マスター

いらっしゃい……。おおー久しぶりだねぇ!



仏頂面で仕込みをしていたマスター、ハルトの顔を見ると笑顔になった。

マスター

どうよ、調子は?



カウンターの中の椅子に腰掛けながらマスターはいった。

ハルト

別に変わった事はないよ。マスターの方はどう、忙しい?



この居住区の中心部に当たる東和町にある東和食堂、ハルトはこの店の常連であった。




店のカウンター席の一番奥に腰掛けながらハルトは携帯電話を取り出した。



着信の履歴も新着メールの表示もなかった。

マスター

おかげさまでって、言いてえとこだけど。相変わらず暇よ、実を言うと今日はハルが初めてのお客。そろそろこの店も潮時かな



マスターは頭に巻いたバンダナをとりながら立ち上がった。

マスター

最近ご無沙汰だったけど元気にしてたの? うちのカミさんも心配してたよ



ハルト

うん、最近なんだか疲れ気味で何をするにも億劫になっちゃってね。何かやっぱ少しづつ内臓が腐ってきてるのかな



マスター

あはは、ハルはまだ若いから大丈夫! オレはもう歳だからあちこちガタが来てるはずだけどね。でもまあ、なんとか全然大丈夫よ。いまのとこ元気



ハルト

マスターは、子供たちの為にまだまだがんばらなきゃね。ところでレイコさんは元気にしてるの?



マスター

最近蒸し暑いからね。実はオレもちょっとダルくて参ってる。レイコは元気にしてるよ。今は子供たちと出かけてる。
リカのクラスの友達の誕生会かなんかでユウジも呼ばれてね、一緒に。ほら駅の向こうにでかいマンションあるじゃない、あそこまで





ハルト

大丈夫? ほら、最近なんだか物騒じゃん。昨夜だって



マスター

ああ、例の絞殺魔……。大丈夫、今日は木曜日だし。それに二人も子ども連れてちゃあ、さすがに犯人も襲えないよ



ハルト

そうだね


ハルトは笑った。

ハルト

リカとユウジともしばらく会ってないね、どうしてる最近は?



マスター

うん、まあ元気に学校通ってるよ。最近リカのほうは生意気になってね。レイコも大変みたい。オレはここで毎晩遊んでるけど

ハルト

そっか、でもマスターは偉いよ。子供育ててるから、二人もね

マスター

あはは、でもいつ放り出すかわかんないよ。この店ももうヤバイもん、閑古鳥が鳴いてるよ



マスターは笑いながらプレイヤーにCDをセットした。


マスター

いつものでいい?



ハルト

うん、いいよ。なんか急にお腹減ってね。あ、先にビールね



マスター

あいよ!







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