* * *
- 港町ポルト -
* * *
いい天気だ。
もふー
一応、渡守さんいるか確認確認……
今日も舟着場へ向かう勇者様。
…ですが
やっぱり、いない
舟着場はもぬけの殻でした。
張り紙の通り、舟を借りる勇者様。
なんとなく断りを入れます。
借りますよー。
よっと。
渡し舟に荷物を載せて、
停泊所のロープを解き、
もふもふさんと共に舟に乗り込みます。
しゅっぱーつ!
もふー!
掛け声とともに
櫓を漕ぐ勇者様。
ナゲー運河を
反対岸へと渡る船旅です。
猛る海神
* * *
- 港町ズール -
* * *
港町ズールでは
定期船出港の準備で大賑わいです。
シーラさんたちも
宿屋をでて定期船へと乗り込みます。
さあ、急げ急げー。
乗り遅れんようにせんとな。
待ってくださーい!
キャッ!
シーラ様!
慌てて船に乗り込もうとした
シーラさん。
甲板で他の乗船客と
ぶつかってしましました。
駆け込み乗船は危険です。
おっと、失礼。
いえ、こちらこそ、すみません。
どうかしたか?シーラ。
他のお客さんとぶつかっちゃって…。
シーラは案外
おっちょこちょいだなー。
今朝だっておみやげで
手荷物が一杯になって
全然出発できなかったもんな。
ポメラ、その話はもうしないでー。
僕が頑張って
大王うなぎの骨せんべいを食べて
シーラ様の役に立てました。
もう、ライルも許してー。
無事出航前に定期船に乗り込めた
シーラ様御一行。
間もなくお陽さまは
山のてっぺんより顔を出します。
よーし、出港の時間だ!
錨を上げろー!
帆を広げろー!
船乗りたちの大声の中、
定期船は岸を離れました。
うわぁ〜
シーラさんは船室からでて
1人で甲板へ出ていました。
空は青く晴れ上がり、
心地よい潮風は顔をなでます。
私、帆船って初めて……。
風が気持ち良いわ。
風にあたりながら海原を眺めるシーラさん
そこへ、一つの影が近づきます。
おや?
あら?
この人は乗船の時に
ぶつかってしまった人です。
先ほどは失礼しました。
いえ、こちらこそ
本当にすみませんでした。
乗船の時にはわかりませんでしたが、
声を聞く限り男の人のようです。
お一人ですか?
いえ、船室に仲間がおります。
そうですか。
それでは、良い船旅を。
スッ……
というと、フードを被った男の人は
船首の方へと歩いて行きました。
フードをずっとかぶっていて
鬱陶しくないのかしら。
よっ。昨夜は寝れたか?
船室から出て来たポメラさんが
潮風に当たるシーラさんに声をかけました。
もちろん!一昨日の夜の野宿はよく寝れなかったけどね。
そいつぁ良かった。
ソルフェさんも
続くように船室から出て来ました。
その手にはポメラさんの
大きな斧を持って。
ポメラ、四精の斧にサラマンダを媒介しておいたぞ。
私がやったんだよー☆。
ぽいっと戦斧をなげるソルフェさん。
ほいっと受け取るポメラさん。
ありがとな、ソルフェちゃん。
まるでおもちゃのやり取りを
するかのような光景に
シーラさんは驚きです。
その斧、重くないんですか?
ん?あぁ。
この程度の重さはわけない。
それより……。
ソルフェさんは進行方向の空を
仰ぎ見ます。
ふぅむ。
一見いい天気のように見えるが…。
進行方向は雲行きが怪しいな……。
荒れるかもしれんぞ。
えー……。
全くそんな気配、わかりませんでした。
その時です!
ヒィィィ!あの雲は!
あの船員さんが
また恐れおののき始めました。
どうした?
見てくれ、積乱雲が二つ並んでいる!
それがどうしたのですか?
もうほんとおまいさんらは何も知らねぇんだな……
いいか、積乱雲が二つ並んだら、必ず食料が足りなくなるって決まってんだ!
船旅での食糧不足は洒落にならねぇ。
血で血を洗う航海になっちまうぜ……。
オラァ不安で一人でトイレさも行けねぇだ。
そう言うと臆病な船員さんは
船室へと入ってしまいました。
食糧不足の話はともかく……感じるな…。
この感じ、テリブルミストの時と似てます。何かいますね。
お、飲み込みがいいねぇ。
突如、積乱雲の間に竜巻が現れました。
竜巻はみるみるうちに海水を
空へと巻き上げます。
巻き上げられた海水は
陽の光を奪い
にわかに暗くなります。
竜巻はその力を次第に失い
中から何かが見えてきました。
来るぞ!
【ヒッポカンポス】
ヒッポカンポスが現れた!
ひぃぃぃ!
海神様だぁ!!
海神様はしばらくこちらを
ジーっと眺めた後、
おもむろに高く上げた前足を
海面に叩きつけます。
すると、海は
柔らかいクッションのように歪み
高波を作って
定期船へと襲いかかります。
やめてくれー!転覆しちまう!
うお!あの波はやべぇ!!!
くっ!間に合うか?
波には逆の波
これね!
シーラさんは海神様と逆の方向を向き
召喚の構えです。
堅く重きその体。
的を射貫く矢の如く。
天よりその身を降りそそげ!
いでよ、ヘビーマテリアル!
ヘビーマテリアルさん達を
海へと落とすシーラさん。
波のエネルギーを打ち消す様に
逆の位相の波を作り出します。
するとどうでしょう。
船の位置では波が干渉して
ほとんど揺れません。
そして、船の位置を過ぎたあたりから
再び大きな波が現れて去って行きました。
タイミングを間違えれば、
倍の波となるというのに…。
…なんという豪胆。
ふぅ、第一波はシーラのおかげで
なんとかなったな。
さて、どうする、リーダー。
他にも乗客がいます。被害の無いように何としてでも海神を止めましょう。
うむ。
そうこなくっちゃ!
……ただ……
ただ?
なるべくなら、海神さんも傷付けないようにしてあげてください。
ポメラさんとソルフェさんは
顔を見合わせます。
……ふふっ。
こんな時にもまぁ。
わっはっは……。
全くそっくりだな。
何が……ですか?
大丈夫、その要求はなれておる。
ああ、いつもの事だな。
【ヒッポカンポス】
何事もなかった船を
じっと見ていた海神様。
気を悪くしたのでしょうか?
再び前足を持ち上げ始めます。
おっと、そうこうしているうちに洒落にならない状況だ。
すべき事は水棲生物の動きを
止めるという事だ。
……だな。
ポメラさんは手に持っていた斧の
リングを回して
水の紋章へと合わせます。
いくぜ、ソルフェ!
うむ、既に先ほど準備済だ。
ソルフェさんの手には
青い炎の玉のような物が
ゆらゆらと揺らめいています。
…そして
マテリアル・アブソリュートゼロ!
と唱えながら
ソルフェさんが船首上方へと
青い炎を投げ上げます。
それと呼応するように
選手へと猛ダッシュする
ポメラさん。
バン、と床を踏み切って
空中へと飛び上がり
青く光る斧を大きく振りかぶりながら
青い炎の方へ突っ込みます。
そして、そのまま斧を
と振り下ろし、
斧の腹で青い炎を叩きつけます。
オラァ!
槌技:
アイスハンマー・
スクワッシュ!!
物理的なエネルギーを得た青い炎は
海神の足元の海面へと
一直線に飛んでいきます。
物魔合体技!
アイス!!
エイジ!!
青い炎が海面にぶつかると
その推進方向の放射線状を
一瞬にして凍結させます。
さながら、船の前面に氷の壁が
出来上がったかのようです。
ヒッポカンポスを倒した!
レベルが上った!
レベルが上った!
レベルが上った!
レベルが上った!
すごい……
世界全体が凍りついたみたい……
ちょいとタイミングがずれたな…。
船上だ。仕方あるまい。
海神様を凍らせちゃったんですか?
いや、海神の場所を中心に絶対零度領域を作って、海神の活動を著しく低下させた。海神自体は凍っていないが冬眠状態の様になっている。
人間なんかにやったら低体温症で死んじまうがな。
氷柱のように海神様を囲んだ氷以外は
あっという間に陽の光で溶けてしまいました。
舵を切れー!
氷柱を避けるぞー!
海神様はよっぽど大きくて
遠くにいたのでしょう。
定期船は難なく氷柱を避けて
航海を続けます。
シーラさん達の航海は
まだまだ始まったばかりです。
まったく、アイツ船員のくせに
言い伝えにビクビクして、
挙句の果てに乗客をほっぽって
1人で隠れやがって…。
まぁ、いつもの事か……。
- 船首付近 -
あーあ、せっかく捕まえたのに
やられちゃった。
ヒッポカンポスを苦も無く退けるとは。
……やるね……相変わらず……。
それにしてもあの娘、厄介だねぇ。
無描陣なんて初めて見たよ。
……憎たらしい……。
つづく
【勇者勇の装備】
レベル :11
めいせい :217
ぶき :新品の短剣
よろい :鋼鉄のよろい
かぶと :銀の額当て
たて :なし
どうぐ :野ばらのペンダント
焼豚×2
焼きとり×3
淡水ザメの煮凝り
淡水ザメの骨
淡水ザメの牙
いつもの額当て
なかま :もふもふ
とくぎ :ファイアブレス、釣り
じょうたい:川渡り中
【シーラの装備】
レベル :11
めいせい :130
ぶき :いつもの本
よろい :いつもの服
かぶと :いつもの飾り
たて :なし
どうぐ :やくそう×95
イーサ薬×9
乗船券×4
おみやげ×99
なかま :戦士ポメラ
大魔導ソルフェージュ
コボルト
とくぎ :しょうかん、値切り、冷やかし
じょうたい:パーティーリーダー、航海中