そして、またしても今日、余の命は彼女によって救われた!

これを裏切り者だと、誰が言えようか!! 彼女は我国の誇りだ! 英雄だ!!

 王の話を聞き、民衆は歓声を上げた。

そんなことになってたのか……クレアのやつ……

クレアよ、今まで辛い想いをさせてすまなかった。グラン王国には余が交渉するゆえ、また戻ってきて我が国に仕えてくれないだろうか?

無理

そうか! 戻って来てくれるか! よかっ

って、ええー!?

拓様に仕えます

誰よ!?

 クレアは僕の傍へ寄る。

拓様……しゃがんで?

え?

 僕はクレアの前でしゃがみこむ。

 僕の頬に両手をそっと添えるクレア。

 クレアは僕にキスをした。

えっ!? ちょ、クレアさん!?

……いや?

 頬を赤く染めながら小首を傾げるクレア。

いやとかないです! 最高っす!

○×△☆♯♭●□▲★※!?

にゃ(やるじゃない。クズ虫の死骸である貴方が、他人を守るとか)

もう生きてさえない!

 しかしお姫様抱っこか。

 轢かれた黒猫を抱くように持っただけだなんて、今更言えないな……。




 こうしてギルドバトルは幕を閉じた。


——帰り道。

 話は黒の魔術師の事になる。

なんでギルドバトルなんかに参加してたのかなー

とりあえず、ソージとかいったガキが目を覚ましたら、問いつめっぞ!

 ソージはあれからまだ意識を失ったままだ。
 ヒーチが医務室へ連れていってくれたらしい。

うち、このあと様子見てくるねー!

エメ……

 そういやレオン、あの狼竜に見覚えがある様子だったな。

レオン、何か思い出した?

わかんない……

そっか、無理するなよ

 そこへ、ロイ達が追いかけてきた。

待ってくれ!

ロイ

これからも俺たちと手を組まないか? 同盟ギルドとして

やだ

やだってお前!

うちのギルドに入るならいいぜ!

花鳥風月は歴史あるギルドだぞ!?

知らねーよ! みんなまとめて入っちまえよ!

そんな! うちは今、四十二人もいるんすよ!?

ロイが引っ張ってるメンバーなら、きっとみんな良い奴らなんだろ!

ま、まあ、そうっすけど……

……わかった

ちょ、師匠!?

だって、クレアを取り返したいんだもん

だもんって……女ならボクがいるじゃないですかー

俺の心はクレアのものなんだよ

その私は拓様のもの

じゃあ俺のものだな!

出た、シンのジャイアニズム

でも、俺がプロポーズって話のとき、クレアだいぶ顔赤くしてたよな! 少しは脈ありだろ?

なにそれ? お姫様抱っこの衝撃で忘れた

ぐふっ

ああ、なんかすみません……

俺は獅子奮迅に入る!

わかったすよ……みんなにうまいこと話しとくっす……

 こうして、花鳥風月は獅子奮迅に吸収合併され、獅子奮迅は総勢四十九名のギルドとなった。

うはあ、最高だな!! ついでに基地もよこせな!

よこせって……

ちくしょー、覚えてろっすよー!

シン……人のこと言えないけど、相当コミュニケーション方法間違ってるよね!

 こう、キャッチボールしててもマイペースに剛速球投げてくるタイプ。

 こんなんでマスターやっていけるんですかね。

 そこへレオンがロイに声をかける。

ロイさん、このへんでは狼竜をよく見かけるの?

いや? めったに見ねーぞ

そういやこの子、狼竜だったんすね

あ、でも北の島に獣人族の村があるって聞いたことが

獣人族!?

レオンくんの故郷かもしれないね

行ってみたい!

ケモ耳いっぱいいたら、シェリー大喜びしそうだね

……

シェリー?

あ、ごめんなさい、何でしたっけ?

シェリーもしかしてどっか怪我した?

いえ、大丈夫よ。ありがとう

ただ……今回、あたしだけ何もできなかったなーって

そんなことないよ! モンスターやっつけてくれてたし!

レオンたん……ありがとね

そうだぞ! そんなこと言ったら、拓雄のほうが顔以外いいとこないじゃねーか!

どもー

じゃあまずは、近いうちに獣人族の村へ行ってみっか!

ああ。ただソージってやつが目覚めるまで待ってくれ。先に黒の魔術師のことを聞き出したい

 こうして僕たちは、次の目的地を決めた。

ちょっとラファエル様

にゃ(なによ)

 僕はラファエルを路地裏へ連れていく。

黒の魔術師のことなんだけど

貴方に当たればよかったのに

そのことなんですけど……あいつ、ラファエル様をピンポイントで狙ってませんでした?

そう? 私の強さが分かったのかしら

でも、魔法とか使う前に狙われてましたよね?

あれはやはり豚を狙ったんじゃないの? ちなみに豚とは

僕ですよね!

ま、気のせいでしょう。私が狙われる所以など、これっぽっちもないのだから

だといいんだけど……

貴方を焼き豚にしたくなる気持ちは分かるけれどもね

ひいっ

 こうして、黒の魔術師の真意もわからぬまま、日は沈んでいった……。

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