あら、トントン

どうしたの?
こんなところにいたら風邪をひいてしまうわ

え、ええっと

1日に2回もマドンナに会えるなんて
今日はなんてラッキーな日なんだろう。






こんな幸運、
一生分の運を使い切っちゃったんじゃ
ないだろうか。









……あ、いや、
明日受験だし
使い切っちゃったらマズいんだけど。


でも本当に
そう思うくらい――

き、きみこそどうしたの?
図書館の帰り?

いいえ。
お料理を習っていたの

へぇぇ、女の子らしいね
……って、受験は!?

受験はしないわ

パパが駄目だと言ってるし

……

ああ。

マドンナも僕と一緒で
受験させてもらえないのだろうか。


そりゃ僕とは
理由は全然違うけど





なんともないような
言い方をしてるけど
でも
その口調は
ちょっとだけさびしそうで……

……女の子をひとりで都に出すのが心配なんだよ、きっと

そうね。
そうかもしれないわね

勉強は好きだし、大学だって行ってみたいけれど

でも、意味のない仮定の話をするのが無駄だってこともわかっているわ

そう語るマドンナは
どこか遠くを見ているみたいだった。


きっと
大学進学もそうだけど

都への憧れもあったんだろうな
って思った。

でも、都にはいつか行くから、そんなに気にしてるわけでもないの

パパが言ったわ
女の子はただ勉強するよりも、お役人のところにお嫁に行くほうが幸せだって

だから自分を磨かなくっちゃね

……

それじゃあ僕のところってことだね

ガリ男!!

マドンナ
トントンにそんなこと言うのは無駄なことじゃないのかい?

あら?
でも学校の成績はトントンのほうが上でしょう?

ふっ、受験しないんだろう?
トントンは

……

するよ!

ふん、ろくすっぽ勉強してないのにムリムリ
恥をかくだけさ

……

勉強はできていないけれど

でも、




でも……

でも……

なにごともやってみなくちゃわからないわ

マドンナが、
ぽつりと呟いた。

……

……

それじゃ、頑張ってね

……せいぜい頑張るんだね

……ガリ男……

マドンナが。

お役人のところにお嫁に

成績はトントンのほうが上でしょう?

頑張ってね

それって。

もしかして?

勉強してないのにムリムリ

受験しないんだろう?

受験しねぇんなら、勉強しなくても

キャベツもらって来てね

母さん。

僕は……

pagetop