また、昨晩人が死んだ。
その通知を受けて慌てて来てみれば、また全員揃っている。
脱力した感じで、殆どの人が一人を見ている。
その一人はへらへら笑っている。
これで誰が死んだか、一目瞭然だった。

静流

またあんたか……
いい加減、懲りるって事を知りなよ

奈々

懲りないぶれない反省しないっ!
昨日も絶好調で死んじゃいましたァッ!

そう。昨晩死んだのはまたこの女だ。
ったく、死なないくせに死ぬにカウントされるとこっちも動けに動けない。
昨晩は様子見に私も徘徊していたのだが……結構早い段階で死亡の通知が届いて、殺しを封じられてしまった。
一応、狙っている相手もいたんだけど……。

静流

で、昨日は誰に殺されたとか、ちゃんと覚えてるんだろうな?

私が進行役にそう問うと、一人の参加者がすっ、と手を挙げた。

半井

その女を昨晩殺したのは俺だ
捜索中に襲われたんでな、自衛の為に戦ったら勢い余って殺してしまった

3番の半井とかいうイケメンのニーチャンだった。
涼し気な顔してなんてこと言ってくれているのか。
つまりお前アレですか、殺人犯ですか?

半井

言い訳はしない
襲われたから殺した、それだけだ
俺は降り掛かる火の粉は切り捨てる主義なのでな

しれっとかっこつけて言ってるけどそれただの人殺しだから。しかも反省とか罪悪感とはまるでなさそう。

半井

まあ……自分から相手に飛びかかって殺しに行くような下衆な真似はしないが
俺は生憎と、殺人狂じゃないんでな

静流

どの口が言うのさ……

右手の中指で眼鏡を直すクールガイは、必要なことはそれだけだと告げて黙った。
言うことはこれ以上ないらしい。
周りが、ビビッたように半井を眺めている。
本人はどこ吹く風でドライフェイスをかましているが。
ああいうタイプって、敵に回すとマジで怖いんだよね……。狙ってたけど、相手変えておこう。

とりあえず大声で殺した殺したっていうのはやめてね……

気を取り直して行くけど、昨日私が占ったのは5番、御手洗さんよ
彼女は村人だったわ

仕切り直すように、占い師の速水さんが出て先導する。
名を呼ばれて、ふわふわした髪型の女の人は顔を上げた。

御手洗

わたしを調べたの……?

ええ
取り敢えずはこれで身の潔白はされたと思って、御手洗さん

御手洗

そっか……なら、いいけど……
正直この空気、馴染めなくて……

5番、御手洗小百合さん、だったっけ。
大学生って最初名乗ってたし……大人しそうなのに、何でこんなところにいるんだろう。
ブタさんといい、御手洗さんといい……。

武田

これで、御手洗のネーチャンは狼じゃねえんだろ?
疑いの目は無くなったんだから、素直に喜べよ
俺ぁ御手洗のネーチャンを疑わねえぜ

近くにいたブタさんが、御手洗さんに励ますように言う。
本当にこの人良い人だなぁ……。
わたしは念の為に、御手洗さんに聞いた。

静流

これでわたしと御手洗さんが身の潔白を証明されたね
一応確認するけど御手洗さんは村人?

御手洗

うん、わたしは村人だよ
能力は擬死っていうよくわかんないのだけど

御手洗さんはそう言った。何事もないように。
その発言に、室内が凍りついた。

静流

……はっ?

武田

おうっ?

えっ?

奈々

あっ……この人……
天然だ……

志田さんがそんなことを呟いた。
きょとんとする御手洗さん。
今この人、自分の能力普通にばらした。
何考えて……あれじゃ何も考えてなかったようだ。

半井

御手洗、能力は明かしてはいけないんだぞ?
そんなことすれば隠れている狼に狙われる

御手洗

そうなの?

……まだ、ここまできてゲームルール理解していない人がいた……。
嘘でしょ?
クールガイが懇切丁寧に説明しているが、御手洗さんはますますキョトンとしている。
ブタさんも加わって、もっと噛み砕いて説明しているが困ったような表情になっている。
ダメだ、この人完璧理解していない!
ってかよく二日も生きていられたよ……。

能力説明
『擬死』

効果
ゲーム中、自分の死亡通知を偽造して全ての参加者に送ることができる。
又は、死亡を回避することができる。
この効果は、ゲーム中どちらかしか使うことができず、一度のみ有効。
この時、無効化の効果を受けない。

保有者
御手洗小百合

御手洗

ああ、成程……そういうことだったのね?

漸く理解したのか、のほほんとした声で御手洗さんは納得していた。
事の重大さ、気付いてない……。

御手洗さん……本当に大丈夫?
能力、思いっきり明かしちゃったけど……
狼に狙われるわよ?

速水さんが心配そうに声をかけるが、能天気に大丈夫と頷く御手洗さん。
うん、間違いなく人まっさきに死ぬタイプだ。

御手洗

きっと、何とかなるんじゃないかな
わたし、まだ生きているし

この異常空間でこそ有り得ない楽観的発言。
その真意は、ぶっちゃけわたしには分からない。
何も考えていないのか、あるいは裏をかこうとしているのか……。

静流

大物だ……あの志田姉よりも……

昨日人の所をフルボッコにしてくれた恐怖の志田姉。
ブックウェポンという武器の新境地を叩き込まれたわたしはあいつを狙うのはやめることにした。
また負けて伸されるのが目に見えている。
今役職が明かされているのはルール違反でわたしをボコッた志田姉とわたし、そして御手洗さん。
そして、占い師の速水さん。
わたしたちは、何れも村人。残りは…8人。
まだ狼も狩人も出ていない。

……追放は……どうする?
誰を追い出す?

気が抜けてしまったわたしたち一同。
やってられないと吐き捨てて、堂賀さんがまた独りで出ていってしまった。
懲りないおっさんだなぁ……。
あいつが狼じゃないの?
占い師の問いに、残った誰もそんな気力が浮かばず、その場で解散することにした。
いい加減、ゲーム進めようよとわたしは思った……。

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