エミコ

ヒラヤマの兄貴何やってるんだろ、とっとと、さらっちゃえばいいのに


ワンボックスカーの助手席、少女が退屈そうに前方のやりとりを見ている。


ユキオ

うるさい、オメーは黙ってろ!

運転席の青年がいう。

エミコ

ああいう家族見てると超マジムカツク!

ユキオ

へっ、お前相当親にやられたな?

エミコ

うん、ウチの親は最低だったよ、二人とも超ギャクタイ親、でも、うちらはみんなそうじゃない? ユキオは違うの?

ユキオ

俺んとこは実はそうでもない。お袋の事は嫌いじゃなかった

エミコ

なーんだ、ユキオは可愛がられて育ったんだ?今でもママのおっぱい吸ちゃってるんじゃね?

ユキオ

そんなわきゃねーだろ! ただ嫌いじゃないってだけだ

エミコ

ったくメンドクセーな。じゃあ、なんでこんな事やってんのさ?

ユキオ

そりゃあ、俺は頭良くないし真面目にやってもろくな人生にならないからに決まってるだろ

エミコ

それでヤクザになっていい暮らしがしたいわけ? 超ウケるー甘いわ、そんなん

ユキオ

うるせー、黙れ!

エミコ

ヒラヤマの兄貴ってユキオも言うけど、年変わんないでしょ?

ユキオ

うるさい、アニキは兄貴だ!

エミコ

尊敬してんだ? ヒラヤマの事

ユキオ

呼び捨てにするなって!













エミコ

こないだヒラヤマに犯れたんだ……あたし

ユキオ

いつだ?

エミコ

三日前の夜、マーキーのトイレで、ヒラヤマかなり酒とガンジャで出来上がってて、それで無理やり───

ユキオ

……







エミコ

酷く殴られて、首絞められて、後ろから───マジ殺されるかと思ったよ。おもいっきし腕に噛み付いてやっと逃げたけど、きっと殺すつもりだった、あたしを。アイツ絶対狂ってるよ







ユキオは黙ったまま窓の外を見ている。





空調の効いた車内、ユキオの額から汗がにじむ。





雨が降りだした。




雨粒がフロントガラスを
ポツリ、ポツリと叩いている。






エミコ

───ヒラヤマ殺ってよ、ユキオ










pagetop