声で






一言だけ言った。

明日菜

きえろ。
























その一言と共に














私の光は消えてしまった。





















つづく

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