* * *

- 港町ズール -

* * *









商店街の通りを行くシーラさんとライルさん。

シーラ

アルザレアの城下町とは全然品揃えが違うのねー。

ライル

そうですね、シーラ様。
特にアルザレアと違って
港が近いので
魚介類が豊富ですね。

シーラ

お魚はどんなのがあるのかしら…。



鮮魚屋さんのおじさんが


シーラさんに声をかけます。

街人C

ぇいっらっしゃい!

シーラ

えーと、ここの名産品は何かしら?

街人C

おっ、よく聞いてくれたね!
ズール名物の大王うなぎの蒲焼き、これは一度食ったらやめられないよー!

シーラ

蒲焼き……。鮮魚じゃないのね……。

街人C

活きた大王うなぎもいるけど、
捌くの難しいよー?



と言いながら、


店の奥のいけすを指す店のおじさん。



一部屋分はあろう大きさのいけすですが、


中の魚はひどく暴れて


まるで戦争が起こったかのよう。

シーラ

すごく活きがいいわね!

街人C

どうする?お嬢ちゃん?

シーラ

お嬢……。

やだー!
おじさんったら上手なんだから!

ライル

……。

街人C

体長3m、胴回り0.8mのちょいと小ぶりの大王うなぎだが、まぁ一般には食べでは十分だな。

シーラ

すごーい、そんなに大きいのね。

街人C

薬草なら20個、イーサ薬なら2個……。

シーラ

結構するのね……

街人C

……と言いたいところだが今日は特別だ!お嬢ちゃんなら、薬草10個かイーサ薬1個で売っちゃおう!

シーラ

ええ!?
そんなに値引いてくれるの?

街人C

ああ、お嬢ちゃんとおじさんの仲だ!
他のお客さんには内緒だぜ!

シーラ

でも、今日は買い物しないからまた今度にするわ。

街人C

え……。

シーラ

おじさん、ありがとうございます。

ライル

……流石です……。



鮮魚屋さんを離れ、道を行きつつ


1人物思いに耽るシーラさん。

シーラ

イサムくん、大王うなぎ好きかな……。


二人共無事におうちに帰れたら、


大王うなぎの蒲焼きを作ってみよう、


そう考えるシーラさんでした。













待ち惚けの
フィッシャーマン










* * *

- 港町ポルト -

* * *





勇者

さて、今日は居るかな?



一夜明けて宿屋を出る勇者様。


渡守さんが帰ってきてることを期待しながら


舟着場へと向かいます。 …が

勇者

いない



舟着場はもぬけの殻でした。

勇者

特に街の中でしたい事も無いし、
ボーっとするのももったいないし……

もふぅ

勇者

ここで釣りしながら待ってみようかな。

勇者

今日一日来なかったら、張り紙通り、舟を勝手に借りるとしよう。

勇者

さて、今日の昼ごはんを捕るぞー!

もふー

勇者

えーと、まず釣り糸だな……。




そう言いながら、


勇者様は岸辺を歩きつつ


地面を見渡します。





すると、都合よく糸と釣り針が


落ちているではありませんか!


勇者

いた!日向ぼっこ中のツリイトミミズ!

【ツリイトミミズ】



勇者様が釣り糸を持ち上げると


うねうねと動き出しました。


どうやらこれは生き物のようです。

勇者

尻尾の先が針状になってて、こんな細いのに丈夫だから、釣りには便利なんだよな。



勇者様はそう言いながら


頭の方を持ち上げます。




よく見ると小さな口と


牙のようなものがあります。

勇者

あとは……あったあった。
捨てられた錆びた剣。

不法投棄された錆びた剣

勇者

コイツを剣の鍔に引っ掛けて、
切っ先を通して……



拾った錆剣に


ツリイトミミズを器用に


取り付ける勇者様


勇者

水面に垂らして、と。



ツリイトミミズをつけた剣の柄を握り


川へと差し出します。







すると、ツリイトミミズは



水の中へ逃げようとして、



体をどんどん伸ばします。



しかし、頭の方は鍔に引っ掛けられて


逃げることはできません。






そうこうしているうちに、



と、簡易釣り竿に手応えがあります。

勇者

来た!

勇者

なかなかの大物だぞ!

【淡水ザメ】

  淡水ザメが現れた!  

勇者

うっひょー!
でかーい!

もふー!




再び水面に潜った淡水ザメは


ゆらりゆらりと


水面付近を旋回したかと思うと

//|
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/  / |



勢い良く勇者様の方へ


突っ込んできました。

勇者

うぉ!危ない!



間一髪、


淡水ザメの咬撃《こうげき》を


かわした勇者様。





淡水ザメの強靭な顎で


護岸がえぐり取られます。


勇者

うへぇ!

すごい威力だ!

がくぶるもふぶる


水面には第二波を狙う


猛魚の影が


ゆらりゆらりとたゆたいます。

勇者

なるべくなら、
小ぶりな魚にしておきたかったけど…。

このレベルの大きさだと
放置していても
街の人に影響が出るな……


波が荒立ち


勇者様の方へと


進み始める水面の影。

勇者

……なら、おいしく頂きます!




腰から短剣を抜き



握る勇者様。





柄を握る手とは逆の手に



刃を添えて


正面で真横に剣を構えます。

勇者

イサム!
スリーピース
スラッシュ!
(Lv7)

/すとん\

勇者

レベルが上った!
レベルが上った!

淡水ザメの切り身を手に入れた!
淡水ザメの皮を手に入れた!
淡水ザメの骨を手に入れた!
淡水ザメの牙を手に入れた!



淡水ザメは綺麗に3枚におろされました。

勇者

合掌!

もふ!

勇者

さて、まずは刺し身にしよう。

もふもふ



勇者様は短剣を器用に使い


淡水ザメの身を


そぎ切りにします。

勇者

刺し身、いっちょ上がり!

もっふー!

淡水ザメの刺し身

勇者

うは、もちもちしてうまい!

もっふー!

勇者

まだ、結構あるな……。
道行く人にも振る舞おう。



勇者様は通りへと出て


淡水ザメの刺し身を振る舞います。

街人E

おお、これはうまい!
いつも養殖場を荒らしている奴が
こんな旨いものに!?

街人D

美味しいわぁ。

悪いイメージしかなかったけど、
食べたらこんなに美味しいのね。
イメージが変わったわ。

勇者

なんか、やくそうを
貰っちゃったな…。

別に良かったのに……。


淡水ザメの刺し身は


街の人にも大好評です。




それでもまだまだ、


切り身と皮があります。

勇者

残りは……。
火を通して煮凝りにしよう。



渡守の小屋から、


鍋を持ち出す勇者様。

勇者

スミマセン、ちょっと借りまーす。

勇者

鍋に水を貼って、
淡水ザメの身と皮を入れて、
あと、貰ったやくそうも入れて、と

勇者

プチファイア(Lv9)!

勇者

淡水ザメの身や皮はアンモニア臭が出てくるから、そのままだと保存には向かないけど火を通せばそれなりに持つ。



ぐつぐつぐつぐつ。

勇者

よーし、ゼラチン質が溶け出したかな?
後は味をつけて冷まして……。



地べたに寝転がる勇者様。



見上げる空は



青々と晴れて



とっても気持ちがいいです。



勇者

くかーくかー

もふーもふー

この世界に時計はありません。

この世界に時計はありません。

勇者

むにゃむにゃ……できたかな?

\てってれー!/

淡水ザメの煮凝り

勇者

淡水ザメの煮凝りー!





煮凝りができる頃には



陽は既に水平線にかかっていました。



勇者

渡守さん、今日も帰ってこなかったな……。

もふぅ……。

勇者

……仕方ない、明日舟を借りて川を渡ろう。






勇者様は朝来た道を帰ります。





得も言えぬ、違和感と


不安感を感じながら……。





























つづく





【勇者勇の装備】
レベル  :11
めいせい :217
ぶき   :新品の短剣
よろい  :鋼鉄のよろい
かぶと  :銀の額当て
たて   :なし
どうぐ  :野ばらのペンダント
      焼豚×2
      焼きとり×3
      淡水ザメの煮凝り
      淡水ザメの骨
      淡水ザメの牙
      いつもの額当て
なかま  :もふもふ
とくぎ  :ファイアブレス、釣り
じょうたい:釣り人

【シーラの装備】
レベル  :7
めいせい :100
ぶき   :いつもの本
よろい  :いつもの服
かぶと  :いつもの飾り
たて   :なし
どうぐ  :やくそう×95
      イーサ薬×9
      乗船券×4
なかま  :戦士ポメラ
      大魔導ソルフェージュ
      コボルト
とくぎ  :しょうかん、値切り、冷やかし
じょうたい:パーティーリーダー

第26話 待ち惚けのフィッシャーマン

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