それは、彼女が死ぬ数時間前に遡る。

奈々

今晩死ぬのは、きっと私だと思う
アレだけ神経逆撫でするようなコト言いまくっていれば、嫌でも私が目障りになるだろうし
元より、そう仕向けているしね

彼女――住吉がそう言い出すことは、もうわかっていた。
やろうしていることも、その思惑も。
相変わらず、この子は狂っていた。

貴方って人は……
肉を斬らせて骨を斬るんでしょ?
そんなこと、して欲しくないんだけど……

奈々

やー、アドバンテージ取るにはこれぐらいしないといけないわけでして
リスク無くしてメリット無しっしょ

朗らかに笑う彼女が言いたいことは、つまり今夜わざと殺されて、翌日何事もなかったように現れ、わざと自分の特殊能力を明かし、周囲に先制攻撃を行うつもりだ。
一歩出し抜くつもりで、生命を捨てるということ。
死にはしないと住吉は言う。
でも辛いだろうし目も背けたくなる方法なのは変わらない。
余りにも、痛々しい。

あの手の優位性をチラつかせる手法といい、タイミングといい……妙に手馴れているわね
……いつもそうやっているの?

奈々

ま、否定はしないかな

…………

要するに毎回彼女は生命を代価に危険な橋を渡り続けている、と。
自分の生命をなんだと思っているのか……。
共にあることを望みながら、その生命を抵抗なしに差し出す心理。
私には、理解できない。

奈々

別に悪い方法じゃないでしょう?
私を殺しにきた人間を、私は一番に速水に伝えるよ
武器とかは確実に分かると思うから
運が良ければ誰だかも、能力もわかるかもしれない
私が部屋出てから、何かあった?

確かに余裕から来る油断慢心していると周囲に思わせる言動をしていて、立場的にも邪魔そのものの住吉が居なくなれば、ゲームは強者が一人減った状態で進められる。
ここで重要なのは、住吉の役職そのものではない。
そんなものはどうでもいいのだ。二の次で。
重要なことは、手練が減ること。
狼探しという手前の人殺しを進めるために、強い奴から殺したほうが効率が良い。

そういう意味では、私とあやも狙われる。
先程の私のせいで、私達が過去に類似した何かを経験していると一部の人間には透けているだろう。
私は、堂賀という中年男性が嫌気がさして出ていったと告げた。
住吉は、覚えておくと頷いた。

何とかできるといいけど……

奈々

大丈夫、私がそこもカバーするよ
要領わかってるだけの半素人と、完全にゲームの流れを支配している強者
どっちの方が怖いと思う?

……ねぇ、志田……
まさか、私とあやまで飛び火しないようにしようとしてるの……?

奈々

想像に任せるよ
兎に角、私がインパクトの強いことをして、二人に注目がいかないようにする
私は無敵で最悪の敵になれば、姉貴も二人もなんかされる可能性も低くなるでしょ?
脅せばいいだけの話だしさ、一応立場的に代理してるわけだもん
権力と暴力は使い分けが大切なんです

住吉は自分で全部を守ろうとしてる。
私たちに対する贖罪の意味もあるんだろう。
自分が傷つくのも構わずに、ただ全部を受け止めようと……。
そんなの、私は望んでいないのに。
傷ついて欲しくないのに。

奈々

大袈裟だな、速水
私は死んでも復活するんだよ?
つまりはリスク無しの美味しい話だよ?
これを選択しないで何をするのさ?

聞いてて改めて思ったけど
貴方、異常だわ
良く平然と生命を捨てる真似できるわね……
怖いとか、嫌だとか、ないの?

奈々

生憎と、異常なのが取り柄なんでね
怖さとか、生前の間に捨てちゃったよ
姉貴とかがこうなるぐらいなら、私が傷ついたほうがいいんだよ
私は痛みには慣れているし、死ぬのも慣れてる
適材適所ってやつ

そこまで自己犠牲に感化されてたとはね……
前は利己そのものだった貴方がここまで変わるのも、やっぱり一年経過してるからかしら

以前の異常性はそのままだが、今では以前の利己的な主義はなりを潜めて、目的の為に自分を平気で捨てるような新しい異常を手に入れている。
知り合いだけは死なせたくない。
その代わり痛い思いは全部自分に、か。
良くいえば仲間思い。悪く言えば自己犠牲。
どちらにせよ、独善的なのは変わってない。

奈々

あんま聞いてて気分が良くはないだろうけど
大丈夫、必ず成果を帰ってくる
そのためにわざわざ死ぬんだから
今夜は、私に任せて速水

生き返るとはいえ、生命を散らして持ち帰る成果。
…………。
彼女の想いは固いだろうし、仕方ない。
心配だけれど……今夜は、全部任せよう。
私は、私のできることをするだけ。
大丈夫、私は情報戦特化の能力を引いている。
住吉となら、きっと。共に、最後まで生き残れる。

奈々

…………何か私に用事?
いい加減尾行するのはやめてくれない?
バレバレだからさ

???

………

奈々

へぇ……貴方か……
そういうことか……
知りたいことがあるの?

???

……!
――――……ッ!!

奈々

ああ、その人か
当然知ってるよ
前回の参加者だったかな

奈々

そりゃ、殺したの私だからね

???

!!

奈々

――がはッ!?

???

…………

奈々

ぐっ、あっ、あぁ…………!

奈々

そぅいう……魂胆、か……
わた、し…………に……
復讐…………するため…………ッ

???

…………ッ……!

奈々

しら……ない……!
いちいち、殺した相手のコト……
気にしてなんて、いられるかッ!

???

!?

奈々

はぁ……はぁっ……
今ので、殺したと思った?
立ち上がるのが、そんなに不思議?
首切れば死ねるなんて考えは……素人だよ

奈々

刃物の扱い方も……
知らないド素人が……!
殺せないくせに、私に刃向かうなッ!

???

――ッ!!

奈々

!!

???

死ねッ!!

奈々

……………………

???

はぁ……はぁ……ッ!
これで……死んだ……?

???

これで……仇は……!
やった……!!
やったッ!!!!

???

あは、あはははははっ!!
やった! やったよ!!
みててくれた!?
頑張ったよ!!

奈々

いでででで……
あー死ぬかと思った……

奈々

然し、まさかあの子とはねえ……
おかしいな、初見のはずなのに……?

奈々

ん? 
でもそいえば確か……?

奈々

まあいいか……
理由はわかったし……
速水に早速伝えるかな!

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