シンの目が群青になる。
　バーサクモードだ。

　斧を握る手にも、静脈が立って見える。

　禍々しいオーラを放つ黒い魔女は、冷たい瞳でそう呟いた。

　魔女の作り出した魔法陣より、地から沸くごとく巨人が出現した。

　ヒーチは周りを見渡し、状況判断に努める。

　地震にあったように足を震わせるシェリー。
　そりゃ普通なら怖くて当然な反応だろう。

　ゴーレムがシェリーの目の前の噴水を砕く。

　その一撃は、噴水の原型を留めないほどの破壊力。

　シェリーは尻もちをつく。

　足がすくんで動けないようだ。

　シェリーの手をとるヒーチ。

　身を屈めながら逃げる二人。

　クレアは、まず守るべきは狙われし王と判断し、イルラン国王をバリアで包んだ。

　手に血が滲みそうな程、強く斧を握るシン。

　魔女に向かって獣のような前傾姿勢で走り出す。

　そこへソージが疾風のように現れ、立ちはだかった。

　ソージの気迫が壁を作ったかのようにシンを立ち止まらせ、対峙する二人。

　斧とこん棒のぶつかり合いに、まわりの空気まで振動しているのがわかる。

　そこへクレアが付与魔法を唱える。

　シンの斧は光を纏った。

　シンは腰を落とし、重心を調整して技を放つ。

　シンは、光斧を降り下ろした。

　ソージは吹き飛ばされ、城壁に叩きつけられた。


　持っていたこん棒は宙を舞い、ズサンと地面に突き刺さる。

　メリメリと壁から崩れるように倒れこむソージ。
　動きはない。
　意識を失ったようだ。

　一方の魔女は……

　ロイ達が魔銃で応戦していた。
　魔女に向けて発砲する花鳥風月。

　防御魔法で銃弾をはじく魔女。

　そこへクレアは光魔法を放った。

　魔女の脇腹に光線が突き刺さる。

　獣のような殺気を纏い、身体を荒々しく震わせる。

　黒の魔術師はフードを被り、空へと手をかざした。

　そこへ狼竜が飛んで来た。

　レオンより一回りほど小さい狼竜。

　魔術師目掛けて跳ねるように飛び出すシン。

　シンの体が宙に浮く。

　そして地面へと叩きつけられた。

　地響きを打って仰向けで倒れこむシン。

　その隙に魔術師は、狼竜に飛び乗った。

　飛び出すレオン。

　肩で息をしながら必死に立ち上がろうとするシンだが、膝から崩れ落ちていく。

　ヒーチがかけより、シンの肩を両手でぐっと支える。

　だが黒の魔術師と狼竜は、風に吹かれた木の葉のようにうまく銃弾を避けながら逃げ去っていった……。

　ヒーチに支えられながら、痛みと怒りで震える体を自分で押さえつけるシン。

　その後、ソージは捕らえられ、激しい戦闘の幕が閉じた。

　民衆には奇跡的にも被害がなかった。
　ラファエルも気を失っていただけで、しばらくして目を覚ました。
　目立った外傷はない。


　しかし、混乱はすぐには収まらない。
　子供の泣き声や、錯乱した者の奇声。

　王が再び壇上にのぼり、そう叫ぶ。

　静まり返る民衆。

　王はクレアに声をかけた。

　ざわつく民衆。