おそらく、自分の光に包み込まれた。

 黒い光。寂しい光だった。

 暖かくない光があることを、俺は初めて知った。

サンザシ……どこに


 どこに、いるの、サンザシ。




 俺は、君の、何だ。
 君は、俺の、何だ。サンザシ。




 俺たちはどうしてゲームをしていた? 

 何のゲームだった? 本当にゲームだった?




 君は俺を知っていた。


サンザシ……どうして

 どうしてきみは寂しそうな表情をしていた? 




 俺が何かした? 


 ずっと、ずっと昔に――?

――君、タカシ君?

 暗闇の中、俺は声のした方を向く。

 
 サンザシ、ではない。
 
 彼女は俺のことを、崇様と呼んでいた。

だれ?

タカシ君、私、ミドリ

ミドリ……

 眼鏡をかけた、明るい女性を思い出す。

タカシ君、出てこられる? 

正直困ってるの、よければ出てきて

……どうしたの?

 訊ねても、ミドリは答えない。

 さっきの声は、本当に困っている声だった。


 出ていったら、何が、あるのか。


 でも、どうやって……出ればいいのか。

 黒い光は、相変わらず俺の回りでうごめいている。


 それに触れたら、どうなるのだろう。




 怖さはなかった。

 もし、死んでしまったら、サンザシがきっとその先にいるはずだ。


 いや、死んでいない、と言っていたのなら、サンザシを待っていることができる。



 そんなことを考えながら、黒い光に触れる。



 触れられたそれは、俺の指先に吸い込まれるようんして、どんどん俺のからだの中に入っていった。



 闇の幕が降りて、景色が露になる。

ここ……は

 ボーナストラックの場所だ。

 透き通るような色をした、城。

タカシ君……なの?

 振り替えると、ミドリが床に片膝をついて座っていた。

 俺を除きこむ目が、不安そうに光っている。

タカシだよ。

君は、どうしてここにいるの?

分からないの……あなたのサポーターをしてって、あの、セイさんから

今度は、君が

タカシ君は、サンザシちゃんと物語を直す旅をしていったて聞いた。

世界に点在した昔話を、筋道通りにするゲームだったって

そう、でも……

 ミドリが、俺の目をしっかりと見つめながら、首を横に降る。

でも、それは建前だって、伝えてって

 俺は目を閉じる。

薄々、感づいてはいたんだ

……立てる?

 俺はうなずいて、立ち上がる。

 誰もいないホールは、時間が止まっているようだった。

とりあえず、楽しんでって。無責任よね、あの神様

 ミドリが困ったように笑う。

 あの、神様。

何の神様か、知ってる?

物語の神様だって。

今、物語が壊れて困ってるみたいなの

そう……やっぱり、神様だったんだ

 知らないことばかりだ。

ただ、ゲームだと思っていたころが懐かしい

 サンザシの笑顔を思い出す。


 近未来の学園世界、もっと未来の争いが絶えない世界、小さな人たちが過ごすファンタジックな世界、魔法が忌み嫌われている世界、そして、俺の記憶の元となる人がいた、平和な世界。



 そこの世界の住人だったミドリが、心配そうに俺を見つめている。

大丈夫……じゃなさそうね

7 記憶の奥底 君への最愛(1)

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