ハルトは無言で目を伏せる。
ところでどう、お袋さんは見つかりそう?
そうねぇ…… なかなか難しいよ。まるで手掛かりが無いから
だよな、別れてからずいぶん経ってるから……顔だって変わってるだろうしね。ハルだってもう子供の頃とは全然違ってるだろうからね
うん、そだね。もうだんだん記憶が曖昧になってきてるんだ……
やっぱり、壁の外にいると思う?
うん、昔あっち側に住んでたからね
そか、壁の外じゃあ、俺達は自由に行き来はできないからね
もう死んじゃってるかもね。もし生きていたとしてもはそんなに長くはないだろうし
そんなことないよ! 絶対どっかで生きてるって、きっとお袋さんもハルに会いたがってるよ
だといいけど
……でもさあ、なんでお袋さん、ハル残していなくなっちゃったんだろうな?
……
ハルトは無言で目を伏せる。
ああ……ごめん、ハル
いや、いいよ
あの頃はまだ革命の後のどさくさで大変だったもんな、きっとハルのお袋さんもいろいろな事情があって、ハルを安全な児童施設に預けたんだろうな