帆立深雪

あれー? あそこにいるの茜じゃない?

黒沼風子

ホントだ

鈴石茜

ん……ぁ

鈴石茜

深雪ちゃん……風子ちゃん……

帆立深雪

まーた、しょげた顔で歩いてんのね

黒沼風子

変わんないね

鈴石茜

そ、そう?

帆立深雪

そういや南校の奴から聞いたんだけどー、茜って今生徒会長なんだって?

鈴石茜

あ……うん

黒沼風子

この鈍くさい茜がね

帆立深雪

腹抱えて笑っちゃった

鈴石茜

ま、まあ変だよね。私が生徒会長なんて

黒沼風子

うん、変

帆立深雪

よくやる気になったねーって感じ

帆立深雪

部活とか入ってないの?

鈴石茜

私は、部活とか合わないって分かったから

黒沼風子

言えてる

帆立深雪

ま、茜らしいって感じ

鈴石茜

そう……だよね

黒沼風子

じゃ、私たち行くから

鈴石茜

うん……バイバイ

やっぱり変か……私が生徒会長やるなんて

鈴石茜

で、でも私はあの頃とは違うし……

鈴石茜

仕事だってちゃんとこなせているし……

あいつだって肯定してくれたし。

鈴石茜

だから、大丈夫だし……

教師

お、鈴石じゃないか

鈴石茜

先生!?

教師

どうした? 昼休みにも生徒会室に来るなんて

鈴石茜

あ、ちょっと……やっておきたい作業があって

教師

ほぅ。仕事熱心じゃないか

鈴石茜

ま、まあ……生徒会長ですから

教師

なるほどな。だが仕事熱心なところに言うのもなんだが、これをちょっと見ろ

鈴石茜

一昨日完成させた体験入学用の学校紹介パンフレット……ですね

教師

これな、一応先生たちに回し見てもらったんだが苦情が出てな

鈴石茜

え……

教師

部活動のページ

鈴石茜

これが、何か?

教師

分からんか?

鈴石茜

分かりませんけど……

教師

部活動にはな、生徒の数に偏りがある

教師

一番人数の多い吹奏楽部と一番少ない写真部のスペースを同じ大きさにしてどうする

教師

集めたい生徒の数だって違ってくるんだぞ

鈴石茜

で、でも……

鈴石茜

写真部はこの冊子作りに一番貢献してくれていて……他の人数が少ない部活動だって一生懸命活動しているのは一緒で

鈴石茜

分かりました、作り直します

教師

いや、その必要はない

鈴石茜

教師

あとは先生が手直ししておく。今回は注意だけだ。他の奴にも伝えておけ

鈴石茜

…………はい

教師

それと、全校清掃活動の後のゴミ袋が学外に置きっぱなしで、それがカラスに穴をあけられ散らばっていたと苦情が来た

教師

近隣住民との仲が悪くなったら南校は終わりだ。分かってるんだろうな?

鈴石茜

……それは、生徒会関係なくない?

鈴石茜

はい

教師

あとは、夏休み明けの体育祭の企画を早いうちに進めておくように

教師

生徒に決めてもらう事柄があるなら、どう意見をとるのかを決めて報告することな

教師

これが去年の資料と記入用紙だ

鈴石茜

…………

教師

じゃあよろしくな、生徒会長

鈴石茜

…………はい

鈴石茜

…………

佐島亮

…………

伊納アスナ

…………

鈴石茜

何?

佐島亮

いや、だってなんか酷くないですか?

鈴石茜

別にー、あの先生が理不尽なことっていつものことだし

鈴石茜

とにかく、終わったことはおいといて、体育祭の企画を進めよう

伊納アスナ

強いですね、生徒会長殿は

鈴石茜

ま、伊達に生徒会長やってないってことで

佐島亮

まー、プラスに考えればいいですよね

佐島亮

めんどくさい編集作業は先生が全部承ってくれたってことで

鈴石茜

……うん

佐島亮

鈴石先輩……?

鈴石茜

…………

鈴石茜

そうだね、プラスに考えよう

本当は一番嫌だったんだけどね

自分が一番得意だと思っていたことを否定されたら

何に自信を持てばいい……?

佐島亮

にしても体育祭なんてずっと後のことを考えなきゃいけないなんてー

伊納アスナ

面倒くさいことこのうえないです。アスナ、帰ります

鈴石茜

おい待てサボり魔!

鈴石茜

まったく、大丈夫なのかなこの生徒会……

鈴石茜

…………

私はどうすればいい?

あの鈍くさい茜がねー

よくやるよって感じ?

そんなことない、私だって頑張れば……

頑張れば?

頑張った成果がこれだったら、どうすればいい?

もうやめちゃいたい

ああ、ほら、私はこんなにも心が弱い

すず……し…………い

鈴石せん……い

佐島亮

鈴石先輩!

鈴石茜

あ……

佐島亮

大丈夫ですか?

伊納アスナ

アスナたちの話聞いてますー?

鈴石茜

あ、ああごめん……意識がちょっと、二次元の方に……

佐島亮

まったく……しょうがない人ですね

鈴石茜

さ、佐島くんには言われたくないし!

佐島亮

で、どうします?

伊納アスナ

今日はみんなで帰っちゃおうって話なんですけど

鈴石茜

え……

佐島亮

どうせ今日中にこの資料読むとか無理なんで

伊納アスナ

手分けして読んできましょう

佐島亮

会計関連の資料もありますし……やっと『生徒会会計』の仕事がきましたよ

伊納アスナ

書記の仕事は……うぬ、まだ動くときではなさそうです

鈴石茜

……ありがとう

佐島亮

ってことで、帰りますよー

佐島亮

それともまだやることがあったりします?

鈴石茜

ううん……大丈夫

伊納アスナ

よしキタああああ

伊納アスナ

ってことで、お先しつれいしまーす

鈴石茜

早っ

佐島亮

騒がしい人です

佐島亮

僕らも帰りますか

鈴石茜

……あの

佐島亮

どうしました?

鈴石茜

前、『なんかあったら言ってください』みたいなこと言ってたよね

佐島亮

ん……ああ、言いましたね

鈴石茜

あの、さ

少しだけ、愚痴を言ってもいいかな

続く。

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