僕をどうする気ですか!?

なんもしねーよ。まあ、落ち着け

 当の僕は、攫われていた。

クレアさんの幼馴染、ロイさんでしたっけ!

クレアのやつ、助けにくるかな

なんだよそれ! 趣旨違ってんじゃん!

うるさい! お前への愛情が本物か俺が見極めてやるんだよ

はあ? なに言ってんすか?

だから、その婚活ギルドとかゆうのをだな

あのー、ロイさん、勘違いしてますよ?

そうでないと俺はクレアを諦められん!!

あのー

 僕は、今までのいきさつを話した。

はあ!? じゃあクレアの奴、王女の護衛のために参加してるだけってことか?

 婿探しうんぬんの下りは、ややこしくなるから伏せておく。

なんだよ、早く言えよ

言う前に拉致られてたんですけど!

あいつは……クレアはもともと花鳥風月のメンバーだったんだ

そ、そうだったんですか!

ああ。色んな冒険をしたさ。あいつは昔から賢かったからな。いつも戦術を立ててくれたり、ピンチの時でもより良い選択肢を見つけてくれたよ

さすがブレイン……

そんなあいつを、俺が好きにならねーはずがなかった

はあ、知らないっすけど

いつまでたってもかわいいしな

ろりばばあ属性っぽいですが

そしてグラン王国が攻めてきた時も、俺たちは一緒に戦った

え? シェリーの国が?

ああ。好戦的な王だったからな。今は温和な王になっているそうだが

シェリーのお父さんだよね……若かりし頃はシンと似ていたとかいう

俺はあの戦いが終わったらプロポーズしようと思ってた

ごく一般的な死亡フラグですね

だが最後の最後で、あいつはうちのギルドを……イルラン国を裏切って、グラン王のもとへ去った

え? クレアが?

ああ。王に惚れたのか何なのか知らねーが、ひでー話だよ。あいつの賢さは異常だからな。何が得で何が損なのかをいつも考えている、いわば薄情なやつだよ

薄情? そんなことなさそうだけど……

俺たちは勝利目前だったんだよ。だが最後にクレアは敵味方関係なく攻撃した

まじっすか……

そして倒れている俺が戦場で聞いたのは……私を貴方のものにして、って言葉を王に向けて言っている姿だった

それでグラン王国に……

ああ。最後だってよ、私グラン王国の宮廷魔術師になるからバイバイ、だけだぜ!? ひどくね?

まあ、目に浮かぶっちゃー浮かぶけど……

だから俺が、俺たちがこのギルドバトルでクレアに勝って、強いところを見せるんだ

で?

それで今度こそプロポーズを

やっぱり死亡フラグにいくわけですね

お前にはなんか悪いことしたな、巻き添え食らわしちまって。もう帰っていいよ

あ、はい。では……

って、こんなとこで捨てられても困るんですが!!

お前、もしかして弱いの?

弱いですよ!

もしかしてクレアのやつ、弱いほうが好きなのか? 母性本能か? ああ、どうすればいいんだ俺は

めんどくさいオッサンだなあ、もう

にゃ(見つけた)

 そこへラファエルがやってきた。

あー! ラファエル様! 探しにきてくれたんですか!!

にゃ(まず言いたいことは)

なんですか?

にゃ(貴方って居ても居なくても同じ、ぐらいに思っていたけれど)

ううっ

にゃ(正直、邪魔)

ううっ

でも、探しにきてくださったんですよね? うれしいですうー

にゃ……(うっ……)

え、大丈夫ですか?

にゃ(ごめんなさい。貴方の笑顔が気持ち悪くて吐き気)

ひどい……

何ひとりごと言ってんだ?

 ラファエルの声は、僕以外には聞こえない。

あ、いえ、この猫が迎えにきてくれたのが嬉しくてつい

にゃ(哀れね)

とりあえず、お前はクレア用のエサにもならねーんだったら、ここにいるかわりに邪魔せず、正座でもしてじっとしてろよ

はい……

 僕は正座をする。

にゃ(実にお似合いね。見ていてこんなに気持ち良いものは久々だわ)

なんで僕がこんな目に……

 ガラスが割れるような音と供に、眩い光が辺りを包んだ。

お、一回目の水晶破壊だな。そろそろ動くか

ロイはそう言って、メンバーを連れ水晶の部屋へと進む。

ちょ、置いてかないで!

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