この国に新政府が樹立され幾許かの時が流れた。







壊滅してしまったかつての首都に変わり新首都が制定された。厳しい内乱の末、比較的放射能汚染の少ない場所に作られた未成熟なメトロポリス。ある種いびつでエキセントリックな様相を呈したその街はいつしかネオシティと呼ばれた。





人口一千万人、二十一の居住区で構成されている新首都ネオシティは、事実上この国最大の都市になった。
この国は友愛党の一党独裁制の下でネオシティを中心とした都市国家としての再出発を果たしたのだった。






復興作業は新政府の主導により急ピッチで進められた。それによりネオシティは飛躍的に発展し数年後、中心部や都心には高層ビルが建ち並ぶまでになった。






ネオシティは、この国なかで唯一華やかな賑わいを見せる市民都市として、外部で暮らす人々の憧れの都となった。この街に暮らす友愛党員には手厚い保証があり、それ以外の市民にも政府によって最低限の生活が保証された。








しかしネオシティ外部には自給自足で暮らす多くの貧しい国民が住んでいる。
そこでは最悪の経済状況のなか、食料も著しく不足、栄養失調どころか、餓死者で溢れる有り様であった。

満足な食糧が無ければ人口は養えない。今や全ての国民に行き渡る食糧はこの国に残されてはいなかった。

政府は外の土地に住む国民の悲痛な叫びを無視して首都ネオシティ一極集中体制を貫いた。
最高権力者であるカモガミはネオシティ以外に住む国民を非情にも切り捨てたのだった。

抑圧的な政府の不平等政策に当然外の土地に住む国民の怒りは爆発、暴動が頻発した。
そして友愛党のある有力議員が反政府のテロリストに暗殺された。

それ事件を機にしてカモガミはネオシティ以外の土地を放射能汚染地区と指定した。

汚染地区に暮らす者には一切の行政サービスは行わないという極端な差別政策を施行したのだった。

ネオシティには暴徒による攻撃を防ぐため周囲に高さ約八メートルに及ぶ厳重な要塞壁が張り巡らされた。

これによりネオシティは外部と完全に分断され人々の自由な行き来は実質不可能になった。

東西には外部とつながる二つのゲートが存在した。

そこにはそれぞれ武装した政府軍のゲートキーパーが二十四時間体制で監視している。

『射殺許可法』が制定されて以降、外部からゲートに近づく者は不法侵入者として即座に射殺された。





それでもネオシティを目指すものは年間に数千人を数えた。









突然乾いた銃声が響いた。


西ゲート前にたむろしていた数人の男達が散り散りに逃げ出した。


ゲートキーパー兵

畜生、外れやがった


望楼の上で兵士が悔しそうに呟いた。

ゲートキーパー兵

下手くそが


もう一人の兵士が楽しそうに笑った。

ゲートキーパー兵

うるさい、今度は仕留めてやるぞ



撃ち損じた兵士は悔しそうにそう言うとつばを吐いて顔を背けた。







望楼の上から眺めるとゲートの外側には幅の広い道路が西に向かって真っ直ぐに伸びていた。


道路は壁門の手前で分かれていて分岐した道路は物資運搬車両用の地下通路に続いている。


通路はネオシティに搬入される物資を積載したトラックだけが通行を許可されていた。

今の時間は完全に封鎖されていて通行する車両は今は一台もいない。

西に伸びる道路の両側には人工的に植林された森が広がっている。

樹々は錆びた鉄のように赤茶けた枝葉を広げ汚染し荒廃した地表を覆い尽くしていた。

赤い樹林が果てしなく続く光景は異様であったが、錆びついた森は一種神秘的な美しさを放ち見るものを圧倒した。














ゲートキーパー兵

今夜はやけに多いな

ゲートキーパー兵

ああ、そうだな。くそ忌々しい奴らだ全く

ゲートキーパー兵

これで明日の昼飯はお前のおごりだからな

ゲートキーパー兵

まだ交代まで時間がある。逆転してやるからな







新首都ネオシティは世界各国から友愛党カモガミが作り上げた完全なる要塞都市として認識されていた。
ネオシティの中心であり行政区の中央区には復興のシンボルとしてフレンドシップスクエアと呼ばれる広場が建設された。


フレンドシップスクエアでは、毎年立党記念日に、友愛党の党大会と盛大な軍事パレードが開催される。
十万人規模のこの大会は、世界に向けて友愛党員の結束と繁栄を見せつけるための一大プロパガンダとなっていた。


世界から見捨てられたこの国で……。












22 その街はネオシティ

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